第75話 ぼくは……ルシアママのおっぱいには詳しいんだ!

「もうっ まだ街でのおしごと、おわらないの!?」


 レイナちゃんが【おこ】な感じでぷりぷりしてる。

 それは例の【悪霊】のせいで、ずっとお留守番してもらってるから。


「ええ……まだもうしばらくかかりそうな~」

「だったら? 少しは帰ってきなさいよねっ」

「ま、まぁ? ルシアママもいてくれるし? さびしくなんかないけど?」


 さびしいんですね? わかります♡


「ははっ♪ そう責めてやるな、レイナ」

「クリスやアプリルも頑張っているのだ」

「そ、それはわかってるけどぉ」


 レイナちゃんはルシアママの大ファンだから、すぐすなおになっちゃう。

 けど? 同じくおるすばんのはずのルシアママ……

 なのになんだか、とってもゴキゲンですね?


「あー、それにね? ナゾの【ウサミミ仮面】ってヒトが、助けてくれてね?」

「う、ウサミミ仮面じゃないだろう!? アレは【カニンヒェン】──」

「へー、ルシアさま……なんで知ってるんですかぁ?」

「そ、それはその……あ、アルタムに聞いたのだ!」

「へぇ……アルタムさんに、ねぇ?」


 まぁ? アルタムさんたち【四人の乙女たち】は、

 この村とケストレルの街の間にある山の中で、精霊魔法の特訓をしてるから?

 そこでルシアママと会うこともあるんだけどね?


(あの装備……揃えたのはアルタムさんですね?そうですね?)


 アルタムさんもルシアママの大ファンだからなぁ

 頼み込まれてつい? いうことを聞いちゃうんだと思うんだよねー


「でも……あのヒトだれなんでしょうねー」

「エルフでもないのに? 風精霊魔法でお空飛んじゃってましたしー」

「げ、元素魔法かもしれないだろう?」

「現にステラは、風魔法で浮遊していたし──」

「それはステラさまが、【英雄級】の達人だったからだと思いますが?」

「そ、そうなのか?」

「というか……ステラさまの他に知ってるんですか? 元素魔法で飛べるひと」

「う……」


 なんだかお顔にだらだら汗をかいちゃってるルシアママ。

 まぁ、このへんにしといてあげよっかな。


(やっぱり助けてくれたのは……うれしかったし♪)


 まぁ? じつはアイナママも知ってるんだけどね~

 変装までして街に来たのには呆れてたけど?

 やっぱりぼくたちが心配だから、そのキモチはわかるみたい。


(どっちにしても、あんな変装したって……ぼくはひと目でわかっちゃった♪)


 ぼくは……ルシアママのおっぱいには詳しいんだ!

 あんなステキなおっぱいを、ぼくが見まちがえるワケがないんだ!!

 ふう♡


「それに……いろいろあってレニーさんたちも協力してくれてるから」

「私もこうしておうちに一時帰宅、できるようになったんです♪」

「へぇ~ あのレニーさんが」

「あ、こんどまた、おうちに連れてきなさいよっ? レニーさんっ」

「ええ、この件が済んだらぜひ♪」

「約束よ? えへへ♪」

(レイナちゃん、レニーさんのファンでもあるからね♪)


 って、それはさておき……

 とりあえず、あの【6体の魔物】のうち──


 【大鋏の悪魔】カルキノス。

 【金色こんじきの大獅子】ネメアンライオン。

 【人頭の獅子】スピンクス。


 この3体は、ぶじに封印することができたんだ。

 それは半分……折返し地点でもある。

 それに姫巫女──

 【エルフィー・シルフ】の従者である【四人の乙女たち】も……


 【エルフィー・ウンディーネ】のアルタムさん。

 【エルフィー・サラマンダー】のアマーリエさん。

 【エルフィー・トール】のレニーさん。


 この3人が集まったんだ♪

 3人とも【英雄級】の魔法を使えるから、すっごく頼りになる!

 だけど……


(気になるのは、最後のひとり……なんだよねぇ)


 アプリルさんによれば、従者として覚醒するのは……

 【クリス】を想い、慕ってくれるひと。

 そうなると──


(アイナママとルシアママは……【乙女しょじょ】じゃないからちがう)

(ソロ冒険者のクラウさんは、ぼくとは【知り合い】レベルだし?)

(そうすると……エルフのミラさんとマハさんのどっちか、かなぁ)

(ふたりともぼくのこと、御姫様おひいさまって呼んでるし?)


