殴り合いがいいですわ

愛を語る?お嬢様

 ロシアからの留学生、エヴァンジェリーナ・クルバトフ。愛称で、エーヴァと呼ばれるその少女の見た目の美しさも然ることながら、所作の優雅さは爪先にまでおよび見たものを魅了する。


 エーヴァが優雅に歩く行き先にいるのは机に座って、親友の美心みこと話しているうた


 詩はエーヴァの存在に気が付くと、あからさまに嫌そうな顔をする。対するエーヴァは嬉しそうに微笑む。


 これはいつもの光景。


 この学校でエーヴァの微笑みを受け嫌な顔をするのは、詩と美心くらいである。


 エーヴァが嫌そうな顔の詩の耳元に口を近付けると何やら囁く。その姿を見るだけで、なんと絵になるのだろうと周囲は酔いしれる。


 美心は、また始まったかと呆れた表情で少し離れて見守る。


「あんたね……」


 少し低い声で威圧する詩に対しニコニコと微笑んだままのエーヴァ。


「せっかく考えてきましたのよ。一度やってみてほしいですわ」


 相変わらず可愛らしい笑みを浮かべ、エメラルドグリーンの瞳に詩を映すが、その詩は呆れたようにため息をつき、ちょっぴり強引にエーヴァの肩を持つと、引き寄せ耳元で囁く。


 その行動に周囲が色めき立っていることは気が付いていない。


 美心、周囲の反応した意味に気付く。


(小声)「障害物競走までは良しとしよう。なんで互いが殴り合ってゴールを目指すのよ。おかしいでしょ」


 小さな声で話す詩に対しエーヴァは、不思議そうな表情をして普通の声の大きさで会話話をする。


「だって、障害は多い方が燃えますわよ」


 その発言にどよめく周囲。


 美心、下を向いて笑いを堪える。


(小声)「そういう問題じゃないでしょ! 学校でやるなら尚更、あんたと殴りあったらお互い怪我するし、目立つじゃない」


「わたくしは、詩となら目立ってもかまいませんわ。その結果(怪我)だって受け入れますわ」


(小声)「もーっ! 大体みんなビックリするでしょ」


「この際ですわ、わたくしと詩の関係を公にしてみては如何かしら?」


 男女関係なく、みながエーヴァの発言に耳を傾ける。詩の方は聞えないので各自脳内補完で済ませる。


(小声)「ばかっ、そんなこと出来るわけないでしょ。そもそも前世から知り合いですとか言っても信じてくれないでしょ」


「昔のことはいいですの。今のわたくしたちの関係を本気で伝えれば理解してもらえますわ」


(小声)「なによ、今の関係って?」


「ついこの間お互い気持ちを(拳に乗せ)ぶつけ合ったことを覚えてるかしら? あの日の熱、興奮、今でも忘れられませんわ。

 あのとき、わたくしたちはきっと心で通じ合えた。そう強く感じましたもの。

 昔(前世)と違い、今のわたくしたちならきっと上手にやっていけますわ(た・た・か・お・う・ぜっ!)」


 胸を押さえ、頬を朱に染め、熱い眼差しを詩に向けるエーヴァの姿の効果と相成って、周囲はより一層どよめく。


 美心、笑いを堪えれない。


「上手くやってけるって、別に私じゃなくてもさ……(宇宙人と殴り合えばいいじゃん)」


「いいえ、わたくしは詩が一番ですわ(宇宙人いやだ)」


 詩も小声をやめ、普通の声で話し始めるが、それはかえって誤解を進める。


「初めてやった(殴り合った)ときから詩しか考えれませんわ(そもそも誰も勝負してくれないし)。それに最初(前世)は詩(エレノア)から誘ってくれたんじゃありません?」


「初めて(前世)はまだしも、この間のはあんたが強引にやったんじゃない」


「それは認めますわ。でも途中から詩も熱くなってましたわ」


「ぐぬっ、そ、それは……」


「認めて欲しいですわ。詩も本当はわたくしと、やりあいたいのだという事実を!」


 拳を握りぐぬぬぬと震える詩に勝ち誇った表情のエーヴァ。そして壁に手を付いて肩を震わせ笑っている美心。ついでに青ざめた顔でことの成り行きを見守る宮西。


「わ、分かった。ちょっとは認める。ちょっとだけだよ」


「素直が一番ですわ。では早速今晩でもいかがかしら?」


「気が早いって!」


「だって、わたくし待ちきれませんもの!」


「ったく~。ちょっと場所決めようよ」


「ええ! わたくし、人気ひとけのないところが良いですわ! 誰にも邪魔されない二人きりで!(スーがいると止めに入ってくるし、イヌコロは論外だ)」


「そりゃあ、まあね(被害でたら困るし)」


 そんな会話をしながら詩とエーヴァが移動を始め教室から出て行く。


 めんどくさそうに歩く詩の横を、楽しそうに歩くエーヴァ。


 二人を見送った後、様々な憶測が飛び交い噂が広まる。


 このことで、詩ファンクラブとエーヴァファンクラブに加え二人を見守ろうの会が発足。そして一部の女子が詩のことを熱い視線で見始めるという影響があったのだった。



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『転生の女神シルマの補足コーナーっす』




 みんなの女神こと、シルマさんが細かい設定を補足するコーナーっす。今回で24回目っす。更新忘れてないっすよ。


 ※文章が読みづらくなるので「~っす」は省いています。必要な方は脳内補完をお願いします。


 詩とエーヴァは訓練中も時々熱くなって、わりと本気で戦闘を始めることがありスーとシュナイダーは巻き込まれています。結構似た者どうしなのかもしれません。


 エーヴァは前世ではあまり戦えず、不満を持っていましたが、今は定期的に戦えるので幸せみたいです。


 今回のお話の出来事で、詩が攻め、エーヴァが受けとのもっぱらの噂です。お陰(?)で詩は一部の女子人気を得ることができたようです。


 さてさて、次回は『めい子におまかせ!』


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