リア充が爆発する時

にわか

第1話 口は災いの元


とある男の部屋


「クソッ!当たり判定おかしいだろ!」


男の手によって放られたゲームのコントローラが、ベッドのクッション性で幾分か勢いを殺して、部屋の壁にぶつかる。


部屋の明かりは消されており、光るのはゲーム画面が表示されたモニターだけ。

切り替え画面で一瞬暗くなったモニターに、無精髭を生やし、髪もボサボサな男の顔が映る。


「・・・チッ」


ゲーム機の電源を切り、椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰ぐ。


部屋には中身が少しだけ残ったペットボトルと、汁だけが残ったカップ麺。

それとゲームや漫画の類が所狭しと散らばっている。


「もうこんな時間か・・・」


ゲームの音がなくなったことで、強調を始めた掛け時計の秒針の音。

それが示す時刻が、男にある行動を呼びかける。


『さあ始まりました。オールビット0。この時間はブラックドラゴンがお届けして参ります』


スマホから響く渋い男の声。

ブラックドラゴンと名乗る男が、静かに言葉を紡いでいく。


『全く。こんな日まで仕事なんてやってられるかっての。というわけで、今日はいつもよりローテンションでお届けしまーす』


心底面倒臭そうに語る男の声が、不思議と安心感のようなものを演出していた。


『お便り頂いてまーす。ラジオネームL師弟「ヘイ。。目が虚ろだぞ。?薬に手出せばお前も終わり。セイアンサー。」』


リスナーからのお便りを淡々とした調子で読み上げ、暫しの間沈黙するブラックドラゴン。


『あー。ラップってことね。無しじゃ気づかんかったわ。Lだっけ?ネタ臭えぞ。温かいに入って寝てな。じゃないと身体も空気もこご


お便りに合わせて、ブラックドラゴンもラップ調で返す。


「おー、ブラドラさすがだなあ」


ブラックドラゴンのアンサーに唸りながら、全身灰色の寝間着姿の男は、机の上に置かれたPCを起動した。




ラジオ放送局


マイクが設置された机に、座りごごちの良さそうな椅子。

その片方に座る、貫禄はあるが、ブラックドラゴンという形相な名前とはかけ離れた中年の男が、隣に座る別の男と雑談を交わす。


「スタッフさんも大変っすよね。何か用事あったんじゃないすか?」

「ウチの嫁も仕事なんで」

「あー。看護師さんでしたっけ?」

「そうです。よく覚えてましたね」

「この仕事は交友関係がものを言いますからね」


そう言って、苦笑いを浮かべるブラックドラゴン。


ラジオ局の一室であるこのブースでは、現在生放送が行われており、今はCM中だ。


「ブラックさん。次これでお願いします」


隣の男が愛想笑いを浮かべながら、机の上の紙をスライドさせる。


「りょーかいっす。それより、これ終わったら飲み行きません?」

「すみません。明日も早いんで」

「そうっすか・・・」


そんな会話を最後にCMは明け、番組は再開した。


「ブラックドラゴンのオールビット0。そろそろお別れのお時間です。お便り頂いてます。ラジオネーム風呂アロマ『ブラドラさん。今頃世のカップルたちは行為に及んでいるわけですが、そのことについてどう思いますか。7文字でお願いします』」


読み上げたブラックドラゴンが「7文字か・・・」と、首を捻りながら指を折る。


「なるほど。そういうことね。それでは、このラジオを聴いてるリスナーの気持ちを俺が代弁して、今日はお別れにしたいと思います。『リア充爆発しろ』。ではまた来週。さようなら〜」