 あと、まさかまさかだけどぉ──


「な、なによぉ? わたしのお顔になにかついてるの?」

「え? あー、なんでもないんですぅ♪」

「レイナちゃん、今日もカワイイなぁって♡」

「ちょ!? もぉ……ばか♡」

(とってもかわいい!?)


 まさか、最後のひとりがレイナちゃんだなんてコト……

 まだ【一人前】の歳にもなってないんだし?

 さすがに……ないよねぇ?


 ◇◆◆◇


「え?【タフクの塔】が入場禁止に?」

「ええ……そうなんです」


 それは夜、【エルフィーチーム】のみんなで会って……

 お互いに報告しあっていたときのこと。


「アマーリエさん、それはどういった理由なのですか?」

「はい、アイナさん……実はあの塔の魔物が最近【強くなった】との事で……」

「強くなった?」

「全体的に魔物が増え、今まで居なかった【上位種】まで現れたそうです」

「それじゃ……」

「ええ……もはや【初心者】向けとは言えず、【中級者】から【一人前】の手前」

「そのクラスの冒険者たちが、こぞって向かう様になりまして……」

「あー」


 いわゆる【中級者】クラスの冒険者の【祭り】になっちゃったんですね?


「その結果、初心者は締め出され、中級者たちは大きな戦果を挙げましたが……」

「その分、死亡者もずいぶん増えてしまって……」

「まぁ……」


 【タフクの塔】は入場を管理してるから……

 その【死亡者数】も、冒険者ギルドは把握してるってこと、かぁ。


「それ故に、まずはその魔物が強くなった原因を調査することを優先し……」

「それが判明するまでは、入場を規制することになりました」

「なるほど……」


 タフクの塔は初心者向けだけど……街から近くて、中には宿屋まである。

 そこを成長のきっかけとするために、

 いままで中級者をめざす冒険者たちが、たくさん集まってた。


(だから冒険者ギルドとしても、けっこうな【痛手】なのかも)

(一種の【産業資源】って、前にアマーリエさんもいってたし?)


 そしてアマーリエさんが、いいづらそうにぼくらを見て──


「そこで冒険者ギルドはクリスくん達のパーティーに……」

「タフクの塔の調査依頼を検討しています」

「え? ぼくたちに、ですか?」

「はい……ありていに言えば、ルシア様とアイナさん……」

「このお二人は、当ギルドの最高戦力です」

「ええ、それは自覚しています……ですが」


 今は【悪霊】関連の調査が最優先!

 アイナママのお顔がそういってる。

 けど……


「あっ あの……アイナさん?」

「なんでしょう? アプリルさん」

「どうでしょう、このさい……私たち全員でタフクの塔を調査するのは」

「わたしたち全員で……ですか?」

「はい、いまは街に【悪霊】のけはいもなく、このところ……毎日からぶりです」

「ええ……そうですね」

「それにタフクの塔は街からも近く、あるいみ街の一部みたいなものですし」

「ですからこのさい、みんなで調査したらどうかって」

「……ええ、確かに、一理ありますね」

「では!?」

「ええ……明日から全員で、タフクの塔の調査をしましょう」

「あ、ありがとうございますっ アイナさんっ」


 アマーリエさん、すっごくうれしそう♪

 やっぱり冒険者のみんなが心配なんだなぁ


「ですが、ルシアを同行させることは……やはり出来ません」

「そんなっ!?」

「ええ……ですから──」


 ◇◆◆◇


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「はっはっはっ♪ 私は【カニンヒェン】だ、よろしく頼む」

「よ、よろしくお願いします?」


 と、いうわけで?

 ルシアママにかわって、ウサミミ仮面さんが仲間になりました?

 ちなみにニコニコしてるアルタムさん以外は、みんななにかいいたげだけど?

 そこは空気を読んで、だれもなにもいわないけどね~


「とはいえ……私を含め全員で7名か、ちと多いな」

「ええ、ダンジョン攻略は5人以下がセオリーですから」

「では2チームに分けるとするか」

「そうですね」


 そんなわけで~

 ルシアママ──じゃない、カニンヒェンチームには、レニー、アルタム。

 アイナママチームは、アプリル(ぼく)、クリス(アプリル)、アマーリエ。

 それぞれ神官をひとりづつおいたチーム構成です。


「では我らは空から屋上に赴き、上層から下層を目指す」

「わかりました、ではわたし達は下層から上層へ……ですね」

「ああ、では中層でいちど落ち合おう」

「ええ、その際に情報交換……ですね」


 お空を飛んで、いきなりてっぺんに行っちゃうのは、ちょっと反則っぽいけど~

 ここは効率優先だし?

