第45話 ミヤビさまと、いっしょにお風呂♡

『……きこえますか……異世界の──じゃなかった』

「その直接脳内に語りかけるその声は……ミヤビさま!?」

『あっ はい……ミヤビですぅ』


 セリフを噛んじゃったミヤビさま。

 でもぼくはそこにはツっこまずに その名前を呼んだんだ。


『うぅ……その容赦ない責め♡ さすがはクリスきゅん♡ はぁはぁ♡』

「あいかわらずなんですね……ミヤビさま」

「でも、ずいぶんひさしぶりというか……」

『ええ……実に39話ぶりの登場です……』

『読者がわたくしのことを忘れていないか……心配でドキドキ♡』

「メタなこといわないでぇ!?」

「そしてミヤビさま、あいかわらずその恰好なんですね……」


 ミヤビ様は【露出】を司る神さまで、そのいでたちは──


『ちょっ!? わたくしっ さすがに【露出】は司っていません!?』

「……ほんとうに?」

「ほ、本当ですぅ?」

「なんで疑問形なんですか!?」

『だ、だってぇ というか……【露出】は……』

「【露出】は?」

『趣味?』

「やっぱり露出シュミなんですねそうなんですね!?」

「わ、わたくしとて……趣味のひとつくらいありますぅ」

「でもそれを、おしごとに反映っ させちゃってるじゃないですかっ!?」

「……てへ☆」


 そんなふうに、ぺろっと舌を出すミヤビさま。

 かわいい♡

 とはいえ……


「あー、もぉいいです」

『あら……いい、とは?』

「うぅ、ミヤビさまとお逢いできないあいだ……」

「ビキニアーマーのことを知りました」

『ふふ、それはなにより♡』

「で! あれこれ文句をいおうかと思ってたんですけど……」

『それが……もういい、と?』

「はい、ミヤビさまのそのお姿を見ていたら……」

「なんというか、ビキニ姿がおとなしく見えてきて」

『むぅ……そう、ですか……』

「ちょっ!? やめてくださいよぉ!」

「その『なら、もうちょっときわどくしてもよかったかも?』って!?」

『な、なぜわたくしの考えが……!?』

「そんなのっ そのお顔でまるわかりだからですぅ!?」


 というか……あいかわらずミヤビさまとお話してると進まない。

 ともあれ、ミヤビさまの特徴をまとめると……


・けっこう高位の神さま。

・すごい美人で、ぼくの知るかぎりいちばんおっぱいがおおきい。

・加護は【芸能上達】【武芸守護】とか。

・さらに十数年前、ビキニアーマーの加護を授けてくれた。

・ほぼ全裸で、羽衣で乳首と股間しか隠していない。

・やっぱり露出が趣味でした。 ←New!


 こんなかんじ?


『そ、そんな簡潔に、140文字以内でまとめなくても……』

「お話がすすみませんので」

『せちがらいですぅ』


 なんだかしおれてしまったミヤビさま。

 でもこうでもしないと、ぜんぜんお話が進まないし?


「それに……ミヤビさま?」

『なんでしょう?』

「ミヤビさまって……なんでこう、いつも立ったままで動かないんですか?」

「それに目の前にいるんだから、脳内に直接じゃなくてもいいのでは?」

「それから『……』っていうの、つけてるときとそうでないときが──」

『ぎくっ』

「……ミヤビさま?」

『それはその……演出?』

「そーゆーの、ぼくにはいりませんから、ふつうにお話しましょうよぉ?」

『で、でもぉ 神としての威厳が~』

「現実ではちゃんと信仰しますから……ね?」

『……ほんとうに?』

「ぼ、ぼくだって……ほんとうはミヤビさまに、とっても感謝してますから」

「そりゃぁ……ビキニにはビックリしたけど?」

「なんだかんだで、みんな幸せになってますし? ──むぎゅっ」

「クリスきゅん♡」


 そういうと、ミヤビさまはぼくを抱きしめて……

 そのおっぱいにぼくは……


(あぁ、いやされ……るぅ♡)