ブラックドラゴンの挨拶を合図に陽気なBGMが流れ始め、放送はそこで終了となった。




とある女の部屋


「あ〜。見栄なんか張るんじゃなかった〜」


ソファの座る部分を背もたれにして、カーペットが引かれた床に座る女。

目の前の机には、口の開いたお酒が複数本無造作に置かれている。


「え!?もう空じゃん・・・」


すっからかんになった空き缶を片手で弄びながら、暫し考え込む。

女はスマホの電源ボタンを押し、時間を確認した。


「まだ10時か・・・。よし」


重い腰を上げ、ソファの上に置かれていた上着を羽織り、玄関へと向かう。


机の上には食べかけのおつまみ。ソファの上には脱ぎ捨てたスーツ。

決して綺麗とは言えない部屋の明かりが消え、訪れた暗闇が、酒で高揚していた女の気持ちを一気に冷ます。


「はぁ」


溜息を部屋に残して、女は追加の酒を買いに出掛けた。




コンビニ前


「今日のとこ難しかったな。帰って復習しなきゃ」


夜の10時にも関わらず、制服で夜道を歩く女子高校生。


パンパンに詰まったリュックと、左手に持つ英単語帳。

そこに眼鏡が相まって、如何にも真面目そうな印象を与えている。


「夜食でも買っていこうかな」


勉強のお供を買うべく、通りかかったコンビニに立ち寄ると。


「ちょっと!なんで私には年齢確認しないのよ!!」

「そう言われましても・・・」

「さっきの女より、私の方が老けて見えるってこと!?」


店員に絡む、酔っ払いの女性と遭遇した。




ラジオ放送局近くのスナック


「いらっしゃいブラちゃん。今日は一段とやさぐれてたねー」

「おっ、聴いてくれてたのか。まあこんな日だからね」


苦笑を浮かべながらカウンター席に座り、スナックのママに酒を頼むブラックドラゴン。


程なくして注文の品が差し出された。


「ブラちゃん男前だからモテるでしょ?結婚相手の候補とかいないの?」

「結婚となるとなかなかねー」


ママの褒め言葉を否定も肯定もせず、出された酒に口をつける。


「この歳にはとっくに結婚してさ、子どももできてるもんだと思ってたんだけどなー」


グラスに視線を落とし、独り言のように呟く。


それに対して、ママは頷きながら同意を示している。


「ありふれたとか。ありきたりとか。当たり前とか。そういうものが案外難しかったりするのよね」

「さすがママ。長生きしてるだけあるね」

「誰がご年配よ」


ママのツッコミに乾いた笑みを浮かべ、グラスに注がれた酒を一気に飲み干す。


喉元を過ぎる熱さを感じながら、ブラックドラゴンは、昔を思い出すように、遠くを見つめた。




コンビニ店内


「はぁ・・・お姉ちゃん。みっともないからやめて」


店員にクレームを入れる女性に、制服姿の女子高生が話しかける。


「あれ?火林じゃん。こんな時間に何してんの?」

「塾の帰りだよ。お姉ちゃんこそ何してるの?」

「それは・・・あれ?何してたんだっけ?」


本気で惚けた様子の姉を前に、妹である火林が溜息をこぼす。


「姉がお騒がせしました」


迷惑をかけたであろう店員に頭を下げ、姉を引き連れてコンビニを後にする。


「もう。お酒はほどほどにしてって言ったじゃん」

「だって、こんな日に独りなんてやってらんないじゃん」


どこからか響く陽気な音楽。

街の至るところでは、2人の世界に没頭するカップルの姿が見て取れる。


「会社の人に彼氏とデートって嘘ついてさ。仕事も早くあがって。なんか自分が惨めになっちゃって・・・」

「なにやってんの・・・」

「火林も勉強ばっかやってないで、青春楽しみなさいよ」

「余計なお世話です」


足取りがおぼつかない姉と呆れた様子の妹。

性格も見た目も似つかない姉妹が、いつもより浮かれた様子の街を歩く。


「あっ、雪だ!」


人混みの中で、1人の女性が歓喜の声をあげ、隣を歩く男性の肩を叩く。

それに呼応するように、周りの人たちもざわざわと騒ぎ始めた。


