第45話 麻薬取引の真実



「麻薬密売…表ではそうなってるけど、実際は違うみたいだね。」


ユーアとシアはあらゆる場所で情報を集めていた。


「症状は麻薬使用時そのものだけど、証拠がない。隠し切ろうにしても不可能な筈なのに。」


「コレは能力と捉える方がいいね。」


「うん、あとはどこで取引してるのか…それがわかれば全て解決するのに…。」


「ねぇ、シア。麻薬取引現場といえば?」


「人目につかない場所だよね…。」


「人目につかない場所といえば?」


「ねぇ、まさかだけど…。」


「この街の端にある廃墟!密売取引は廃墟!コレは定番だよ!」


「やっぱりね…。」


「それじゃあ行こう!犯人を確保するぞ!」


シアは仕方なく、ユーアについていくのだった。


 ー廃墟ー


「まさか…本当にいるとは…。」


そこでは悪栄教司教が何かの取引をしていた。


「やっぱり、私の勘は当たるんだよ!」


「でも、麻薬は持ってないのにお金を貰ってる。能力で騙してるのかしら?」


「多分そうだね…取り敢えず取り押さえよう。」


「うん、【加護恩恵支配・行動不能】」


その瞬間、司教の動きが止まった。


「クソアマ!俺様を抑えるなど!この悪栄教第73司教である甲羅寺昱張様になんてことを!」


「甲羅寺家…かなり名門の家だね。その君がなんでこんなことを?」


「は、お前らみたいな愚民に教えることなどない。さっさと離せ!」


「そう、なら離してあげる。【自然支配・風玉】。恩恵解除。」


風は昱張を切り刻み、彼は血だらけになっていた。


「お前、おれを傷物にしろとは言ってないぞ。」


「私の加護と恩恵には自動回復もついてたんだけど、それを外せと言ったのはあなたよね?」


「…クソアマが…。」


(これならすぐ終わりそうね。)


その瞬間、シアの構想は全て狂った。

今、シアが切り刻んでた男が白い髪の女性…ユーアだったのだ。


「…え?なんで…。」


「【魔司能力・錯覚】……お前はコイツを俺と錯覚し、コイツは錯覚して能力を使えなかった。」


シアは昱張に光線を打ったが、それが当たることはなかった。


「残念。お前はすでに俺の位置すら錯覚し、じきに五感すら忘れる。」


「が……が……。」


「…どうだ?お得意の技を使えばいいじゃねぇか?」


「私はどうやって…。」


「忘れたのか。もうそこまで効果が出たのか。」


   ー我を護る光の精霊よ…


「私はどうすれば…。」


   ー襲い来たる敵かたきの力を避け…


「俺と一緒に来るか?お前の新しい道に導いてやる。」


   ーこの世界を光で満たせ…


「はい、宜しくお願い…。」


   ー【玲】


放たれた光は空間を曲げ、能力をも曲げた。


「大丈夫?シア?」


「ユーア、ごめんなさい。」


「いいのよ、あいつの【錯覚】は厄介だから。」


「なんで…お前には…効かないんだ…。」


「私の【玲】は全てを私の光に塗り替える技。それに能力なんて効かない。」


「…そんな…ことが…あって…たまるか!!【魔司能力・記憶剥奪】!」


「【玲】」


昱張が使った能力はすぐに消えた。


「何故だ!?何故我の力がこうもことごとく砕かれる!?」


「【言霊】…【『ひ』の言霊よ。我に力を。】」


「何を!?」


「私の【思想現実】は思うことと話すことで発動する。そして、その応用で【言霊】と共鳴してその力を使うことができる。」


「何を言っている…。」


「その力は絶大。たとえば『ひ』から『火』みたいにね。言葉を組み合わせることでいろんなことを再現できる。コレは私の思想じゃないから手加減はできない。対象を絶対にそうしてしまう。【火】よ!」


「グハァァァ!!!何故だ!なぜ我が燃える!?」


「そのまま燃え尽きろ。自分の罪を後悔せよ。」


「…そんなことで…終わるか!!【魔司能力・口封】!そして、【悪魔契約解放】!!」


火は消え、昱張の数は消えた。


「次は全力だ。それまでせいぜい死なずにいるんだな。」


そうして、昱張は去って行った。


「まさか、ここまでとは思ってもいなかったわ。」


「本当、ごめんなさいね。」


「いいのよ。でも、あれで【悪魔紋】、全能力を出したってことにはならなかった。まだ手を隠してる。」


「これ以上追うのは危険ってこと?」


「うん、シアには相手が悪いしね。」


「…」


「?シア、どうかしたの?」


「なんだか嫌な感じがする。【死】の感じが…。」


「死!?」


「白斗様に何かあったのかもしれない。向かいましょう。」


「ええ,早く行かないと。」


そうして、2人は全速力で白斗の元へ向かったのだった。



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次回予告

      第46話「機械暴走」


そして、地獄が始まる。

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