ultimus monologia
雨空 凪
眼上の快晴
昼休み。窓際の席。一人きり。
教室のなかを休み時間にはしゃぐクラスメイトの声たちが支配している。
特に席から動く予定もない私は、そっと引き出しからノートを取り出した。
何てこともない。いつも通りだ。
つまらないけど。
意味もないけど。
何か書くネタを探すため教室を見渡す。
結局見つからなくて、ため息をつきつつ自分の机に視線を戻した。
机はまぶしかった。
カーテンを引くのがなんとなく嫌いなためにまぶしかった。
他に見るところもない。
そんな気持ちで窓から差し込む光につられて上を見ると、あんなに授業中に見ていたのにも関わらず見つけることのなかった赤や黄色に色づく木の葉があった。
紅葉の季節になったのだなと何か物思いに更ける。
ノートが光に照らされまぶしく光る。
こんなんじゃまともに書けないではないか
と怒りながらも私はカーテンを引かない。
知らず知らずとノートに記す白いシャープペンが濃い影を作り出し輝いて見えた。
秋じゃなくて夏みたいだ。
でもつい最近まで秋雨が降っていたのだから秋で間違えないのだろう。
私は秋雨のことについて、
葉が色づく前に告げる神からの手紙と書いていた。
後になって読むと、その時はぴったりと思ったのであろうがなんとも言えないものである。
だが、
秋雨が告げた紅葉の予兆は、
台風一過の快晴と共に見事に私の前に姿を表した。
それがなんとも憎らしくて、
それでいて綺麗だった。
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