そんな様子を見ていた姉妹の姉。

南東母夏は心底嫌そうな顔を浮かべて、こう呟いた。


「あーあ。リア充なんて爆発すればいーのに!」




タクシー車内


行きつけのスナックを後にしたブラックドラゴンは、タクシーを拾い、自宅へと向かっていた。


『#ブラックドラゴン #オールビット0 #ラジオ』


SNSに自分に関するハッシュダグを打ち込んで検索し、いわゆるエゴサーチを始める。


『ブラックドラゴンは陰キャの味方』

『ブラックドラゴン童貞説』

『マジでリア充爆発しろ』


呟かれている内容はブラックドラゴンを讃えるものが多く、ラジオリスナーの層が見て取れる。


次々と流れる情報を眺めながら、スマホの画面をスクロールしていたブラックドラゴンだったが、その速度は段々とゆっくりとなり、やがてピタリと止まった。


「はぁ・・・」


窓の外の景色に目を向けながら溜息をこぼす。


今日という日を祝福するかのように、タクシーの外では雪が降り始めていた。

ブラックドラゴンが握るスマホのロック画面には、日付と時刻が表示されており、それがある事実を指し示す。


「ホワイトクリスマスなんて久しぶりですね」

「え?・・・ああ、そうですね」


急に話しかけてきた運転手に適当に返事をし、ブラックドラゴンは静かに目を閉じた。


まるで、街と自分を乖離するかのように。




とあるアパート前


「じゃあ帰るから。ちゃんとベッドで寝てよ」

「えー、もう帰るの。どうせ暇でしょ!」

「勉強しなきゃいけないから。じゃあね」


今にも泣き出しそうな姉を残して、妹である北山火林はアパートのドアを閉めた。


南東母夏と北山火林は義理の姉妹だ。

姉の母夏は就職を機に一人暮らしを始め、現在は別々に暮らしている。


「『リア充爆発しろ』か・・・」


先ほどの姉の言葉を思い出し、なにやら考え込む様子を見せる火林。


頭の中では、今日の塾の光景が浮かんでいた。

いつもは少なくても十数人はいるのだが、クリスマスということもあってか、今日は片手で数えられるくらいしかいなかった。


「爆発は言い過ぎ・・・だよね」


脳内を横切った、凶悪で横暴な考えを否定するように首を振り、帰路につく。


世のリア充たちに、少なからずマイナスの感情を抱きながら。




とある男の部屋


「・・・・・ん」


意識が覚醒すると共に、さきほどまでの楽しい記憶は彼方へと消えていき、腕の感覚の違和感に気づく。


その違和感の正体を過去の経験から即座に推察し、正誤を確かめるべく状況を整理する。


自分が座っているのは椅子。目の前にはモニターが置かれた机。

スリープモードに入ったゲーム画面。痺れた感覚の腕。


どうやら、ゲームの途中で寝落ちしてしまったようだ。


「んー」


大きく伸びをし、スマホで時刻を確認する。

日付は12月25日。時刻は午前8時。


閉め切られたカーテンの隙間から、太陽の光がこぼれている。


霞んだ目を指でなぞり、あくびをかみ殺しながら、SNSを開きタイムラインを確認する。


「・・・ん?」


男の目に止まったのは、トレンド入りしていたワード。

『#リア充爆発した』という文言だった。


昨日のブラックドラゴンのラジオを思い出し、トレンドの内容を追っていく。


『うちのクラスの陽キャども揃って休んでんだけど』

『今日無断欠勤多すぎるんだけど何事?』

『「都内各地で原因不明の意識不明者が続出」これまじ?』

『うわ、ガチでリア充爆発したのか』

『リア充ざまあwww』


「あほらし」


SNSの内容を一蹴し、スマホをベッドへと投げ捨てる。


なにかと騒ぎたがる者たちを嘲るように。

絵に描いたような無表情を浮かべて、男はまたしてもゲームを起動した。




とある高校


「なんか今日人少なくない?」

「だよね。電車の遅延とかかな?」


始業時間の直前。

窓際で相対する二人の女子生徒が、教室を見渡しながら雑談を交わす。