 とてもあたたかい……キモチになれたんだ♡


 ◇◆◆◇


 カポーン


「って思ってたら……」

「はふぅ♡ いかがですか? わたくし自慢の……露天の湯は♡」

「くっ くやしいっ でも……すっごい開放感♡ びくんびくん♡」

「んふふ♡ そうでしょうとも♡」


 ぼくはいま……なぜか露天風呂にはいっています。

 そしてその露天風呂は、なぜか天高く浮かび上がっていて……

 周囲は360度の大パノラマ。

 まるでヒマラヤの山々を思わせる、荘厳な雪山に囲まれて、

 ミヤビさまとふたりで、お湯につかっているのです。


「で、でもなんでぼく……」

「ミヤビさまに後ろから抱っこ、されてるんですか?」

「ここのお湯はわたくしの神通力で浮かべてあり……」

「いわゆる湯船の底がないのです」

「と、いうことは……?」

「はい♡ 落ちればそのまま湯を突き抜けて、奈落の底へ──」

「怖っ!?」

「ですから、しっかりと抱きとめておかないと♡」


 なら、底をつくってくれればいいのに……

 しかも今のミヤビさま、正真正銘のすっぽんぽん。

 髪はアップにしてて…うなじがすごく色っぽいかんじ。

 そしてぼくも、すっぽんぽんだけど。


「そ、それはいんですが……ミヤビさま?」

「はい♡」

「もみもみしないでください」

「あら……なにを?」

「それはぼくのおいなりさんです」

「はっ つい無意識に!? クリスきゅん……恐ろしいコっ!?」

「そういいながら止めないんですね……」

「もろちん──じゃなかった、もちろん♡」

「ぜったいわざとだ!?」


 お話のしかたが普通になったのはいいけれど……

 あいかわらず、まるでお話がすすまない。


「ではミヤビさま? お聞きしたいことが」

「はい♡」

「ええと……まず、ビキニアーマーなんですが……」

「あのカタチ、もう少しおとなしめのデザインにできなかったんですか?」

「とはいえ……クリスきゅんも見たのでしょう?」

「あの装束が、広く民に受け入れられているのを」

「……はい」


 なんだかんだで、若い女の人はみんなビキニを楽しんでた。

 そしてなにより死亡率がすごく減ったし……

 女性の冒険者がすごく増えてたんだ。


「それに、喜んでいるのは女性ばかりではありません」

「男の人も……ですか?」

「その証拠に、この十年の人族の出生率は──」

「うぅっ!? そういうナマナマしい数字はけっこうですぅ」


 きっと……いっぱい赤ちゃんが生まれたんだろうなぁ。

 それはもちろん、ビキニのおかげ?

 【産めよ増やせよ】は天の神さまたちの教義のひとつ。

 人族の繁栄のためにも、それは正しい……んだよね?


「それに、あなたの見た女性たちは……輝いていませんでしたか?」

「はい……すっごく」


 みんな表情が明るくて……キラキラしてた。

 前世でぼくが魔王討伐をしていたころの、切迫した表情とはぜんぜんちがう。

 じぶんたち、ひとりひとりが魔物や魔族に対抗できる手段を得て……

 女の人たちはたくましく、それでいてキレイに輝いてみえた。


「そして、なにより女は【見られて美しく】なるもの♡」

「潜在的な露出願望を持った女子は、思いのほか多いものなのです」

「そして特に、あなたの知る【冒険者ぎるど】の受付の長などは高い素質が──」

「やめたげてよお!?」


 プライバシーの侵害だよぉ!?

 というかア○ーリエさんって……どきどき!


「どちらにせよ、わたくしたち【神】ができること」

「それは信仰を得て、その見返りに些細な【加護】というきっかけを与える──」

「その程度のこと……」

「どちらにせよ、それを自ら選び、実行したのは人族たち」

「その自らの行いを、悔いてはいけません」

「あ……」


 そういえば……ルシアママやアイナママが、いまぼくと暮らしているのも、

 その【きっかけ】をミヤビさまが与えてくれたから……

 そう思うと、やっぱりミヤビさまには感謝しないとなぁ。

 だけど……


「せめて良いことをいう時くらい、もみもみするの、やめてくださいよぉ」

「はっ また無意識に!? クリスきゅん……恐ろしいコっ!?」

「それはさっきやりましたよぉ!?」

「もみもみ♡」


 うぅ……それに、ちょうどミヤビさまのおっぱいが……

 ぼくのあたまをはさむ感じで~


(なんだか、やわらかいゆりかごに……ゆられているようで……あふぅ♡)


 ぼくは身も心もトロけちゃいそうなのを、必死でがまんする!


