第74話 ナゾのバニーさんあらわる!?

「あ、アプリル!? その格好は──」

「レニーさんっ 説明は後です!」

「先手必勝! 捉えよっ 【四旋風】よつつむじかぜ!!」」


 ギュルルルっ!!


「ぐわぁぁぁっ!?」


 ほくの放った風魔法のつむじ風は、ニセモノの四肢に絡みつき、拘束した!

 ──はず、だったんだけど……


「ぐぅっ こうなれば──」

『汝、拘束すること禁ずる』


 フッ──


 ニセルシアママのおくちからその【言葉】が発せられたとたん、

 風の拘束魔法 【四旋風】よつつむじかぜが、一瞬で霧散した!?


「な、なん……だって」

「ふふっ どうやら今日はここまでのようだな……」

「ではさらばだっ 仔猫ちゃんたち♪」

「ま、まてっ!」


 ガシャーン!


 窓をやぶって、娼館の外に逃げ出すニセルシアママ。

 もちろん逃がす気なんかないぼくは、もう一度魔法を発動して──


「捉えよっ 【四旋風】よつつむじかぜ!!」」


 だけど……


「あれ!? 魔法が、発動しない!?」

「あ、アプリル……これはいったい──」

「レニーさんっ まずはクリスくんと合流して、アイツを追います!」

「あ、あぁ……わかった!」


 ぼくたちは破られた窓から娼館の外に出たんだけど……

 まだそう遅くない時間の歓楽街のこと、通りには人がそれなりにいて、

 それがさっきの窓を破る音に、集まってきちゃった!?


(くっ 【万物真理ステータス】っ さっきのニセモノをマーク!)


 パッ!


 ぼくのアタマのナカにレーダーがあらわれて、走って逃げるのがわかる。

 これならひとごみに紛れても、必ず見つけだせる!


「あっ アプリルさんっ いま、ルシアママが飛び出してきて──」

「クリスくんっ アイツはやっぱりニセモノでした! 追います!!」

「あ、はいっ」

「アプリルっ クリスっ あたしも行くよ!」

「レニーさん……じゃあお願いします!」

「アプリルさんっ 緊急事態ですっ ここは手をつないで──」

「ですね……レニーさんっ 失礼します!」

「な、なにをする気──わぁぁっ!?


 ぼくはアプリルさんと手をつなぐと、後ろからレニーさんに抱きついた。

 そしてふわりと舞い上がり……

 レーダーに表示される光点目指して飛びはじめる!


「っ──きゃぁぁぁっ!?」


 そんなレニーさんの、女の子っぽい悲鳴を聞きながら──


 ◇◆◆◇


「いたっ あそこ!」


 人混みから抜け出したニセモノは、街外れにむかって走っていた。

 所詮は見た目だけのニセモノみたいで、ルシアママみたいに飛べないみたいだ。


「今から下におりて、アイツを捕らえます!」

「レニーさんとクリスくんは、防壁で周囲の人と建物を守ってください!」

「わかりました!」

「あ、ああ……わかったよ」


 そしてニセモノの前にぼくが降り立つと……


「逃しません! このニセモノっ 覚悟してください!」

「くっ!?」

「捉えよっ 【四旋風】よつつむじかぜ!!」」


 だけど、やっぱり拘束魔法は発動しなくて──


「くっ……なら、痛めつけて動けなくするまでです!」

「切り裂けっ【烈風斬れっぷうざん】!!」


 ヒュババッ


「ぐぅ!?」

 5本の風刃がニセモノを切り裂く!

 けど……


(なっ!? あの風刃なら人族のカラダなんて……

(一瞬でバラバラになっても、おかしくない威力なのに!?)


 なのに、ニセモノは切り傷こそ作っても、五体満足のまま。

 そして憎々しげにぼくをにらむと……


『汝、切り裂くこと禁ずる』


 そういって……腰の剣を抜いて、襲いかかってくる!

 もちろん迎撃しようとするぼくだけど──


「切り裂けっ【烈風斬れっぷうざん】!!」


 また……魔法が発動しなかった!?


「ま、またぁ!?」

「死ねぇぇぇ!」

「くっ 守れっ【風防壁】」


 ガキンっ!


