主役じゃありません、一般人です。

清水裕

でばがめ。

 漆黒の宇宙空間。


 煌めく星々……などはなく、スペースデブリなどが漂う宇宙空間を巨大戦艦がゆっくりと滑るように移動していた。

 ……が、突如その戦艦へと、先の見えない宇宙空間からビーム砲が撃ち込まれた。

 しかし戦艦のクルーがビーム砲の接近を察知していたのか、戦艦は巨大な艦体を傾けてビーム砲の直撃を免れ、その返し刀でビーム砲が撃ち込まれた方へと戦艦が保有する武装の一つである宇宙魚雷が数発連続して発射された。

 発射から数秒経過、宇宙空間に爆発という名の花が咲き誇り、遅れて爆発の振動が宇宙を揺らす。

 直後、爆発が起きた方向から全長が30メートルほどはある黒を基調とした人型兵器が3基現れ、戦艦に向けて突撃してきた。

 一方で巨大戦艦のハッチが開くと、巨大戦艦が保有するエースパイロットが搭乗する白色の人型兵器が撃ち出されるようにして発進した。

 人型兵器の瞳がグワンッと光り、ブースターが火を噴き、機体が空を駆ける。

 その瞬間から人型兵器同士の戦いが始まり、巨大戦艦は人型兵器に続いて現れた敵戦力の巨大戦艦とのドッグファイトに興じる。

 戦艦同士によるミサイルによる応酬、大小入り乱れるビーム砲の乱れ撃ち。

 巨大戦艦はそれらの攻撃を避け、時には謎のシステムによって発生するエネルギーシールドによる直撃の回避などが繰り広げられる。


 一方で人型兵器たちの戦いも苛烈なものとなっていた。

 数に分がある敵機体が白い機体を囲うようにして攻撃を仕掛けていく。

 それを白い機体は回避し続けるのだが、攻撃をする暇など与えないとばかりに何度も続けざまに邪魔をしてくる。

 それをパイロットが鬱陶しく思っているのか、一瞬ブレが生じる。

 それは敵にとってはチャンスであり、白い機体を倒すべく黒い機体たちは包囲したままビーム砲を撃ち込んだ。


 ――GUOOOOOOOO――!!


 瞬間、白色の人型兵器が咆哮を上げるように口元を開けると口が、瞳が光りを放った。

 そしてシステムが起動したと同時に背中からエネルギーの翼が放出される。直後――白色の機体の姿はビームの包囲網の中から掻き消え、高速でビームを回避すると共に敵の機体へと移動すると左右の腰部に搭載されているビームナイフを抜き放ち、下から上へと上げる。

 突然のことで対処できなかったその機体の両腕は切り落とされ、両腕は爆発した。

 仲間が無力化され驚いたのか、敵に戸惑いが見られた。瞬間、素早く引き抜かれたビーム砲により、敵機体の頭部と両腕のつなぎ目が撃ち抜かれる。すると、撃ち抜かれた機体は機能を停止したようで瞳から光が消えて反応が無くなる。