そんな会話を耳に挟みながら、自身の机に向かい、自習を進める北山火林。


彼女も、生徒の数がいつもより少ないことに気づいていたが、昨日の塾のこともあり、さして気にしてはいなかった。


始業時間が近づき、火林も自習を進める手を止めようかとしていた時。


「今来てる生徒は体育館に来てください!」


教室のドアがやや乱暴に開かれ、あまり見覚えのない職員が、意味深な言葉を残して足早に次の教室へと向かっていった。


「なんだろうね」

「今日休みになるとか」


突如訪れた非日常に、先ほどから雑談を続けていた女子生徒たちが、少し嬉しそうな声を上げる。


「児玉先生いないのかな・・・?」


現れなかった担任の教師のことを、教室の中で唯一気にかける北山火林。


しかし、その真意は安否の心配ではなく、昨日の塾で解らなかったところを尋ねたいだけであった。




とある男の部屋


相変わらず散らかっている部屋で、男はモニターに向かいゲームに興じていた。

ゲームの種類は昨日のFPSとは違い、オンライン上でギルドを組んで冒険する、RPGゲームだ。


「渋すぎだろ!」


クリスマス仕様のアイテムが排出されるガチャで、目当てのキャラが当たらなかった男が文句を垂れる。


ゲーム画面の左下に表示されたチャット画面では、ガチャの勝利報告が続々と書き込まれていた。


『一発でツモった』

『今回ちょろいわww』

『まだ引けてないやつおる?』


それに感化されるように、男が課金画面に移動しようかとしていると。


『お前らこんな時に呑気だな』

『どんな時だよ?』

『リア充どもが消えた時だよ』

『ま?』

『まじまじ。今病院だけど人多すぎ』

『まあニートの俺には関係ねえわw』


先ほどまでとは毛色の違う内容が流れ始め、課金をしようとしていた男の手が止まった。


「ガチでなんか起きてんのか?」


半信半疑のまま、男はSNSで再び情報収集を始めた。




とある高校 体育館


「突然ですが、本日は休校となります」


壇上に立つ教師の発言に、生徒の間でざわざわとざわめきが起きる。

いつもであれば校長先生が話す場面なのだが、今日はいないのか、教頭先生が代理を務めていた。


集められた全校生徒の一人である北山火林も、少しだけ驚いたような顔を浮かべて話を聞いている。


「皆さんもご存知と思いますが、現在、都内の至るところで原因不明の意識不明者が続出しています。感染の可能性も考えられるので、自宅に帰って待機してください」


一方的に話を切り上げると、教頭先生は壇上を後にした。

体育館の横側で並ぶ職員に合流するも、その数はいつもの半分にも満たしていない。


生徒側では、真面目な空気を察してか反応は薄いが、嬉しそうに小声で会話を交す者も多く見られた。


「本日予定していた終業式は中止とし、明日から冬休みとします。今後の予定は追って連絡します」


進行役を務めていた職員の言葉を最後に、学校は臨時休校。そのまま冬休みとなった。


締まりの悪い終業は、生徒はもちろん教師たちにもなんともいえない違和感を植え付け、絶妙な居心地の悪さを演出していた。


まるでこれから起きる混乱を予兆するかのように。




とある男の部屋


「おいおい。まじかよ」


SNS上を次々と流れる信憑性の高い情報を前に、男が驚きの声を漏らす。


『首相 会談に欠席か?』

『大物司会者 現場に来ず』

『道端に倒れるカップル続出』

『新種のウイルスの影響か!?』

『感染の疑いもあると見て、政府は注意を呼びかけ・・・』


大手のニュースまとめサイトや、著名人。

さらには政府の公式アカウントからも発信されており、ことの重大さが伺える。


「・・・ん?」


最新の情報を得ようと、スマホの画面をスクロールして更新すると、とある呟きが目についた。


『インキャ同盟GOD 虐げられし者よ集え』


如何にも厨二臭い呟きが、もの凄い勢いで拡散されていた。


