あのマスクを着けたい

ミケ ユーリ

第1話

 机の上にマスクがある。


 たちばなさんのマスクだ。橘さんのマスクが机の上に取り残されている。


 僕は見ていた。2年3組の窓際の1番後ろ、自分の机に座り、仲良しのわたりさんとお弁当を食べている橘さんを。


 橘さんは、1年生の時は食堂派だったのだが、2年になってからはお弁当を作るようになったようだ。


 良い! とてもいい!


 橘さんは重度の近眼で、メガネを掛けている。素朴で簡素な細い黒縁の地味なメガネを。


 だが、橘さん本人は金髪ショートカットでカラフルに派手なメイクをしているギャルだ!


 僕の大好きなギャルゲーの脇役、千刀せんかたな 一織いおりちゃんにそっくりだ!

 メガネの縁のカーブなんてもう、一織モデルと言っていい程に完全再現されている。


 橘さんは、入学当初は地味なメガネそのままの黒髪おさげでオドオドしたただの女生徒で、僕の興味を引くことなどなかった。だが、ある日金髪メガネギャル姿を見て驚いた!


 僕の嫁が3次元に現れた!


 まさか、一織ちゃんをリアル嫁に出来るかもしれないなんて!


 そんな一織ちゃんそっくりなギャルがお弁当を作っているなんて、想像しただけで萌える。


 良い! とてもいい!


 ああ、橘さんのマスク……あのマスクを着けたい。

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