第4話 全艦銭湯モードへ行こう♪
ジャパニーズ・Do・ゲザ:アルティメットネゴシエーションメソッド。
えーと。
「なんのまねかなたいさ」
傲岸不遜軍人権化から一転平身低頭平伏状態を眼下にバグったリン棒読み。
「危急の故とは申せど」
タロウは言上奉った。
「数々の無礼、大変失礼致しました」
んーと。
めんどくさいから軍命で押し通しめんどくさいから取り敢えず頭も下げておく、軍人さんも大変だあね、
目には目を、歯には歯を。
無礼には無礼を。
たし、軽く相手の頭を踏み一言。
「火急故、赦す」
これでちゃら、イーブン。
狭い艦内、残る航宙、遺恨無しで。
「で。」
立ち入り禁止、立ち入り禁止、立ち入り禁止、格納庫からまたまたEVAを経由してようやく乗艦を果たしさして広くない艦内のあれこれの案内を受けた後、博士は大佐と顔を突き合わせていた。
乗組員多目的共有区画、ダイニングキッチン兼娯楽兼ジム兼他雑務用途室、定数3名の艦内に今は二人きり。
反転攻勢、彼女は硬い表情で詰め寄る。
「つまり、どういう事なんです」
再び初期化された関係から大佐はあくまで冷徹に回答。
「どういう事、とは」
リンはAll fire で一気に捲し立てる。
「本件は事故なんですか! 、半官半民の施設になぜ捜査権も無い軍が、組織外官庁の宙保所属である貴官が立ち入り介入する、出来るの!? 、権限は!? 、法的根拠は!? 、私は被疑者? 、重要参考人? 、それとも証人なの? 、答えて! 、貴官には説明の義務がある筈でしょ!! 。」
少しは気が晴れましたか、博士、とその眼が告げている。大佐は口を閉じ、次いで暫し眼も閉じ、各々を同時にしかしゆっくりと開き、宣告した。
「本艦は作戦行動中であり、小職はその指揮官として任務を遂行している、従って……」
「「軍規により、答えられない」」
見事なユニゾン。
タロウは流石に顔を歪める事で反応を示した、苦笑の形で。
「御迷惑とは存じますが、御理解御協力のほど、お願い致します」
「ク○運営の定型謝罪か!! 」
語気するどくツッコミつつ、でも、と。
「何一つ、ノーコメント、ですか? 」
一転しおらしくおねだりしてみる男女のハイロークロスファイト。
「艦内の活動は総て記録され報告される、場合により開示される」
大佐は僅かに顔を緩め、続けた。
「まあ、少し世間話でもしますか、リーヤー博士」
女子力磨きの精華にして零れる様な特上の笑顔を無論戦術的効果の計算とともに提供しながらアタック。
「初対面でも私は拘らないの、だから面倒はよして、今からリン、貴官に異存が無ければだけど」
甘言に寧ろ威儀を正し大佐は返す。
「ではリン、小職についても大佐では無くタロウと、貴職に差し支えが無ければですが」
「オーケイタロウ、それじゃゲームを始めましょ」
「その前に開示可能な情報が一つあるんだ、リン」
立ち入り制限区画の条件付き限定解除、それは。
「乗組員、衛生管理、区画、ですって!!」
それはまさか、いや航宙飛翔体に、1G完備の豪華客船だって未だそんな贅沢はまして軍艦にある得ない不可能だ馬鹿言ってんじゃないぞそれ。
浴室つまりザ・シャワールームがあるですとハハハナイスジョークだ大佐! 。
いや別に、しれっとタロウ。
使用許可は出せるけど艦内施設なんで都度許認可必要だしあくまで権利付与なんで、貴職がその権能の行使を要請もしないしもちろん義務でもない。
ひらひらとカードキーを目の前で振って見せる。
「いる? 」
「い、い、い」
誰がいるかFxxx!! 、冗談! 、こんな露骨な懐柔策サイテー!! 。
魂の叫びと言語中枢は別腹。
「や、やですわ大佐、そんな、突然、入浴だなんて」
精一杯の虚勢だが眼から手が出る5秒前ガン見では意味がない、ネコに鰹節いやマタタビ、サバイバル女子に湯浴み、こんなサタンの見えてる地雷を踏めぬはナオンの壱分が立たぬくっころ、もあや智性も理非も事象の地平の彼方、此れを浴びねば誰がやる、それは婦女子か十日ランは音にも近くば寄ってボンキュッバン諍う術はあろうかいやない反語、鋼鉄メンタルも光で溶け去る、抵抗は物理的に不可能である君のお母さんは今背中で哭いている。私は冷静だ大丈夫問題無いちゃんと考えてるほら角度とかいやコレダメな奴だ早く何とかしないと悔しいでも感じちゃう使えるジャーゴン全部入りだぜどうだ参ったかここまで0.1光秒、アレ違う節子それ速度やだから思考速度だいたいあってる。
