残り物料理をお土産に


 水無月です。

 せっせと殿下にお夜食などを差し入れている雪乃さん、そして殿下からは感謝のお手紙が届き、そしてお夜食に雪乃さんの返書がついてくる……

 そこには、袋にはいった殿下の繕い物がやり取りされているようです。

 ほんとうに、殿下の下着なんか入っているのですが、雪乃さん、こればっかりは嬉々として繕い物をしています。


 女子力MAXですから、半端なくうまいのです。

 『ダーニング』など完璧にマスターしていますし、『かけつぎ』もプロの職人以上です。


 殿下にとっては、五歳下の雪乃さんですが、何となく年上のように感じているようで、近頃は甘えるようになっているというか……

 いろいろと他愛ない相談などしているようです。


 必ず日曜の昼には来て、『帝室聖女御用邸』の女性達とランチをしている殿下です。

 この間なんて、皆に花束なんて持ってきたようです。

 何でも毎月、ポケットマネーでくれるとおっしゃるのですね。

 ものすごく好感度大ですね。


「お高いでしょうに、大丈夫なのですか♪」

「構わない、このごろ、皆と一緒にいると安らぐのでな♪」


 さっそく花瓶に、皆に持ってきてくれた花を活けている雪乃さん。

 ここでも女子力MAXを発揮、華道どころか、フラワーデザインも完璧ですからね。


 皆さん、嬉しそうなのですよ。

 あきらかに殿下に好意を抱いているようですよ♪


 不思議なのですが、前世なら愛する方が複数の女に好かれる、そして一緒に抱かれる……いわゆる一夫多妻になれば、嫉妬で狂いそうになるかもしれないのに、良かったと感じるのですよ……


 やはり、女性が多く生まれ、この世界がとても長く成立している以上、この婚姻制度がベストなのでしょうね……

 一部売買婚ではありますが、奴隷制でないだけましでしょう……

 

 奴隷市場なんて存在しませんしね……


「このごろ、雪乃さんの差し入れが楽しみで仕方ないよ♪」

「そうですか♪」

「もう私は餌付けされているようだが、それもよいと思える♪」


「酷いお言葉ですね♪」

「ほめているつもりなのだが?」


「ところで今日は何を食べさせてくれるのかな?」

「今日はカレーなのです、お嫌いなら、別の物に替えましょうか?」


「カレーにしてほしい♪好きなのだ♪」

 いわゆるカレーライスですね。

 でも殿下に差し上げるというので、気合が入っている雪乃さん、ビーフカレーにトッピングとして、ハンバーグやソーセージ、海老フライとかも用意してあります。

 付け合わせとして、福神漬けに、ゆで卵、らっきょなども……

 勿論、野菜サラダはついています。


「殿下はお野菜がお嫌いでしょうが、お身体の為ですから、食べてください!」

 ドアップで迫っている雪乃さんでした。


「雪乃様♪トッピングに海老フライにしていいですか♪」

「いいわよ、小百合さん、海老フライ、好きね」

「はい!」


 小百合さん、海老フライカレーで食べる気満々です。


 殿下が、

「小百合さんは、料理は出来るのかい?」

 と聞いていますが、

「あまり上手ではありません!お母さまに毎日叱られています、でもこの間、チョコビスケットケーキはほめていただきました♪」

「ほう、ケーキはうまく作れるのか、それは一度食べてみたいな♪」

「では来週、作ってみます♪」


「楽しみにしている、料理上手になって、雪乃さんを困らせてやれ」

「はい!」

 返事だけは一級品ですが、空約束が小百合さんですからね。


「では、いただこう♪」

 相変わらず、殿下のこの言葉を皆待っているのです。

 やはり殿下は、ここの女の旦那様の扱いなのです。


 殿下のトッピングはハンバーグでした。


「美味しいな♪今度は私も海老フライにしてみようか♪」

 殿下はこの後、ソーセージも、つまり三皿もお食べになったのです。


「時々、夜食の差し入れに軽食が付いてくるのだが、屋敷の者どもが欲しそうにするのだよ」

「お屋敷の方は何人おられるのですか?」

「三十人ほどだが?」

「多分カレールーは後七皿ぶんほど残っておりますので、これを利用して、お土産にキーマカレーなんて作りましょうか?」


「三十人分、出来るのか?」

「挽肉をたくさん入れ、ルーが足りなければ、カレースパイスで調整いたしますので、大丈夫です♪」


「そうか……お願いする……」

「出来ましたら、ご飯はご用意をお願いしたいのですが……」

「分かった、それと取りに来させる」


「では、今から作りますので少々お待ちくださいね♪」


 あっというまに、雪乃さん、作り上げました。

 その間に、殿下自ら『東宮御所』に電話をかけ、キーマカレーの件と、白ご飯の用意を伝えていました。

 お昼は皆さん、済ませておられるようでしたが、早めの夕食としていただくそうです。

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