 その剣を、風防壁でギリギリ受け止めるぼく。

 だけど──


『汝、防ぐこと禁ずる』


 フッ──


「な、なんだってぇ!?」


 今度は風防壁が消失して、ニセモノの剣がまた、ぼくに襲いかかる!

 その時……


 ヒュパっ


 一陣の風が吹いて、ニセモノの腕を切り裂いた!


「ぐぅっ!?」

(風刃!? でもアプリルさんじゃない…いったい誰が!?)


 そして聞こえてくるその【声】は──


「愛ある限り戦いましょう……この命、燃え尽きるまで!!」

「麗人仮面!【カニンヒェン】!」

「な、なんだと!?」


 【カニンヒェン】は、その名のとおり顔は仮面に隠されていて、

 姫カットの黒髪ロングの頭部には──


(ウサギさんのお耳がついてる!?)


 そのおおきなおっぱいは、小さなビキニアーマーで包まれて……

 蝶ネクタイと飾り襟、燕尾服っぽいおっぱい丸出しの上着をはおり、

 その脚は網タイツに包まれていた。


「エルフの麗人【ルシア】の名を騙り、魔力を集めるその悪辣な手口!」

「たとえこの街の【ルシア推し】の人々が許しても……」

「このカニンヒェンが許しはせん! 喰らえっ!!」


 ギュオォォっ!!


 逆巻く竜巻が、ニセモノのカラダを取り囲む!?

 そしてその竜巻は……周囲の砂埃を巻き込んで、凶悪な風刃に変化した!?


(なっ!? ぼくの【塵旋風じんせんぷう】より速くて複雑!?)


 その風刃の回転は、縦・横・斜めと縦横無尽!?

 さらに目で追いきれないほどのスピードで、ニセモノの身体を切り裂いた!?


「ぐあぁぁぁっ!?」


 風刃、徐々に赤い色が混じってゆく……

 このまま切り刻まれる──ぼくらがそう思ったその瞬間!


 カッ!!


 ニセモノのカラダから、まばゆい光が放たれた!

 その眩しさに、ぼくたちが思わず目を覆うと──


 ゴガァァァっ!!


「なっ!?」

「ま、魔物!?」


 巨大なライオンのカラダに鷲のような羽!?

 そしてその顔は、美しい女性の姿をしていて──


「【万物真理ステータス】!?」


 パッ!

-------------------------------------

【スピンクス】

 出典:万物真理事典『ステペディア(stapedia)』


 ライオンの身体に、美しい人族の女性の顔と乳房のある胸、

 その背中には鷲の翼、そして尻尾は蛇という異形の魔物。


 高い知性を持ち、その美しい声には強力な魔力が秘められていると言われ、

 聞く者に抗えぬ服従と死をもたらすという。


 その翼により高く舞い上がり、そこから繰り出されるの鋭い鉤爪による攻撃は、

 あらゆるものを切り裂くと言われている。

-------------------------------------


「ま、また空を飛んで魔法を使う魔物っ」

「っていうかあのニセモノ、悪霊じゃなくてコイツが化けてたの!?」


 というかこの魔物、すっごい美人のお顔でおっぱいが丸出し!?

 けど……その他のパーツのせいか、ぜんぜん色っぽさを感じない~


(でもこの魔物、相当に頭がいいってことだよね?)

(ルシアママの姿としぐさをマネて、魔力を集めちゃうんだから)


 と、その直後──


『汝、切り裂くこと禁ずる』


 フッ──


「なにっ!?」


 ナゾのウサミミ仮面の風刃が、一気に霧散した!?


「ま、まただ……コイツ!?」

「あっ アプリルさんっ そいつ……【人頭の獅子】は魔法を封じるんですっ」

「えっ!?」

「その【禁止魔法】が放たれたらっ 戦闘が終わるまで、封じられた魔法は──」

「な、なにその反則ワザ!?」


 ということは……ぼくやあのウサミミ仮面はもう、風刃で攻撃できない!?

 だけど──


「両断せよっ【御名方みなかた】!」

「焼き尽くせっ 【御神火ごじんか】!!」


 ズパッ! ボヒュっ!!


 ゴガァァァっ!!


「アルタムさんっ アマーリエさん!!」

「遅くなりました!」

「アルタムさんっ 一気にケリをつけますわよ!」


 アルタムさんのウォーターカッターが、スピンクスのカラダを切り裂き……

 アマーリエさんの炎が、さらにそのカラダを焼き尽くす!!