 こうして一瞬の内に2体の機体が無力化されたが、その代償は大きく……白い機体が放出していたエネルギーの翼が徐々に縮んでいくのが見えた。

 それがチャンスとでも言うように最後の一機が白い機体へと襲い掛かる。

 瞬間、両者のビームソードがぶつかり合い、バチバチとスパークが宇宙を光らせるが白い機体の胴体への蹴りと共に距離が取られた。

 しかし敵側のエースパイロットが搭乗しているだろう黒と赤に彩られた機体はまだチャンスを窺うとばかりに白色の機体とつかず離れずの攻防を繰り広げる。

 それがしばらく続き、白い機体のエネルギーが尽きようとしているのが明らかであったというのに……敵母艦による撤退の指示が出されたのか赤色の信号弾が撃ち出された。

 するとこれまで白い機体と戦っていた敵機体は、未だ戦う意思を示す白い機体から離れると仲間たちの機体を両腕で抱くと……逃げ帰っていく敵母艦に向けて移動していった。


「ふぅ……。何とかなったな……」

 去っていく敵を見ながら、白い機体のエースパイロットがコックピットで声を漏らす。

 だがその声は誰にも届かない。いや、届いてはいけない。

 白い機体のパイロットは自身の母艦と共に追撃を行わず、ジッと敵が去っていくのを見るだけであった。


 と、そんな一幕を俺はスペースデブリに偽装したひと一人が暮らせるほどの大きさの監視衛星から見ていた。

 おっと、次はこっちだな、こっち。

 そう思いながら俺はさっさと監視衛星から転移した。


 ●


 昼の採石場。


 そこには十字架に張り付けられた子供が数人居り、それを見上げながら悪の組織ダルイーンが創り出した怪人が笑いを上げていた。

 ちなみに全身黒タイツの戦闘員も10人近くはうろうろとうろついている。

『グワーハッハッハ! 貴様らはあいつを誘き寄せるために役立ってもらうぞ!!』

「「うわ~~んっ! こわいよぉ、助けてぇー!!」」

『グワーハッハッハ、泣け。叫べ~~っ!!』

『『『ヴィー、ヴィー!』』』


『待てーーい!!』


 ゲラゲラ笑う怪人と全身黒タイツの戦闘員が奇妙な鳴き声を上げる中、採石場に声が響き渡る。

 強く、張りのある声。

 その声に怪人は反応し、声を荒げて闘志を漲らせる。

『来たか! ええい、何処だ。何処に居る! 探せ、探せっ!』

『『『ヴィー! ヴィー!!』』』

 戦闘員が鳴き声を上げ、怪人と共にキョロキョロと周囲を見渡す。

 すると声はさらに響く。


『俺はここだっ!!』


 ジャリッ、と音がした瞬間、採石場を見下ろすようにして仮面の戦士が立っていた。

 メタリックな黒色のスーツに身を包み、赤い瞳を光らせる。

 首にはマフラー、胸の中央には自身を象徴する【C】のマーク。

 彼こそ仮面で顔を隠す正義のヒーロー。

 悪の組織と戦い人々を救う仮面のヒーロー!

 その名も正義のヒーロー、仮面ファイターC3!!


『現れたな! 仮面ファイター!! 今日が貴様の命日となるのだーー!!』

『そうは行くかな! とうっ!!』

 自信満々に叫ぶ怪人を他所に仮面ファイターはジャンプし、十字架に縛り付けられる子供たちを助けるべく敵のど真ん中へと降り立つ。

『『『ヴィー! ヴィー!』』』

『はぁ! とりゃ!!』

『『『ヴィー!!』』』

 直後、怪人の命令を受けた戦闘員たちが仮面ファイターへと襲い掛かるが、彼は戦闘員を殴り、蹴り、戦う。

 仮面ファイターが戦闘員を殴り、蹴るたびにドゴンッドゴンッという重い音が響くのだが、それはきっと演出だろう。

 そしてその攻防の片手間で子供たちを縛る鎖を手で引き千切り、囚われていた子供たちを逃がしていく。

『さあ逃げるんだ!』

「「ありがとう、仮面ファイター!」」

 子供たちは我先にと逃げていくのだが、戦闘員も怪人も子供たちは襲わない。

 仮面ファイターを誘き寄せるためだけに捕らえたのだから、襲うわけがない。

『ええい、小癪な! だが仮面ファイターが不利なのは変わりない! 死ねぇ~~!!』

 叫び、怪人は仮面ファイターへと襲い掛かる。

 戦闘員は倒されているため、残っているのは怪人だけなのだが問題はないのだろう。


『ファイターキィィィィック!!』

『ぐ、ぐわああっ!! わ、我が組織に栄光あれぇぇぇ!!』

 そして3分ほど経って、仮面ファイターのキックが怪人へと炸裂して怪人は仰向けに倒れると、盛大に爆発したのだった。

『ふう、強い敵だった……。さて、帰るか!』

 汗を拭う仕草をしてから、仮面ファイターはエンジンが搭載されていない足でこぐタイプのバイクに跨るとその場を後にした。

 免許はまだ持っていない為、ただのバイクであるが、彼の移動手段はこれだけなのだ。

 こうして仮面ファイターの戦いは日夜続くのである。


「おやっさんとかサポート役の人、せめて自動制御とかAI搭載で走ってくれる乗り物を開発してやれよ……」

 去っていく仮面ファイターを見ながら、俺は採石場の土の中から姿を現す。

 ここで戦いが行われるのは想定済みだったから、俺は隠れて彼らの戦いを見ていた。

 やっぱりこういうヒーローの戦いは間近で見ないとな!

