第31話 遠藤専務、大野警務部長、泉業務課長の視察


 「咲ちゃん、準備出来ているかな」と遠藤専務が。シングルマザーの咲に何かと気遣ってくれる。出張したときは、これ、お嬢ちゃんに、と子供が喜びそうなものを買ってくる。

 部下を怒鳴りつけることもあるが、概して女性には優しい。寿退職した秘書には、少なからぬお祝い金を渡していた。


 「はい、準備は出来ています、大野警務部長と泉業務課長に連絡をしました」

 間も無く、専務室に入ってきた二人とソファに腰掛け、K市の総合ターミナル物流センター警備隊視察について、細部打合せをした。


 今回、中央道高井戸インターチェンジ近くに、運輸会社主要15社で運用する総合ターミナル物流センターが開始されることとなった。

 大同警備はK市の総合ターミナル物流センターの警備は運よく受注出来たが、今回はそう上手くはいかないだろう。何せ規模が違う、K市の総合ターミナル物流センターの倍、敷地内にはショッピングセンター初め、管理センタービル、銀行、診療所、宿泊施設、物流倉庫20棟、遊戯場等、ありとあらゆる施設が、まるで街そのものだ。

 その警備を一手に引き受けるとなれば、年間の警備料金は軽く10億を超す。今回は大手2社も黙ってはいない、K市では敗北を喫したが、関東圏であれば、大手の面目に掛けても取りにくる。

 契約先は、各社から提出される、警備計画書、警備実施要領、配置人員、それに基づく警備料金の見積書を提出させ、詳細に吟味するだろう。

 そして受注となれば、テレビは一斉にその警備会社に取材を申し込む、となればその宣伝効果は想像を絶することは間違いない。

 

 遠藤専務は小声で、あの方との連絡は取れている、最後の打ち合わせになる、と、大野警務部長と泉業務課長に目配せした。木島取締役には、バルザックに情報を送るよう指示してある。

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