普通じゃ無い奴らに勘違いされる一般人(俺)

みつぎみき

運命の魔女

第1話 貴方もその一人ね

「世界の闇は深いわ……私たちが導く光となるのよ!!」


 高校に入学して二週間ほどが経った。

 俺の腕を引っ張り、部室棟の一室に連れ込んだ美女がドヤ顔で言った。


 腰に腕をやり、顔を突き出すように立っているこの女は黒野真咲。

 真っ黒で艶の有る腰まで伸びた姫カットロングストレート、つり目の大きい強気な目、鼻立ちの良いはっきりした顔立ち、白を基調とした黒の線が入ったブレザーを盛り立てる巨乳、形がよく大きいためスカートを強制的に短くする尻、長い脚にむっちりのフトモモ、白くてきめ細かい肌。正しく美少女。


 クラスメートにしてカーストのトップに立つことを宿命付けられた存在。

 こいつが何故俺を?


「真咲ちゃん! その人が例のアレなの?」

「ふえぇ、知らない人こわいぃ……」


「落ち着けよ、こいつの処遇を決めるターン開始だ」

「ふふふ、興味尽きませんねぇ」


 部室の中に最初から居た四人。

 高校生とは思えない金髪のロリに爆乳のゆるふわ茶髪、ワックスで固めたオールバック高身長男と顎に手をやり笑う糸目のイケメン。


 全員有名人だ。


 同学年で天才少女ロリ、金井サオ。

 同学年で一番の美少女、茶柱香。

 一つ先輩で優しき不良、黒野拳。

 二つ先輩で副生徒会長、白戸時乃。


 な、なんだこの集団!? 一体何に巻き込まれてるんだ!?


「な、なんでおれ――いや僕を連れてきたんですか?」

 モブ中のモブ、カースト底辺の俺がため口を使おうものなら顰蹙ものだ。


 黒髪美人の黒野がぷっくりした唇を開き、凛とした声を上げる。

「闇の教団『ダーク・ネクストステージ』を知ってるわね」


「そのバックに付いてるの漆黒の魔女……『マングラ』も」

「ふええ……と言うことは『怖い奴』もですかぁ……うぅ」

「ちっ……お前も『こっち側』の人間か」

「ふふふ、この学園に通う人間はすべて調べたはずなんですけどねぇ……まさかとは思いますが『NNN』のスパイってことは無いでしょうねぇ」


 すぅ……ふぅ……。

 つまりはどういうことだ? この人たちは何を言ってるんだ?


 何を言っていいか分からないが、何か言わないとこの状況は収まらない。


「ぼ、僕は『卒業』したよ……知ってしまったから……意味なんてないんだ……でも理解は示すよ――君たちが知るのも時間の問題だから」


 俺もかつては厨二病の男だった。でも、格好いいと思っていたすべてのことは実はダサいのだ。大人から見たらただの痛い奴なのだ。知ってしまったからには卒業して真っ当に生きる。

 かつての同志として君たちを否定しない。でもいつか俺と同じく気づくだろう、その時は優しく受け入れるよ。「ようこそ、大人の世界へ」ってね。



「「「「「――やっぱりか」」」」」


 五人は頷いた。

 分かってくれたか、良かった。


 俺は踵を返し、部室を出ようとした。が、黒野に肩を掴まれて止められた。


 い、痛い。女とは思えない力だ。


「だめよ、そんな貴方を一人になんて出来ないわ――て、あれよ? 何を仕出かすか分からないから監視するって意味よ? 心配だからとかでは無いわ、勘違いしないでね」

 髪ばさぁ。


 手で髪をばさぁと靡かせる黒野。美人がやると映えるな。


「一人で戦える奴らじゃ無いんだよ! サオたちと一緒に戦おうよ!!」

 手をグッと胸の前で握りしめ、金井は身を乗り出す。


「うぅぅ……こ、怖いですけど……みんなと一緒なら、た、戦えるのぉ」

 ブルブル震え、胸も震える茶柱。


「はっ――てめーの身だけ考えるのは楽だろうよ、犠牲が自分だけってのはホントに気楽だ。でもよ、痛みも重みも分け合えるんだぜ?」

 手で髪を後ろに掻き流し、黒野は優しく笑う。


「ふっふっふ――逃がしませんよ? 君は僕の監視対象になったのですから」

 拳を口の前にやり、不敵に笑う白戸。


 黒野が手を差し出してくる。


「わ、私たちと共に戦いましょ」





 思ったね。「死ね」って。


 

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