 っと、次はあっちだな。そう思いながら俺はまたも転移した。


 ●


 昼の商店街。


 街のスーパーや八百屋、精肉店などが並ぶ少し昔ながらの商店街。

 そこには買い物に来た主婦や売り込みを行う販売員が居るのだが、異常は起きた。

『ドンダーケーーッ!』

「「う、うわーーっ!!」」

 突如、何処からともなく8メートルほどの二頭身サイズのモンスターが現れたのだ。

 現れたモンスターに商店街の人々は驚きの声を上げる。

 そんな声を聞きながらモンスターは商店街の八百屋から野菜を取ってもぐもぐと食べ始めたり、精肉店の揚げ物を食べ始めたりする。更にはスーパーからお菓子やパンも取って食べるのを見て、それを見た商店街の人達の叫びがさらに上がる。

「う、うわぁ! う、ウチの野菜がぁ!」

「おれの丹精込めて作った揚げもんがぁ!!」

「パンやお菓子がーーっ!!」

「「「や、やめてくれ~~っ!!」」」

『ドンダーケーーッ!!』

 口々に叫ぶ人達が鬱陶しく感じたのか、モンスターは腕を振り上げて商店街の人達へと襲い掛かろうとした。

 だがその瞬間、モンスターへと四色の光が叩き込まれた。

『ドンダーケーーッ!?』

 バスンッと音を立てながら、モンスターは叫び声を上げ倒れる。

 そして、それに対峙するように四色の光……いや、四人の少女が地面へと立つ。

「そこまでよ! ドンダーケ!!」

「この街の平和は~!」

「あたしたちが守ってみせる!」

「それが私たちの使命だからッ!!」

 赤、青、黄、緑、そんな色をモチーフにした少女たちが地面に倒れたモンスター……ドンダーケを指差しながら声を上げ、ポーズを決める。

 そう、彼女達は正義のヒロイン。

 ポーズをとった瞬間、四色の光が背後に輝き、口上を口にする。


「燃える真っ赤な炎、プリティーファイアー!」

「渦巻く青い大海、プリティーアクア!」

「弾けるバチバチの雷~、プリティーサンダ~」

「生い茂る濃緑の樹海、プリティーアース!」


「「「「四人そろって、プリティーエレメント!!」」」」


 四色の光が放たれ、彼女達を彩る。

 これが彼女達、正義のヒロインプリティーエレメント!

「現れたな、プリティーエレメントの小娘どもが!!」

 ポーズを取ってドンダーケが怯んだと同時に声が響き……空からマントを羽織った男が現れた。

 どう見ても敵の幹部である。

「コワルダー! 街の人の迷惑を考えなさいっ!」

「知るか! 何度も何度も小言は煩いんだよ! 行け、ドンダーケ!!」

『ドンダーケーーッ!!』

 プリティーファイアーが幹部、コワルダーへと怒るとコワルダーは忌々しそうに叫び、ドンダーケに指示を出す。

 指示を出されたドンダーケは拳を振り上げ、プリティーエレメントへと襲い掛かる。

「行くよ、みんな!」

「「「わかった(よ~)!!」」」

 四方に散ってプリティーエレメント達はドンダーケへと攻撃を仕掛けていく。

 しかしそれを邪魔すると言わんばかりにコワルダーがリーダー格であるプリティーファイアーへと襲い掛かり、一般人には見えないスピードで殴る蹴るの応酬を繰り広げる。

 まあ、プリティーファイアーが居なくても他の三人だけでもドンダーケへの対応はかなりまかり通るものである。

「「はああああっ!!」」

 バシィィンッとプリティーファイアーとコワルダーの拳がぶつかり合い、互いが弾かれ距離を取った瞬間、プリティーエレメント達はドンダーケへとトドメを放つべく武器には程遠い見た目だけれども武器であるステッキを取り出す。

