スマホに取り憑くって、現代人はませてるな〜。

@komaneko8

土地神様とギャルJK

「ん?こんな夜遅くに女子おなごが外をうろつくなど珍しいな」

商店街の中で制服なるものを着た女子が一人たたずんでいた。


「おい、お主何をしておるのだ?」

声をかけるとその女子は顔を上げた。


「え、何その恰好。いつの時代の人?受けるんですけどw顔はいいけどナンパならもうちょっとファッションに気を使いなよw」

出会い頭に失礼な物言い。

これは、もしやギャルと呼ばれる輩か?


「いきなり、失礼な奴だな。ここで、何してお...。ってお主霊か」

あまりに妖力が弱いもので人だと思っていた。


「え?分かるん?そうそう、うち昨日死んじゃったんだよねぇ~。歩きスマホしてたら轢かれちゃったw」

その、言い方はまるで気にしておらんという言い方だった。


「そのスマホというもので死んだのに離さないのか?」

その女子はスマホ片手に持っていた。


「いや、悪いのはうちっしょwそれに、もしかしたら友達から電話掛かってこないかな~なんてwそんなバカいるわけないかwそれに、少し離れるくらいならできるんだけど。ある程度離れると勝手にやってくるんだよねぇ~」

不思議だわ~と言いながらスマホを眺める女子。

(そうか、付喪神のような状態になっているのか)

どれだけ、大事にしていたのやらと考えていると


「あ、あんた後ろ」

女子がおびえた様子で私の後ろを指さした。


「ん?どうしたのだ?」


「我を見るより汝の...って土地神様!?」


「何だ、輪入道か」

振り向くと車輪の真ん中に顔のある妖怪が浮いていた。


「その女何っすか?」


「あぁ、霊だな。少し話をしていた」


「え!?霊だったんすか?」

驚き女子のほうをよく見る輪入道。


「それより、輪入道。あまり悪さはするなと言ったはずだぞ?」


「わ、分ってやすよ。悪党しか狙ってねぇす」


「嘘を吐くな最近、二人組の男女も狙ってるだろ」


「そ、それは。リア充なんて...」

俯く輪入道。心なしか車輪の回転の速さも落ちていた。


「はぁ、ほどほどにしとけよ」


「うっす」

本来、妖というものはそういうものだし仕方なくはあるか。


「あ、あんた神だったんだ」


「まぁ、そのようなものだな。少しは敬っても良、何をしておる」

途中から興味ないという風にスマホなるものに目を落とす女子。

さっきまでの


「あー。ちょっと待って。今ググってるから」


「ググる?」


「え?ググる知らないのおじいちゃんじゃんw」

本当に失礼な奴だ。


「へ~、そこそこ偉いんだ」


「まぁ、一応この土地を治めているな」

素直な奴ではあるのだよな。


「あ!居た!おい!土地神!俺と勝負しろ!」

まったく感嘆符の多い騒がしいやつが来た。


「なんだ小鬼。見ての通り私は今取り込み中だ」


「あ?人間の女口説いてんのか?」


「違うわ!それに、人ではない。霊だ」


「チエッ、人じゃねぇのかよ」

人だったらどうするつもりだったのだ。

少し女子のほうを見やる。


(霊かどうか分かりにくいうえ、妖についても無知。しかし、こちら側の世界に踏み入ってしまっている。少し心配だな、がこんな奴に私が構う必要もないか)


