第26話 (似非)美少女にスリスリされモテ男と勘違いされました
「あっ! 周佐先輩! 武先輩! 居らっしゃいましたね!」
赤いメッシュが入った黒い頭髪で二重瞼で睫毛が長く、目がくりくりした一見女の子にしか見えない美少年は手を大きく振ると、短めのスカートを翻しながら俺の席にやって来た。
普通上の学年の教室に入るのって凄く勇気が居ることだと思うけれど、彼には関係無いのかな?
「武先輩! 会いたかったですよ!」
そんな事を言いながら俺の腕に引っ付くとスリスリし始めた。
「ちょっ! 止めてくれ!」
「だってぇ~武先輩にずっと会えなくて寂しかったんだもん♪」
「いやいや、昨日会ったばかりだし! とにかく人が見てるし!」
俺がホモだと思われるだろ! と言う言葉を飲み込んだ。
吾妻君を必死に引き離そうとしたけれど、腕にしっかりくっ付いた吾妻君は離れない。
その様子を見られ、教室内はどよめいていた。
「マジかよ?」
「アレ、アイツの彼女か?」
「あの小碓が?」
「いや、アイツ結構モテるよな?」
「美夜受に周佐に一年まで誑かしているのか?」
「そう言えば殆ど女としか話さないけど、実はリア充なんか?」
周囲からそんな声が聞こえて来る。
クラスが変わったし、前のクラスの時みたいに露骨に嫌われる事は無くなったが、それでも俺が(見た目だけ)美少女と関わっている事が奇異の目で見られて居る様だ。
幸い誰も吾妻君が男の娘だと気づいていない様だ。
というか、学校も何で女装を許可しているのか謎だった。
「ねぇ香月、下僕武に前立腺突きをしたいなら後で好きなだけして良いから、それよりかわざわざ二年の教室まで何の様かしら?」
「いや……本人の意思をスルーして人のケツの事を勝手に決めないでくれ」
澪の影響でも受けやがったか? いや、それ以上に腐女子みたいな事をこのイカレ女がほざいていた。
「ハイ! 後にします! 今日は勝子先輩に用があるんですよ」
吾妻君は意味ありげな妖しい流し目で俺をチラっと見た後、ようやく俺を解放してくれた。
俺は吾妻君の視線に一瞬寒気を感じた。
アハハ。
まさか、本気にしているんじゃ無いよね?
「私に用事って、もしかしてボクシング部の件かしら?」
「ハイ。僕、ボクシング部に入るつもりなので、勝子先輩もボクシング再開するって聞いていたからお誘いに来ました」
「そうね。それは丁度良かったわ。ボクシング部の練習所は知っているかしら?」
「ハイ! 下調べはしています!」
「じゃあ、放課後、練習所の近くで待ち合わせしましょう。下僕武も来るから」
「えっ! もしかして武先輩もボクシング部に入部するんですかぁ!」
吾妻君はキラキラと目を輝かせながら俺に聞いてきた。
「いや……入部も何も俺はボクシング部に行くとは一言も言ってないんですが……」
「どうせ廃部になりそうな理由は部員が足りないんでしょ? 数合わせにアンタも来なさい」
麗衣と共に、もう一人のご主人様である勝子の命令を拒否する権利は俺には無かった。
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