邦画

『海獣の子供』

原作 海獣の子供

作者 五十嵐大介

監督 渡辺歩

公開 2019年6月7日


個人的点数 ★3.0/5点


あらすじ

 中学生の琉花は父が働く水族館で「海」という少年と出会う。「海」と彼の兄「空」はジュゴンに育てられた特殊な体質の持ち主だった。


 マンハッタンで目撃されるクジラ、光を放ち落ちる隕石、海辺に打ち上げられる大量の深海魚、「祭り」が迫っている。ゲストは既に決まっている。琉花の長い長い夏休みが始まる。




以下、ネタバレ有りの感想です





 ◆ ◆ ◆


 2時間じゃ足りないかなぁ、という内容でした。映像がとにかく美しく、海の生物や水の表現はもちろん、どこか懐かしさを感じる街並みと夏の暑さや花々の生命力までが伝わってくる映像美でした。


 米津玄師さんが好きなので、主題歌のMVは昔から何度も聞いていたんです。だから映画もいつか観たいなとは思っていたのですが、人物の絵柄がどうにも好きになれずに手を付けていませんでした。そこは少しすると慣れてきたのですが、それ以上に声が最後まで馴染みませんでした。もちろん作り手の方々が納得しての人選なので素人がどうこう言う資格はないのですが、ふとした瞬間に「これ声優誰だろ」って考えてしまって映画の世界から現実の世界に引き戻されてしまうのが残念でした。


 映画の内容は、正直半分も理解は出来ていないと思います。悔しい。事前知識ゼロで挑んだのですが、『思い出のマーニー』的な不思議な夏休みのひと時、という感じだと思っていたら結構SFチックで驚きました。要素としては『インターステラー』や『メッセージ』に近いのかな?地球・人・宇宙は繋がっている、そして過去・現在・この世・あの世のボーダーラインとはというのが大きなテーマの映画だったのかな。


 大人たちが「祭り」を必死になって究明しようとする理由が映画だけではよく分かりませんでした。これがもし地球の破滅!みたいな簡単な理由付けがあれば話は早かったのですが。海と空という不思議な人物、隕石という謎の物体、祭りとは何なのか、なぜ琉花がゲストに選ばれたのか、大人たちの思惑......不明瞭な要素が多すぎて映画そのものがぼんやりとしてしまった気がします。まあ私の教養が足りない部分も多々ありますが。


 彼女はあまりに子供でした。売られた喧嘩を倍以上にして返し、子供だけで海へ乗り出すことに対しても楽しさを優先する、好奇心と勇気の分別がまだついていないような存在です。


 中学生という発達途上の少女に二人の命が託されるということの大きさってどれ程なんだろうか。出会わなければよかったと思うのか、あれは夢だったのかもしれないと自らに信じ込ませるのか。それはエンディングのあと、彼女が生まれたばかりの妹のへその緒を切る時のセリフ......


 『命を絶つ感触がした』


 ああ、彼女は託されたものをしっかりと受け取ったのだ。そう感じました。


 夏が待ち遠しくなる映画でした。

 

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映画綺譚 鏡乃 @mirror_no

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