短縮すると女の業と煩悩と懊悩とに身を焦がしつつ。
「……ねえタロウ、こういうの何て言うか、判る? 」
それでも必死の攻勢防御に。
「パワハラじゃないねえ、貴職と小職に職務上の関係も序列もない、嫌がらせ? 、友好的な情報共有ですが何か問題が、ミソジニー、衛生管理にセクシャリティは影響しない、ジュネーブ条約違反、戦時下でも無ければ勿論交戦の事実も存在しないので捕虜虐待にも該当しないなはて、ホラ、ぼく軍人だから、脳筋なんで、ハカセみたいに難しい事わからないのごめんねー、ではそんなボクちゃんから天才博士にかんたんな出題です第一問、ちゃっちゃっちゃーハイ、ここはどこ。」
ぐぬぬああ言えばジョーユー、伊達に佐官やってねえな。
「……軍艦の艦内です」
敵情不明につき威力偵察、射弾観測。
「じゃあぼくは誰」
交戦法規認証。
「艦長にして最先任、我々を教え導く神より尊き訓練教官殿でありますサー! 」
当然敬礼。
「成る程、成る程、では貴職は」
「1ペイロードにしてクソの代わりもならない死荷重! 、自由落下と慣性航宙の区別も付かない訓練課程候補生でありますサー!! 、ギャラーガ! ギャラーガ!! ギャラーガ!!! 」
声が小さいのお約束で正規では三唱、洗脳そのもので宇宙の生死を焼き付ける、忘れようがない。
はいよくできましたじゃあご褒美。
ピンと弾いたそれをジャンピングキャッチ。
「あー因みに」
「だから! 知ってるから! 」
リンmjgで即答。
「航宙資格あるから! 閉鎖系でしょアンタの元体液間接キッスペッ○ィングでも只の無害な水分子だから乙女にナニ言わせんな恥ずかしい! まだ足りないアイシテルって1万回叫ぼうか!? 」
が鳴り立てるに。
「いえ間に合ってます行ってらっしゃご存分に」
しっしと優しく手払いするタロウの皆まで聞かず中指おっ立てでもきゃーラッキーシャワーだシャワーようははとだだ漏れ歓声を残響させハカセ退場。
ふーと残った大佐は長く息を吐き額を拭う。
掌も汗だく。
あーと胸元をだらしなく開きあおぎ風を送りながら電子副官に呼び掛ける。
「最先任権限、01を02にコピー、無条件無制限無期限、復唱不要即時実行」
「Done」
あーう。
天井、はないので向かいの床に向け仰向けに浮かびあがりながらぶつぶつぶつ。
真面かSxxxじょーだんじゃねーぞー。
異性は苦手だ。
仮想敵と想定しての戦術事例としての対処行動は可能だ。
それだけだ。
あの日以来そうなった。
だから志願し審査され認定され任官し着任した。
人里離れて単独長期航宙作戦行動のその最後にまた、これか。
リンに、彼女に対して他意はない、寧ろ同情して然るべき境遇に共感すら出来るかもしれない。
それとこれとは、ああ、別なんだ。
絶望ではないが、いうなれば諦観か。
一生理解も和解もない、それを前提に人生を送る以外の選択は見えない。
「悪いコトばかりじゃないと~思い出~見直して~♪ 」
しゃわ~しゃわわ~人生で二番目くらいの幸運にありついたリンはハイハイハイテンション、思わず伝統の引き寄せメソッドなど口ずさんでしまう。
熱いのと冷たいのと交互に浴びて……ってなんでハードボイルド?! 。
グーで壁面を叩いてもへにょと受け流される、いつどこで天地が返るか不明な宇宙で内装は原則人体保護優先まして軍艦なら。
突っ込んでも一人、……はあ。
「やー正直なめてたわー」
女の武器? 、男女の駆け引き? 。
何一つ、カスリもしない、どころか。
佐官、しかも大佐、艦長ともなれば出るとこに出れば外交特使も務まる地位だ、まして民業の経験すらない小娘が何をイキッていたやら。
「こーさん、こーさん」
認めよう、ヤツの力を、今この瞬間から。
身心ともにスッキリした。
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