イエローブースター

綾沢 深乃

「第0章 遠い夕焼けの下で」

「第0章 遠い夕焼けの下で」(1)

(1)




 夕日に染まる空の下、丘の上にある小さな公園で何かを探していた。


 何を探していたかは思い出せない。


 今よりも背の低い自分が熱心に下を向いて探していた事。


 運動靴に茶色の土が付き、鼻に雑草の匂いが入って来た事。


 そういった不透明な風景だけが頭に浮かぶ。




 ただ、自分は一人ではなく一緒に探してくれていた人がいた。




 誰だったのかは思い出せない。


 記憶にあるのは、柔らかな女性の声。


 二人で長時間熱心に探して、夕焼けが夜になりかけた頃、やっとそれを見つけた自分にその人が、あるおまじないを教えてくれた。




 そのおまじないの名前はそう——、確か。


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