 取り出したステッキへと彼女達が手をかざし、四人でステッキを合わせた瞬間、四色の光がひとつになって巨大な閃光となってドンダーケとコワルダーに向かって放たれた。

「くっ!」

 だが寸でのところでコワルダーは回避し、閃光がドンダーケを呑み込んだ。

『ド、ドンダーケ~~~~ッ!!』

 キラキラと光る閃光に呑み込まれ、分解するようにしてドンダーケは浄化される。

 それを見届けコワルダーは忌々しそうにプリティーエレメント達を睨みつける。

「くそっ、プリティーエレメント! 覚えていろよ!!」

 叫び、捨て台詞を最後にコワルダーはこの場から逃げていった。

 すると先ほどまで食い荒らされていた八百屋の野菜や精肉店の揚げ物やスーパーのパンやお菓子が何もなかったかのように元通りに戻った。

「よーし、私たちの勝利だーーっ!」

「「「おーーっ!」」」

 プリティーファイアーが手を挙げ、他のメンバーとパンと手を叩く。

 そして彼女達は変身を解いて一般人へと戻る。

「みんな、よくやったエレ!」

 そんな彼女達へとマスコットが近づくと、浄化したドンダーケのもとを与えていた。


 うんうん、やっぱり昨今の変身ヒロインはこんな感じだよなぁ。

 一連のやり取りを俺は見ながら頷く。

 っと、今度は隣町でシガイセーンを相手に地球戦隊マモルンジャーが活動を始めたか。

 気配を察知し、俺は素早く転移を行った。


 ●


 この世界には人々が知らないけれども、裏では色んなヒーローやヒロインが居る。

 人型兵器に乗って戦う兵士だったり、仮面で顔を隠したヒーローだったり、摩訶不思議な存在に力を与えられたヒロインだったり、個人で創った家族で作り上げて悪の組織と戦う戦隊だったり……そんな者達が居るのだ。

 彼らの平均年齢は基本的に15歳から16歳という思春期真っただ中。

 そんな彼らが平日は何をしているかと言うと、答えは簡単だ。

 そう……、高校である。学園生活である。

 楽しい楽しい学園生活に夢を持っているのかは分からないけれども、登校しているのだから楽しみにしていたのだろう。

 勝手にそう思うことにして、俺は長ったらしい校長の挨拶を聞き終えてから自分がこれから通うクラスへと入った。


「よっ、今日からよろしくな! えーっと……」

「佐藤太郎だ。よろしくな。えーっと」

 佐藤太郎。

 ありきたりな何処にでも居るような名前が俺の名前であり、俺に声をかけてきたイケメン男子に気さくに話しかけた。

 誰とでもフレンドリー、何も知らない普通の友達という気軽さを持って俺は挨拶をするとイケメン男子……というか実は地球戦隊マモルンジャーのリーダーであるマモルンアースこと地球球介が笑みを向けてきた。

「地球球介だ。一年間よろしくな、佐藤」

「ああ、気軽に太郎と呼んでも良いからな」

「オーケー、もう少し親しくなったら呼ぶさ!」

 とかそんな感じに同じクラスメイトとなったヒーローやヒロイン達に自己紹介ながら声をかける。

 ……うん、冗談ではないぞ。このクラスに居るのは全員ヒーローやヒロインなのだ。

 あと面白いことに悪の組織のメンバーも実はいるのだが……誰が誰とか、実は親しく話す女子たちが別の敵組織とかまったく知らないのだ。

 あ、プリティーエレメントの敵幹部であるコワルダーこと芥くんが宇宙を戦場にして人型兵器ジェネシスブレイバーに乗って戦う政府所属の兵士の安土くんと話をしている。

 別のグループではプリティーファイアーこと伊吹さんが仮面ファイターと敵対している悪の組織ダルイーンの首領であるロリポジションのダルダルダ姫こと姫ちゃんとLINEを交換しているな。

 そんな風に互いの事情をまったく知らない者達が友人となっていくのを俺は見ている。

 ちなみに俺も交友を深めるべく、友人となっていく。ただし、だれがどのヒーローやヒロインなのかを理解して。

 あと友達となるには基本的には気さくに話しかけて、相手を害さない。

 それが一番の秘訣だと俺は思っている。


 ん、俺自身は何かすごい力を持っているヒーローなのかって?

