第65話 NEO麗の足事情

 NEO麗の移動手段、つまり足は如何するのかと思えば、流麗と俺以外は中型免許を持っていたので、それぞれバイクを持っていた。


「何だぁ、武っチもバイク持ってないんだ。あーしをケツに乗ってけて欲しかったんだけどなぁ~」


 仮に俺がバイクを持っていたとして、流麗なんぞをケツに乗せたら胸部のエアクッションで常に圧迫されて運転に集中出来んだろうが。


「流麗は私の後ろに乗るの。武っチパイセンは走るか自転車で来て。遅れたら殺すわよ」


「いやいや、人力でバイクに追いつける訳ないじゃん」


 何故か俺を目の敵にする神子が無茶な要求をすると、火受美は軽く神子の頭を小突いた。


「折角仲間になってくれたんだから邪見にしないの。武さんには私の後ろに乗って貰うよ」


 火受美はYAMAHA DragStar 250というクルーザータイプのバイクのシートをポンポンと叩いた。


「まぁ、打撃が強いのは認めるけどね……でも、武っチパイセン。どさくさに紛れて火受美に抱き着いたりしたら殺すからね!」


 神子の無茶ぶりに対して火受美は俺を擁護した。


「いや、腰に抱き着かないと危ないから、それは仕方ないでしょ? それよりか、神子は後ろに流麗を乗せて」


「勿論! 流麗を乗せる為に免許取ったんだし、CB買ったんだから!」


 神子は一見250ccのバイクにしか見えないHONDA CB125Rというバイクのハンドルを叩いて嬉しそうに言った。


「というか、CB125R買えるならディオ2台買えるんじゃない? いっその事、250ccのバイク買った方が良かったんじゃないか?」


 HONDA Dio110に跨っている孝子は若干羨望の念を込めながら呆れ気味に言った。


「このCB250Rと同じフレームが良いんじゃない! 分かって無いなぁ~」


 バイクの事はよく分からんが、確かにCB125Rは125ccのバイクとは思えない程カッコよく見える。


「ハイハイ。お金持ちは良いですなぁ」


「コラコラ。今日の喧嘩の相手は首師高校ひとごのかみこうこうだから、そこを履き違えないで」


 実質姉御的なまとめ役を担う火受美はパンパンと手を叩いて口論になりそうな空気を制すると、DragStar 250のエンジンをかけた。


「じゃあ、皆、行くよ。武さん。これを被ったら、後ろに乗ってください」


 俺は火受美に渡された黒いフルフェイスのヘルメットを被り、火受美が跨るバイクの後ろに乗った。


「しっかり捕まっていてくださいね」


「その……良いのかい?」


 麗衣や勝子だとあまりニケツしても抵抗が無いが、年下の女の子、しかも姫野先輩の妹さんとなると気が引ける。


「道場で男子とも組打ちの稽古やって慣れてますから男子に密着されても平気ですよ」


「じゃあ……遠慮なく」


「ひゃあっ!」


 俺が腰に腕を回すと、火受美は少し体を震わせ、素っ頓狂な声を上げた。


「……やっぱりやめておこうか?」


「いっ……いえ! お構いなく! 絶対に手を離さないでくださいね!」


 姉貴二人、特に姫野先輩と似た様なイメージを勝手に抱いていたけれど、姫野先輩に比べると、随分女の子っぽいところもあるんだな。


 こうして、準備を整えた俺達は、たった五人で敵地へと向かった。

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