第37話 木島取締役


 遠藤専務らが退出した専務室で

 「大場さん、準備出来ていますか」

 「はい、いつでも」

 「ではお願いします」

 そう言って、木島取締役は部屋を後にした。大場秘書に手抜かりはない。遠藤専務はパソコン音痴、俺も毎回苦労させられる、何せパソコン画面で説明すると、その都度拡大鏡を取り出す。

 で、プロジェクターで説明しようとすると、いちいち面倒くさい、と。兎に角俺に分かるように説明しろ、数字とか表はどうでも良い。上手くいっているのか、いないのか、答えはイエスかノー、だ。

 仕方がない、遠藤専務の年齢はパソコンに見放された世代。ましてや、ここ10数年のパソコンを含むネット社会は、時代の遺物となった遠藤専務の頭では理解不能だ。

 俺も仕方なく遠藤専務に従っているが、出来れば離れたい。しかし、創業者から、あれは馬鹿だが、良いところもある、助けてやってくれと頼まれた。


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