『汝、切り裂くこと禁ずる』

『汝、燃やすこと禁ずる』


 フッ──


「なっ!?」

「なん……ですって!?」


 まただ……また【禁止魔法】で魔法を打ち消された!?

 そのうえ──


『我、傷つくこと禁ずる』


「んなっ!?」


 スピンクスのその言葉で……カラダ中の傷がみるみる癒やされてゆく……


「こ、こんなの……どうやって倒したら……」


 アルタムさんのそんなひとことが、ぼくたちの絶望を深くする……

 もう打つ手なし、そう諦めかけたそのとき──


「あんたたちっ 諦めるんじゃないよ!」

「れ、レニーさん」

「あたしらが諦めたら……そこでおしまいなんだ!」

「だから最後まで気を抜くんじゃないよ!?」

「れ、レニーさん!?」

「な、なんだい……って、ドコを見て──」


 ぱぁぁぁっ


 レニーさんの股間に、光り輝き──

 変身ヒモパンが現れた!?


「な、なんだいこりゃぁぁ!?」


 そしてそのカラダが、虹色の光に包まれると、そこには──


「雷の精霊! 雷の元素を司る、衝撃の翠の稲妻! エルフィー・トール参上!」

「あたしのいかづちで……ヤキ入れてやるよっ」


 きゅぴーん☆


(うん……ホントはそんな気、してたんだよね)


 アルタムさん、アマーリエさんとくれば……ねぇ?

 利用するみたいで悪いけど、このさいなりふりかまっていられない!

 でも、意外だったのは……


(アルタムさんもアマーリエさんもレニーさんもみんな──)

(【乙女】だったんだ……)


 うん……このことはナイショにしておこうそうしよう。


「撃ち抜け!【電光石火】!!」


 レニーさんのカラダにまとう雷光が、一気に射出される!

 そしてその名に相応しい瞬速で、スピンクスの頭部に落雷した!?


 ズガーン!?


「す、スゴい!?」

「ちっ でもまだ浅いね……」


 スピンクスは落雷して、黒く焼け焦げていた。

 けれどまだ致命傷には遠く、ギギギとカラダを軋ませながらこっちを向いて──

 いけないっ また【禁止魔法】が来る!?


「アルタムさんっ 【鉄砲水】を!」

「え? でも……魔法は禁止されて──」

「いいから撃ってくださいっ!!」

「は、はいっ 喰らいなさいっ【鉄砲水】!!」


 ブシャァァァっ!!


 極太の水流が一気に吹き出し、スピンクスの【禁止魔法】を阻止した!


「えっ!? なんで……さっき禁止されたのに!?」

「きっと【切り裂くこと】ではないからですわ」

「あぁっ なるほど!?」


 そしてこの隙に──


「レニーさんっ 今のうちにもう一発!」

「今度は最大出力でお願いします!!」

「あぁっ 任しときな!」


 ふたたびレニーさんのカラダを雷光がまとう。

 そしてその電気をたおやかな手付きで集めてゆくと──


「打ち砕けっ! 建御雷たけみかづち!!」


 まばゆい雷光で、ぼくらの目がくらんだ。

 その直後、【鉄砲水】でびしょ濡れのスピンクスに落ちた轟雷は──


 ズガァァァン!!


 一瞬で、ヤツの身体を焼き尽くした!!


「今だよっ エルフィーシルフ!!」

「はいっ」

「からめ取れ!【志那都風しなつのかぜ】!!」


 その風は身動きの取れないスピンクスを一気に絡め取る。

 そしてみるみるうちに小さく丸められてゆき──


 コロン……


「【スピンクス】っ 封印しました♪」


 きゅぴーん☆


「ふふ……やるじゃないか、姫巫女様♪」

「レニーさん♡」


 そんなぼくを、うしろから優しく抱きしめてくれるレニーさん。

 おっぱいは控えめだけど……とってもやわらかくて──♡

 そんなとき……


「ふふ……よくやった、エルフィーチームの諸君」

「いずれまた 相見ることも あるだろう……アデュー♪」

「あ……」


 そういって、ふわりと【飛んで】去ってゆくウサミミ仮面……


「風精霊魔法の使い手、【カニンヒェン】……」

「いったい誰なんだろうなー(棒)」

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