スマホの持ち腐れ

伊達サクット

スマホの持ち腐れ

 スマホを持っているが、果たして必要なのかどうか。


 そもそも、誰からも電話がかかってこない。

 家族も、友人も、恋人もいないからだ。


 インターネットはパソコンで足りている。SNSも基本的にはパソコンでやれば不自由しない。仕事では会社から支給されている社用スマホがある。仕事では散々使っているが、あくまでも仕事上必要だから使っている。


 もしかしたら、個人で持っているスマホは解約してもいいのではないか。ほとんど出番がない。このほとんど使わないスマホに対し、毎月一万円ほど使用料を払っている。一年間でおよそ十二万円だ。


 十二万円あれば何ができる? かなりのことができるだろう。スマホ代を毎月ドブに捨てているように感じられる。


 思い切って解約してしまうか。


 しかし、このご時世、スマホも持っていないってどうなんだろう。

 これは例えばの、想定の話だが、他人にスマホを持っていないと言ったとして、相手は「何で持ってないの?」と聞いてくる。


 すると自分は「かける相手がいないから」と答える。相手は更に「電話意外にも使い道あるでしょ?」と聞いてくる。


 すると自分は「仕事では会社用のスマホがあるし、インターネットは自宅のパソコンがあるから、持ってる意味がない」と答えるだろう。


 それも、自分の交友関係が極めて狭いことをいちいち説明しなければならないので面倒臭い。とりあえずスマホを持ってさえいれば「なぜスマホを持っていないのか」を説明する手間が省ける。


 そういう意味では、少なくともスマホを持っている価値はあるだろう。ただし、それだけで月一万円に見合う価値があるだろうか?


 それも他人に突っ込まれそうで嫌だ。「え? それだけのことに月一万円も払ってるの?」なんて言われそうだ。


 料金プランを見直すのも手かもしれない。


 実は月々の使用料の内訳も把握していない。料金プランが複雑怪奇で面倒だからだ。そもそもスマホに大して興味もないのに、真剣に考える気になれない。


 いっそのこと、ノースマホ主義者になってしまうか。


 しかし、何か緊急時に外で電話する必要が出た場合、不便しそうだ。こういう場合、スマホを手放した途端に必要になったりするものだ。


 結局色々考えると、どうしてもスマホを手放そうとも思えない。そもそもスマホを手放すという行為も面倒臭い。完全に惰性で持ち続けている状態だ。ろくに使わないスマホに、毎月一万円払っているのだ。何か持っていてよかったと思えることがあればいいのに。


 でもスマホの月額料金は他人に言いたくない。言うような知人もいないのだが。

 この使い方で月一万円払っていると言ったら、『情弱』だって職場の同僚に馬鹿にされそうだ。


 便利な情報端末だとは思うが、それが煩わしい。

 かと言って、あえて手放すのもためらわれる。


 何よりアホらしいのは、スマホという、特段興味もない物に対して、こんなに頭の中で結論の出ない考えを延々と巡らしていることだ。


 結局、本当に問題なのはスマホではなく、孤独な自分なのだろう。

 そうなると、スマホ以上に根深い、面倒な問題だ。なぜなら、自分自身に対して、スマホ以上に興味を持てないのだから。


 あまり真剣に考えない方が精神衛生上、よさそうだ。

 大きな溜息は出てくるけど。

 大きな溜息は出てくるけどね。


<終>

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