第29話 取り戻された平和


「…うん?そうか,俺、また倒れたのか…。」


白斗はまたもやベッドの上で目を覚ました。


「主、体調はいかがですか?」


「エイト,迷惑かけたな。大丈夫だぞ!」


「…そう,ですか。なら、今…すぐ…来てくだ…さい…。」


「何が?」


「シアちゃーーん!!!師匠を取るなんて許せないよーー!!!!」


「え?」


白斗の家のリビングでは,ユーアとシアがはなしていた。


「だから、何度も話したじゃないですか〜、そうしてなかったら、ハクト様は亡くなってたし、精霊も全滅、自然が無くなって,人類も全滅でした!それにユーアちゃんがハクト様の一番になればいいじゃないですか?」


「簡単に言うけど〜!あの人、絶対恋愛とか興味ないって〜!あってもわたしには興味なさそうだし!絶対童貞だよ!」


「聞こえてんぞ、ユーア。誰が童貞だって?」


「じゃあ童貞じゃないんですか?」


「童貞だよ!何か悪いか!?あ!?」


「開き直った……。」


「流石ハクト様です!」


「なんか、嬉しくないな〜。」


「ごめんください!」


その時,玄関から声がした。


「あ!天花さん!どうしたんですか?」


「一応今回のことについて話しておかないといけないと思ってね。」


「なるほど、どうぞお上がりください。」


そして白斗、ユーア、エイト、シア、天花はテーブルを中心にして、話し始めた。


「まず,今回は本当にありがとうございました。」


天花が頭を下げ,礼をした。


「そんな!頭を上げてください!」


「私としても、防衛軍の方に協力していただけて,精霊が守られ、感謝するばかりなので。礼をしたいのは私なのです。」


(それをハクト様に止められた。「困ってる人がいたら助ける。常識だろ?」、それを平然とこなすのはハクト様だけです。)


「ならせめて、情報共有はさせてね。」


「はい,お願いします。」


「最初に,私が戦った相手…闇蟲No.6・蜈蚣なんだけど、惜しくも逃げられてしまったわ。」


「そうなんですか?」


「相手はかなり強かった、悪栄教の地位は闇蟲には関係ないと思った方がいいわ。そして次に、今回のこと,【精霊抹殺事件】とでも呼びましょうか、この事件,最近の悪栄教が起こした事件としては2件目なの。」


「二件目?一件目は何が?」


「一件目はある神社を狙った事件だった。場所はラファテア王国、ちなみにここがミステリア王国というのは知ってるわよね?」


「はい,確か三大王国のひとつでしたよね。」


「その通り、そしてこの事件は悪栄教司教2人、そして信者による犯行だった。一部の信者は確保したわ。」


「防衛軍が解決したんですね。」


「ええ,でも状況は悪かったの。その事件の後から魔物の暴走、【スタンピート】が始まったの。」


「スタンピート…」


「何か知ってるの?」


「はい,実はこの空島にはダンジョンがあるんです。」


「?この島は白斗君が魔法で作ったものじゃなかったかしら?」


「ダンジョンも作ったんです!」


「規格外ね、本当。」


「それでそのダンジョンの第一層のボスが暴走したんです。」


「そのモンスターは?」


「[アースタートル]、自我を保って行動しつつ、【魔獣王堕解】で暴走しました。通常時は言葉も話していました。」


「SS級モンスターの暴走、それに言葉を話す、本当なの?」


そこにユーアが答えた。


「本当です!私も見ました!」


「貴女が言うなら本当ね。2人以上の証言がある訳だし。それにしてもSS級がいることにも驚きだけど,まさか,それが暴走するなんてね。」


「もう一つあります!」


「ユーアちゃん、どうしたのかしら?」


「私が戦った悪栄教司教も暴走しました。」


「え!?人が!?」


「はい,まるで暴走させられたような。その司教が死にかけの時に暴走したんです。」


「興味深い発見ができたわ。ありがとう、私は本部に報告に戻るわね。」


「はい!ありがとうございました!」


そして天花が去っていった。



「今回、俺は全く活躍できなかった。」


「そんなことないですよ!」


「そうですよ!最後,悪栄教を倒したのは主なんですよ!」


「けど俺ひとりでは何もできなかった。魔法を作っといたくせに、戦闘には何も使えなかった。杖もよく使えなかった。」


「師匠……。」


そうだ,師匠は悔やんでるんだ。今回呪いにかかってしまったことを……。


「みんな、そんな俺にもついてきてくれるか?」


「「「勿論です!」」」


「本当にありがとうな、みんな。」



「それじゃあ、修行をしよう、今度は絶対足手纏いにはならない!」


そうして白斗達は修行を始めたのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ここは日に照らされた高い高原でのこと。


そこにいたのは血まみれの第68司教フール・エイドラス伯爵だった。


「くそ……この我が負けるなんて……そんなことが起こっていいものか!……戻ってやるさ、我の場所へ。」


「それができればだがな、フール司教。」


そこにひとりの男が立っていた。


「闇蟲!?何故こんなところに!」


「蚊ですよ。早く覚えて欲しいものです。」


闇蟲No.10 蚊、本名、第96司教ヘラマーズ・シリアス役人


「俺は下の癖に特別扱いされるお前が嫌いなんだ。覚えなくても当然だろう。」


「殺される奴の名前くらい覚えておいた方がいいと思うが?」


「何だ?お前に俺が殺せると?笑わせるな。」


「なら,やってみよう。【魔司能力・運動力量操作】」


蚊は近くに落ちていた石をフールに投げた。


「そんなもの……。」


だがその石はフールを貫通した。


「何…だと……?」


「俺の二つ目の魔司能力は【血液操作】、この力にかかればお前から溢れる血を抜き出すことなど可能。【血液操作】」


フールから大量の血が溢れ出た。


「流石悪栄教、生命力は高いですね。」


「…舐め……るな……【魔司能力・災害操作】」


だがその能力は発動しなかった。


「何?何故発動しない?」


「俺の最後の魔司能力、【契約破棄】、相手の契約を切るだけの能力、だがこれは悪栄教司教に対しては有効、これを使えば,王であろうとも一方的に殺せる。」


そして蚊は大きな手裏剣を取り出した。


「二度も作戦に失敗した自分を恨むんだな。」


手裏剣がフールを貫き,フールは今度こそ死んだのだった。


「依頼完了。蜈蚣と変えるか。」



            第一章・魔法使い篇・完

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