「え、ええと……あと、ぼくの勇者スキルなんですが……」

「………………(ふいっ)」

「ミヤビさま? やっぱり……ミヤビさまのミス──」

「き、記憶を取り戻してしまったことで……その」

「わたくしにも想定外というか……そのぉ」

「やっぱりミスなんですね?」

「………………はい」


 あっさりと認めちゃうミヤビさま。

 けど……


(ぼくは……この勇者のチカラをどうしたいんだろう?)

(いっそ消してもらう? それとも……)

「いちおうお聞きしますが……このチカラ、消すことなんかは?」

「その勇者の力は、神々が人族に与えた【加護】の中でもかなり強力なもの」

「ですよねー」

「故に、いちど神々の力でそれを消してしまうと」

「次に本当に必要な時に、使えなくなる可能性が……」

「あー、つぎの魔王討伐ですね?」


 勇者のころアイナママに聞いたけど、200年周期で魔王が生まれるんだって。

 だからそのつど、人族は勇者を召喚するんだけど……


「さすがにぼくも200年は生きないだろうし?」

「そしたらこのチカラは……」

「はい……また次世代の召喚勇者へと受け継がれてゆくのです」

「なるほどー」


 そういえば……日本にいる頃、何かで見た地方の【バス路線】のおはなし。

 年に1日、1本だけ走るバスの路線があるんだって。

 そもそも人が乗らなくなっちゃったから、だんだん数が減ったんだけど……

 じゃあ、なんで廃止にしないのかっていうと……


(いちど廃止にしちゃうと、また認可を取るのがすごくたいへんなんだって)


 だから廃線にしないで、最低限の本数を走らせて維持してるんだとか。

 なんというか……それに似てる感じ?


「はい……神々の天界も、そういうところはわりとお役所仕事で……」

「やっぱりそうだった!?」

「って……もまないでぇ!?」

「もみもみ♡」


 なんて……欲望に忠実なミヤビさま!?


「ですから力を消す、というよりも……あなたの記憶の一部を封印して──」

「あー、【忘れる】ってことですか?」

「そうなりますね」

「というか……あのチカラ、ぼくがつかっちゃってもいいんでしょうか?」

「いまさらですけど~」

「それは構いません、そもそもこの力はあなたに授けられた力」

「天に歯向かう様なことさえしなければ、問題はありまません♪」

「さすがに天の神さまにケンカは売りませんよぉ」


 とはいえ、使っていいということは……


「じゃあ、今の中途半端な【MP】マジックポイントと、パラメーターを、前のと同じに──」

「それはダメです♪」

「神々が与えるのは、あくまで【加護】のみ」

「おのおのの成長は、自身で行うべきなのです」

「ですよねー」

「そして忠告しておきます……」

「この力は、決して人に話してはいけません」

「話そうとすると【強制力】が働いて──」

「もう遅いですよぉ!?」


 おかげでぼくは、それを話そうとしたアイナママに、

 ぼくの恥ずかしいシュミをしゃべっちゃうコトになって──


「もぉぉ!? あの【下ネタ・カミングアウト改ざん】!」

「ぜったいミヤビさまのシュミですよね!?」

「おかげでぼく……すっごく恥ずかしかったんですからぁ!?」

「ええと……」


 するとミヤビ様は……困ったようにくちびるにひとさし指を当てて──


「それは……禁則事項です♡」

「かわいい!?」

「って、そんなかわいいポーズなんかで、ごまかされませんからねっ ぼくっ」


 そんなぼくが【おこ】になってると……


「もう、クリスきゅんったら……」

「大丈夫ですか? おっぱい、吸いますか?」

「………………はい」

「では、どうぞ♡」


 きっとここは…ミヤビさまが創ったぼくの夢のなか。

 だから遠慮しないで、ぼくはミヤビさまのおっぱいに──


「うふふ、クリスきゅん♡」


 ミヤビさまに、あたまをなでなでされながら……

 幸せなキモチで、お顔をうずめたのでした♡

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