好奇心。

男の中で生まれたそれが、呟きと一緒に記載されたリンクを開かせる。


意識不明者の心配など微塵も感じさせない。

尊敬するほどに純粋で、卑下するほどに邪悪な笑みを浮かべて。




南東母夏の部屋


昨日とは違ってメイクをバッチリと決め、スーツに身を包み、如何にも仕事が出来る風の姿へと変身を遂げた南東母夏。


時刻は昼前にも関わらず、母夏は職場に向かわず、自宅でニュース番組を眺めていた。


『都内各所で意識不明者が続出。ネット上では、カップルの組み合わせが多いことから「リア充が爆発した」などといった書き込みが多く見られますが、未だに原因は分かっていません』


いつもの若い女性と代わり、ベテランのアナウンサーが原稿を読み上げている。

ニュースで読まれたように都内各所で意識不明者が続出しているため、母夏が務める会社も急遽休みになったのだった。


「私の所為・・・じゃないよね」


顔に冷や汗を浮かべながら、ひとり呟く母夏。


彼女の脳裏に浮かぶのは、昨日の記憶。

酔っ払っていたこともあり、所々おぼろげではあるが、ひとつだけ確かなことがあった。


それは、妹の火林に介抱されながら、夜の街を闊歩するカップルたちを眺め、放った一言。


「リア充爆発しろ」


自分の姿を見ていた神様が、気まぐれで願いを叶えたのではないか。

そんなふざけた考えが思い浮かぶが、すぐにアホらしいと自分自身に言い聞かせるように、勢いよく首を振った。


気持ちを落ち着けるように、趣味でお洒落な写真を上げているSNSを立ち上げ、タイムラインを眺める。


「・・・なにこれ」


そんな彼女の目に留まったのは、如何にも厨二くさいタイトルの書き込みだった。




秋春黒龍の部屋


ブッラクドラゴンとして活動する時と違い、前髪を下ろした姿は、どこにでもいるおっさんという言葉がぴったりの佇まいだ。


昼前だというのにベッドの上にいる彼の視線は、手元のスマホの画面に注がれていた。


『リア充は爆発する。これからは我々の時代だ。「Gloomy Odious Dawn 憂鬱な 憎まれし者の 夜明け」賛同者よ立ち上がれ』


壮絶な謳い文句の後には、申し込みページが続いている。


「うーん」


画面を見つめたまま、ひとり唸る黒龍。


普段の黒龍であれば、くだらない悪戯だとスルーするところだが、今回はそうもいかない理由があった。


一つは、多くのリア充が実際に意識不明の重体になっていること。

そしてもう一つは、この書き込みが行われた時刻がだという事実だった。


意識不明者が続出していると騒がれ始めたのが、今日の朝方。

つまり、この書き込みは、この混乱を予測した人物が行ったことになるのだ。


「怪しい臭いがするな」


この書き込みに何かを感じ取った黒龍は、敢えて申し込んでみることにした。


頭では不謹慎だと思いながらも、久方ぶりに起きた全くの不測の事態に、密かに胸を踊らせながら。




北山火林の部屋


臨時休校となり、自宅に帰ってきた火林は、自室の机に向かい勉強に励んでいた。


プルル


机に置かれたスマホが振動し、火林の意識を引き寄せる。


彼女のスマホにはゲームなどのアプリは一切インストールされていない。

SNSにも疎く、友達も少ないため、通知がくるとすれば家族からのメッセージである可能性が高い。


「やっぱりお姉ちゃんか」


画面上に表示された名前を見て、溜息をつきながらも安堵したような表情で、メッセージの詳細を開いていく。


『火林!これ一緒に行かない!?』


まるで映画にでも誘うかのような文面の下には、あるページのリンクが貼り付けられていた。


「なにこれ?」


リンク先に表示されたページを見て、火林が怪訝な顔を浮かべる。


「じーおーでぃー?」


難しい単語を復唱する子どものように、優等生の火林は首を傾げた。

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