青薔薇の悪魔

虹渡るカピバラ

第1話 追放された魔法使い

この華やかなパーティーの中でルルは異端だった、才能はない、家柄も底辺で。

顔も地味、ドジで馬鹿で最早、パーティーには不要と判断された。

だから勇者はルルをパーティーから追い出した、勇者達はルルがこれからどんなひどい目に合うか嘲笑った。しかし、僧侶だけは彼女の境遇に涙し勇者にせめて安全な街まで連れて行ってあげて欲しいと懇願した、だがその願いは却下された。

可哀想なルルは、魔物が住まう森に残された。


…筈だった。ルルは、眼鏡や衣服を脱ぎ捨てるそこに立っているのは地味な小娘でなく

黒い軍服姿の美女だった。

「人間の小娘のフリも疲れる…」

呟くように冷たい声が森に響く、どこから出てきたのかニヤニヤと笑う男達が数十人集まってくる、何が目的か彼女は理解した。

「そんなに燃えたいなら燃えるがいい、」

[業炎の大蛇]

赤い魔術紋が彼女の足元に現れる、赤い鱗の大蛇が現れたその身体は炎で包まれている。

大蛇が口を開けその吐息が男達の中の一人にかかった瞬間、男の体から汗がダラダラと流れ穴という穴から煙が上がった。

まるで、肉でも焼くように男の体を内側から焼いているのだろう苦しみもがく男の口から紅い炎が見えた、男は倒れたまま動かなくなった。

「ほぅ、人間でも焼くと美味そうな匂いがするものだな。」

男達は、彼女の言葉を聞いて悲鳴をあげる。

灼熱の炎を纏った大蛇が男達を追いかける、

「助けてくれ、お願いだ。命だけは、命だけは」

「お前達が殺したドワーフの家族も同じことを言った、だが。貴様はなんと答えた?」

彼女の質問に、男は「モンスターだから」と答えた。彼女は微笑んで答えた。

「私にとってもそうだよ、お前達は敵だ。」

大蛇の体が畝り男達を締め上げる、森の中には男達の絶叫と肉の焼けたような匂いが充満した。

この女が何者か、それは遥か昔に地獄と呼ばれる場所に追いやられた魔族達の王である。

名を、ルーバス・ブルーローズ。

この世にある魔術を作った悪魔であり、容貌だけで迫害を受けた亜人種達の王である。

このセテプ大陸には、大国が四つ、小国が七つある。辺境の国であるパラティスタ王国は

亜人種即ち、魔族を初めとするエルフやドワーフ、ドライアドやウンディーネ等の妖精族

獣人や人魚などの人ならざるものの住まう国。

ルーバスがルルという名の小娘に化け勇者一行に入ったかというと、勇者達の故郷アルンテス王国の新王が何を血迷ったかパラティスタの領土欲しさに魔王討伐を掲げ勇者一行などという馬鹿馬鹿しい一派を作り出した。

碌に剣の技術を磨かない勇者、わがままばかりで攻撃を人任せにする弓使い、男に色目を使うことしか脳のない踊り子、唯一魔王討伐に心を痛めたのは僧侶の彼だけだった。

時期に、あの国は滅びる。

あんな馬鹿王には付き合いきれない、ルーバスは心の中で呟きながら自国へと戻ることにした。

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