 ちがうちがう。俺は今世ではヒーローとか、凄い力を持っているとかいう宿命を付けられたような人間ではない。

 いたって普通の何処にでも居るなりたてほやほやの男子高校生だ。


 ただ単に、全員がどんな風に地球とか世界とか町内を護っているのかを、ほんの間近で見て、どんな風に彼らの物語が綴られているのかを見るのが好きなだけ。

 そんな出羽亀根性がある前世では異世界の英雄で、可視化されるステータスが人類をやめているくらいに限界を何度も突破し続けて、嫁を何人も娶っていただけの本当にどこにでもいる男子高校生だ。

 な、普通の男子高校生だろ?


「は~い、みなさん。自己紹介は終わりましたか~」

 頃合いを見計らった。とでもいうように、このクラスの担任となった新任教師の女性が入ってくる。

 見た目は何というかとても地味な印象の人だった。というよりも目立たないように女教師は自身を彩っているのが分かる。

 ぐるぐるメガネ、長い髪をまとめた三つ編み、ブラウスにロングスカート、時期によっては羽織るカーディガン。

 ちなみに地味な見た目に騙されているだろうが、どう見ても巨乳である。もちもちである。ふにふにだ。

 うん、どう見ても流されそうなダメダメ新任教師といった見た目だ。百点!

 そう思いながらニッコリ笑顔を浮かべながら、担任の自己紹介が始ま……ろうとした瞬間、何名かのスマホとか腕に付けた変身アイテムとか、窓の外からチラチラと不可視となった精霊とかが一斉に鳴ったり現れたりした。

「「「「「!?」」」」」

 直後、全員が立ち上がった。

「ぇ、うええぇっ!? み、みなさん、どうしましたか~!?」

「「「「す、すみません先生! ちょっと、トイレに!!」」」」

 一斉に彼らはそう叫ぶと慌てたように教室から出て行った。

 そして、あとに残るのは俺と担任だけ。

 出て行った生徒達をぽか~んとした表情で担任は見ていた……が、すぐに俺に気づく。

「え、えっと、佐藤……くん? は行かなくても良いんですか?」

「トイレですか? いやぁ、ついさっきしっかりしてきましたよ!」

「そ、そうですか~……。あれぇ?」

 納得がいかない。そんな風に首を傾げながら担任は教室から出るに出られない。

 そんな表情を浮かべるのは、当り前だ。

 彼女が政府に渡された指令書にはこのクラスに居るのは全員ヒーローやヒロイン(一部悪役)だけが割り振られていると聞いていたのだから。

 そう、この地味でドジっ子担当な女教師も実は政府から寄越された凄腕のNINJAなのだ。ああいうドジっ子地味っ子風な衣装の下にはアダルディックな短い裾なうえにスリットがばっちりある忍者衣装が着こまれている。

 変装と雲隠れが得意らしいです。

 そして今、彼らが出て行った後に監視目的に動こうとしていたのだが、俺のせいで彼女は監視に行くことが出来ない。

 いやー、たいへんだ。たいへんだなー。

「先生、これからどうしましょうか?」

「え……えっと~。じ、じゃあ、今日は解散ということで~……」

 俺の言葉に頭が真っ白となっていた担任だが、何とか声を絞り出して俺へと言うとそそくさと教室から出て行った。

 それを見届けてから俺も教室中に感じる監視を誤魔化しながら、転移を行う。

 こうして俺のヒーローやヒロインの中に居る普通の学生という高校生活が幕を開けたのだった。


 ちなみに仮面ファイターC3は中学三年生という意味だったようで、今日からは仮面ファイターK1だそうだ。

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主役じゃありません、一般人です。 清水裕 @Yutaka_Shimizu

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