スマホより、わたしを見てよ!

卯野ましろ

スマホより、わたしを見てよ!

「ああー、もうっ! またダメだ~」


 今、わたしの側にいる人はスマホとにらめっこしている。この状況、かれこれ一時間は続いている。


「このステージ、マジで難し過ぎる! これはもう鬼だよ、鬼っ! 何でこういう嫌らしい仕掛けを考えるのかなぁ!」


 ああ、昨日も……というか最近そういうことを言って怒っている。

 そこまでムカつくのに、まだ続けるのね。やれやれ。変だよ。いつもいつも困らされるゲームとか、もうやめちゃえば良いのに。

 ゲームよりも、わたしの方が楽しいのに。

 それにしても独り言ばかり。

 お喋りの相手は、すぐ側にいるのに……。


「はー、負けるもんか! 今日こそ絶対に、このステージをクリアしてやるっ! まだまだやるぞー」


 えぇ~……。

 ちょっと、まだやるの?

 もう諦めちゃえば良いのにぃ~。

 ……まぁ、わたしはこの人のそういうところが大好きだけどねぇ。


「……よしっ!」


 はぁー、気合い入ってますねぇ。

 ……。




 ……ん。

 ふぁ~あ。

 あぁー、寝ちゃったか。

 どれどれゲームの調子は……。


「ぃよっ、しゃあああああ~! やっとクリアできたっ!」


 お、とうとう終わりましたか。

 だったら、そろそろわたしと……。


「あ、電話。誰からだろ?」


 ……は?

 わたしがポカーンとしていることを知らず、その人は耳にスマホを当てる。


「はい、もしもしー」


 まさかの展開。

 新しい邪魔者が乱入してきた。

 くうぅ。

 まだまだ、わたしは振り向いてくれるのを待っているのか。




「アッハハハハハハハ……! 何だ、その話~! ウケるわー」


 わたしはもう五分くらいは、そのバカ笑いを聞いている。

 ……ふんっ!

 その友達のトークよりも、わたしの方が絶対おもしろいのに……。飽きさせるもんか。わたし、ずっとずっと笑顔にさせる自信、あるもんね。

 はーあ。

 早くこっちに戻ってきてよー。


「うん、分かった~。じゃ、またね」


 ……よし。やっと終わった「あー、そうだそうだ! 思い出したっ!」


 ……へ?

 まだ続くの?


「あのさ……」


 っ……。




「うん、またね。じゃあ今度こそ、バイバーイ!」


 っ!


「……ふー……」

「ンニャアアアアアアアアッ!」

「えっ! 何っ?」


 よくも、よくもっ……!


「ニャアアアアアアアアッ!」


 許さニャい!

 わたしたちの時間を邪魔するニャンて!

 わたしの方がスマホよりも楽しいのに!

 このーこのー!


「コラコラ。これはおもちゃじゃないのよー」

「ニャッ」


 わたしは復讐の途中ニャのに、とニャりにいる彼女にひょいっと持ち上げられてしまった。


「でも、私が悪かったのよね。こんなにかわいいのに、ずっとほったらかしにしちゃって……ごめんねっ!」


 やっと彼女は、わたしをギュッとしてくれた。

 良かった……。

 わたしはスマホにニャんか、負けてニャかったのね!


「あーんっ! 本当にかわいいっ! 超かわいい!」


 モフモフ。


「♪」


 モフモフモフ。


「♪♪♪」


 あー幸せ。

 ゴロゴロゴロ。


「はぁー、大好きっ!」


 それは、わたしもおんニャじ。


「ニャン!」


 あニャたとわたしの関係は、これからも変わらニャい。

 ずっとずっとニャかよしニャのよ!

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