第24話 君が欲しいなぁ
「気は確かか? テメーラ三人しか居ねーじゃねーか?」
「『麗』もあーしが知っている時より人数が増えたみたいだけれど、それでも十人も居ないんでしょ?」
「はっ! こっちも全員格闘技の使い手の猛者揃いだぜ。テメーラが今まで潰して来た雑魚ヤンキーどもとは訳が違うぜ?」
「うん。この前見たばかりだから知っている。だから、3対3で勝ち越した方が言う事を聞くっていうのは如何かな? その位のハンデは『麗』の方がパイセンだから良いでしょ?」
この前見たって、もしかして俺の事だろうか?
それはとにかく、自分から対決を持ちかけながらも、少しでも不利を減らそうと条件を付ける辺り、意外と
「上等だ。妹分だろうが売られた喧嘩は買ってやる。だが、今日はやらねーよ」
「あーし達の事気遣っているつもり? 良い具合に身体が温まったから今からやって丁度良いぐらいだけどね」
「ちげーよ。負けた時の言い訳にされたくねーからだ」
「ハイハイ、分かりましたよ、優しい麗衣ちゃん♪」
今からやって丁度良いと言うのは恐らく、流麗のハッタリだろう。
麗衣が正々堂々と勝負しなければ気が済まない性格を把握した上で言っているのかも知れない。
「で、場所と時間は如何するの?」
「金曜日19時、立国川公園で良いか?」
「りょーか~い!」
喧嘩の約束であるのにも関わらず、流麗は緊張感の欠片も無く麗衣に向かってふざけた様子で敬礼した。
「んとねー、あとルール如何する?」
「武器は無し。拳サポ、オープンフィンガーグローブの類は使って良いぜ。あたし等も使うからな。あと、お前等はヘッドギア使って良いぜ」
「拳サポ使うけどギアはいらない。麗衣ちゃんと同じ条件じゃなきゃやーよ」
「好きにしろ、後で後悔しても知らねーぞ」
トントン拍子に話が進んでいくので俺は慌てて話を遮った。
「ちょっ……一寸待って! 何で喧嘩する事が前提で話が進んでいるの?」
「アホなこと聞くんじゃねーよ。よりによって麗の偽者に喧嘩売られたんだぞ? これが黙ってられるかよ!」
「そうだよねー♪それでこそあーしが惚れた麗衣ちゃんだよ♪」
無免許でブレーキも分からないくせに二人乗りのバイクで体育館に突っ込む様なイカレ女の考えを理解しようとしても無駄かも知れない。
「で、あたし等が勝ったら不良狩り何て真似は止める事だが、テメーラの条件は如何する?」
「うーん……そうだねぇ……そこの君にあーし等の仲間になって貰おうかな?」
流麗は俺を指さして言った。
「へ? 俺?」
俺は自分を指さし思わず流麗に聞き返した。
「うん。君が欲しいなぁ」
流麗がにんまりと微笑むのと対照的に麗衣と勝子は射貫くような鋭い視線で俺を睨みつけてきた。
「武テメー……何時の間にか流麗を
「幾ら下僕武が麗衣ちゃんから男扱いされてないからって、流麗ちゃんに手を出すなんて……節操がないのにも程があるわよ?」
二人はパキポキと拳を鳴らし始め、後ろでは香織が俯き加減で「やっぱり武先輩はオッパイの大きい子の方が……」と呟いていた。
「えっと、タケル君と同じ名前で武君? って言うの? 君だって麗衣ちゃんみたいな暴力女よりあーしに可愛がられた方が良いでしょ? パフパフして良いから、わざと負けてね♪」
パワハラ暴力女上司とセクハラエロ女上司どちらかを選べという事か。
悪くない提案かも知れないと真剣に考えこんでいる俺の心を見透かしてか、麗衣が後ろから俺の頭を小突いた。
「流麗! あたしの目の前で堂々と武を買収してるんじゃねーよ!」
「にゃはははっ! イッツ・ジャパニーズ・ジョークってヤツ。武君を可愛いがりたいのは本当だけど、ツヨカワ男子だって事は知ってるから、戦力としても欲しいのは事実だよ」
「それを言うならあたし等も同じだ。何せ、コイツはあたしと引き分けたんだからよぉ」
麗衣は以前、俺とほぼプロのルールと同じ形式でスパーリングをして引き分けた事を言っていた。
「へぇ……アマチュアキックで3階級優勝の麗衣ちゃん相手に互角って、想像以上だね」
流麗の目が剣呑に光った。
「戦うのが益々楽しみになったよ♪ で、相手は当日こっちが指定して良い?」
「ああ、二年のメンバー指定するなら構わねーよ」
神子や流麗の実力を見た限りでは、一年で彼女らに対抗できるのは恐らく澪と吾妻君だけで、素手で戦うと言う前提ならば香織や静江では彼女らに勝つのは難しいというのが率直な感想だ。
だから、二年生を選ばせるのは賢明な判断だった。
……いや、だとすると俺も戦わないと駄目な可能性が高いよな?
「
「そりゃ好都合だが舐めていると怪我するぜ? で、条件はこんな所で良いか?」
「充分だよ。じゃあ、楽しみにしているからね♪」
流麗は俺に向かってウィンクをしながら投げキッスをしてから、俺達に背を向けると、神子は俺に今にも殴り掛からんばかりに一睨むと、火受美に促され流麗と共に去った。
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