「良いか、妖にも色々奴がいる。迂闊に行動するなよ」

それだけ言って去ろうとすると女子に呼び止めらえた。


「てかさ、こんな可愛いピチピチJKが困ってるんだよ?普通助けない?」


「はぁ?家に帰ればよいだろ」


「いや、それが分かんなくなっちゃって。それにグーグルマップも上手く作動しないし」

別に、霊なのだからこのままでも良いだろうと言いかけてやめる。

昨日死んだかりだったな。まだ、人の頃の感覚が抜けないのであろう。


「はぁ、分かった。ついてこい」



「へぇ、神社なんて合ったんだ。それに意外と綺麗」


「普通の人には見えないようにしておるからな。綺麗なのはちゃんと管理しておるからだ」


「あ、そうなんだ。てことは私特別な人間w?」


「お主は霊であろうが」


「あ、そうだったw」

まったく。


「あ、女の子と一つ屋根の下だからって変なことしないでね?」

そう言いながら自分の体を抱きしめる女子。


「お前なんぞに興味ないわ!ふざけてるでない阿呆が」


「www嘘だって。あんまカリカリしてるとはげるよ?w」

そうやってけらけら笑う女子。

連れて帰って来なければ良かったやも知れぬな。


「俺は少し見回りをしてくる」


「うぃーす」


私はもう一度街に向かった。

少しして戻ってくると女子に貸してやった部屋から時報の鐘のような音が聞こえてきた。


『おかけになった電話番号は現在使われていません...」


「おっかしいな?あってるはずなんだけど。みんな...」

頬に涙を流しその声は酷く小さく震えていた。


「寂しいのなら、悲しいのなら、辛いのならば。言えば良いものを」

ただ、私はあまり女子の扱い方は知らない。

私はそっとまた出かけた。



「あ?雨降ってんじゃん。ねぇねぇ、うちって雨に濡れるかな?w」


「お主の体自体は濡れぬが...」


「え!ホント?うわ、マジじゃん。すげ~。ねぇ、どっか行こうよ」

私は急いで傘をとってきて広げ女子に差し出した。


「話はちゃんと最後まで聞け。お主の体自体は濡れぬが依り代であるスマホは濡れる。スマホなるものは水に弱いと聞いたぞ。気をつけろ」


「え、あ、うん」


「ただ、何処かに行こうと言うのは賛成だ。もっとも、お主の家探しだが」


「え?手伝ってくれんの?ありがと」

そう言ってニシシと笑う女子。


「じゃあ、行くぞ」


「え?それうちの傘じゃないの?」


「何を言っているこれは私の傘だ。私しかここにはおらぬのだから一つしかない。ほら、お前も入れ」


「そ、それじゃあ」

なんだ、急にしおらしくなった。

こやつもこうしてれば少しは可愛げがある。


「もう少し寄らぬか。濡れるぞ」


「え?スマホしか濡れないんじゃないの?」


「お前の体にかかった分は感覚は無いだろうがスマホなるものにかかるのだ」


「あ、そうなんだ」

そう言ってこちらに身を寄せる女子。

外に出てからというもの急に静かだ。

しばらく、歩いてると雨が止んだ。

少し、手を翳してみて降ってないのを確認してから傘を閉じる。


「あ、アレ!近くに住んでた友達!ついてったら家分かるかも」

見えないというのに手を振る女子。

その手からスマホが抜け落ちた。


「あ」

女子からもれる声。

スマホなるものが落ちる先には水たまり。

私は咄嗟に駆け出し、スマホなるものをすんでのところで掴んだ。


「まったく、気を付けろこれはお主の依り代なのだ。大事にしろ」


「うん、ありがと」

ん?またしおらしくなった。それに心なしか頬が朱く染まっているような。


「ははーん、さてはお主私に見惚れているのだな?」


「はぁ!?んなわけねぇーし。あんたみたいなジジイ対象外だわ!」


「はぁ?何をお前優しくしてやればいい気になりおって」


「また、お前口調になってる。普段イキってんのバレてんよ?」


「粋がってなどおらぬ」

つい、言い返してしまったが慌てるその様子は少しだけ可愛げがあった。


「あ、そういえば、友達」


「もう、見えなくなってしまったな」

気まずい空気が流れる。


「まぁ、なんだ?もう少しの間なら泊めてやっても構わんが」


「う~ん、しゃーなしか、まぁ、我慢するよ」

そっぽを向いて言う女子。

まったく、生意気な奴だ。


「一旦、帰るぞ」


「オケ丸、あ、連絡先教えてよw」


「私はスマホなるものなどはもっていない」


「あ、そうか」


「それに、かからなのではなかったのか?」


「あ、そうだったwってなんで知って」


「たまたまだ!」

まったく、騒がしい奴が来てしまった。

まぁ、騒がしいのもたまには良いかも知れぬな。


「スマホもう落とすなよ」


「...分かってるって!w」

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