大学生になって、スマートフォンの画面を見る時間が増えた

ヘイ

遠距離恋愛

 高校生の頃、初めて買ってもらったスマホの画面を見る時間はそこまで多くなかった。

 

「ねえ、今日どこ行く?」

 

「お昼一緒に食べよ」

 

「進路決まった?」

 

「大学どうする?」

 

「明日、テストだね。一緒に勉強しよ?」

 

「ねぇ〜! これどうやって解くのぉ!」

 

「流石、私の彼氏は天才だ!」

 

「合格おめでと! 私はもう合格してたの分かったし、祝勝会でもしよ?」

 

 充実した毎日を過ごしていた。

 スマートフォンの画面を見なくても、僕には自慢の彼女がいて、毎日面白おかしく愉快な日々を送っていたのだ。

 彼女は笑顔を浮かべていて、僕も彼女の笑顔を見て元気をもらって、もっと頑張ろうって思えていた。

 

 

 大学生になってスマホの画面を見ることが増えた。

 学校の宿題、娯楽、食べ物の注文とか。

 その最たるものには彼女との連絡があった。

 

『いつ会えるかな?』

 

『こんなご時世だし、中々会うのって難しいよね?』

 

『そっちはどう? 相変わらず?』

 

『こっちも大変だよ(´Д` )』

 

 届く通知にいい加減、声を聞きたくなって僕は電話をかけることにした。ビデオ通話をオンにすると映るのは彼女の顔。

 響いたのは女性にしては少しばかり低い声。僕はその声が好きだった。

 

「えー、すっぴん恥ずかしいんだけど」

 

 高校時代いくらでも見てたし、それでも君は綺麗だと思うよ。

 彼女の後ろには綺麗な星が散りばめられた夜の空が広がっている。

 

「スマホって便利だね。便利な世の中になったよね。昔の人ってもっと大変だったんだろうね」

 

 彼女が言っているのは中世ほどの頃合いの話だろう。それはそうだ。

 世の中、技術は発展しているしこうやって遠くにいるのに声を聞けて、顔を見れて。僕はこの時代に生まれて来れたことに感謝を覚えている。

 

「ねえ、大学の講義ってどんな感じ?」

 

 どんな感じもこんな感じも。

 中々、大変だよ。

 と、一言。

 

「そうだよね。レポートの提出とか気がつかなくて、『出せなかったー!』って私、滅茶苦茶焦ったもん」

 

 君ならよくありそうだ。

 夏休みの宿題だって僕が手伝ってやってたんだし。

 

「そのおかげで何個か単位落としちゃったんだよね……」

 

 それはご愁傷様。

 僕が失笑しながら返すと、彼女は膨れっ面で僕はどうなのかと聞いてくる。

 安心して欲しい。

 僕もそれで一個やらかしてる。

 お互い様だね。

 

「お母さんにも会えないし、ちょっと寂しい……」

 

 僕は?

 

「あ、勿論、寂しいよ!?」

 

 冗談だよ。

 別に今、話してるし、そこまで寂しさは感じてないんだよ。

 

「はぁ〜、遠距離恋愛って大変だね」

 

 今の時期、普通の恋愛も大変だと思うけど。

 

「だってデートもできないんだよ?」

 

 このご時世にデートなんて、中々出来ないよ。

 

「そうだ、会えるようになったらどっか遊びに行こうよ、泊まりがけで!」

 

 それもいいかも。

 僕が賛成の意を示すと、彼女笑顔を浮かべて「うん」と答えて笑う。

 そういえば。

 

「プレゼント、届いた?」

 

 僕が確認すると、彼女は満面の笑みを浮かべる。

 

「バッチリ! 私の好きなパンダのキーホルダーと、腕時計でしょ?」

 

 しっかり届いてたみたいだ。

 

 大学生になってスマホの画面を見ることが増えた。彼女の顔を見る時間はそれ程、変わってないかもしれない。

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大学生になって、スマートフォンの画面を見る時間が増えた ヘイ @Hei767

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