 そもそも飛んでいける人がいないだけで、禁止されてるワケじゃないからね~


 ◇◆◆◇


「襲いかかれ! 羊角風ようかくふう!」


 ヒュパパパっ


「キュキキー!?」


 5体の【ミラージュモス】が風刃に切り刻まれ、いっぺんにバラバラになる。

 文字どおり、ヒツジさんのツノのような丸まった風刃が弧を描き、

 魔物を追尾して切り刻む魔法です♪

 【烈風斬れっぷうざん】に比べて威力はだいぶおちるけど……

 自動で魔物を追いかけてくれるから、とってもべんり♪


「まぁ……さすがですわ、姫巫女様ぁ♡」

「ええ、見事でしたよ? アプリルさん♪」

「えへへ♪ ありがとうございますっ」


 もともと【初代姫巫女】の記憶というか、知識があるから?

 それもあってここ最近、すっごく風精霊魔法のスキルが上がったんだ♪


「それにしても……予想以上の魔物の数ですね」

「ええ、以前クリスと来たときに比べても、かなり増えていますね」

「え? あー、そうだね、アイナママ」


 ぼくのカラダのアプリルさんが慌てて話を合わせるけど……

 アプリルさん自身、ダンジョン攻略ははじめてだから、すっごくはりきってる♪


「それにさっきの【ミラージュモス】の中に……」

「上位種の【パラライズモス】が混じっていましたわ」

「今までこの塔では、遭遇例がなかったのですが……」

「やはり全体的に魔物が強化されていますね……魔素が増えたのでしょうか?」


 アイナママがそういうと、アプリルさんが首をかしげた。


「ええと、アイナママ? 【魔素】ってなぁに?」

「魔素とは……魔物や魔族の【活力の源】とされる魔法物質ですよ、クリス」

「活力の、みなもと?」

「かつて【邪神】が、魔族大陸に満たしたとされる元素で……」

「魔族は魔素の濃い状態なら、食事を必要としないそうです」

「そうなの!?」

「ええ、その魔素が結晶化したのが、魔物の体内にある【魔石】です」

「故に、魔物や魔族は魔石を抜かれると、死んでしまうのですよ」

「そ、そうだったんだ……」


 そう……なので、勇者時代に攻略した【強いダンジョン】や、

 魔王の本拠地の【魔族大陸】は、魔素がとても濃かった。

 だから強い魔物がたくさんいたし、すごく苦労させられたっけ……


「そもそもわたしたち神官や魔法使いが魔法を発動させるには……」

「アプリルさん? なにが必要ですか」

「あ、はい……まずは【魔力】ですよね? それと……【マナ】」

「正解です♪ 魔力──すなわち【MP】マジックポイントは、魔法に対する燃料の様なもの」

「そして【マナ】は、この大気の中に多く含まれる元素で……」

「燃えさかる炎──つまり魔力に対する、空気の様なものです」


 正確には……空気じゃなくて【酸素】だけどね~

 ちなみにマナは、人族大陸と魔族大陸のどっちにも満ちてるけど……

 異世界である日本には、マナはあるのかなぁ?


「そして魔族や魔物は、魔素を体内に取り込んで活力を得……」

「それを魔力として変換することができるのです」

「そんな!? じゃあ──」

「ええ、魔素の満ちたダンジョンや魔族大陸なら、魔力切れを起こしません」


 そうなんだよ~

 おかげで前世の魔族大陸じゃ、メッチャ苦労したんだよ~

 そんなことを思い出して、思わずお顔をしかめちゃうぼく。

 だけど──


「ち、違いますっ そうじゃなくて……」

「……どうしました? クリス」

「だ、だったらもし……この【魔素】の多いこの塔の中に……」

「あの【6体の魔物】が置かれていたとしたら──」

「なっ!?」

「そ、それは……」


 まずいまずいまずいっ!!

 もし、何かしらの手段で【悪霊】が、魔素を増やすことができたなら?

 そうだったら……魔物が魔力を吸収して復活しちゃう!?


「はっ!? まさか【悪霊】が今まで街でやってた魔力集めは……」

「陽動……その可能性が出てきましたね」

「そ、そんな!?」


 けどおかげでぼくたちは、ほぼ街のなかに張り付かされていたわけで……

 ──そのとき!


 ゴガァァァァ!?


「い、今の音は!?」


 それは……今まで倒してきた【6体の魔物】と同じくらいに……

 強大な魔物が発する咆哮だったんだ。

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