第6話 師匠と穴掘り

  次の日の朝、いつも通りに起きたら全身が痛くて起き上がれなかった。


「か、身体が痛い……これは筋肉痛? 何で……?」


 毎日畑の世話をしているし、剣の素振りを始めた時も何ともなかったのに何で一日穴を掘っただけでこんなに痛いんだろう。


 でも今はそれより師匠。軋む身体は無視して部屋を確認してみるもやっぱりいない。

 そういえばご飯ちゃんと食べたのかな。師匠は手ぶらだったけど何処からかシャベルを出していたから食事の用意もちゃんと……している人じゃないな……。


******


 村に行けば師匠は現在進行形で穴を掘っていた。これ絶対休んでいないと思う。


 だって一日でこんな大きな穴は普通掘れない。


「師匠、少し休みませんか。お弁当を持ってきましたよ」

「ん? あれ、もうこんな時間? 流石にちょっと休むか」

「随分大きな穴は出来ましたけどまだ掘るんですか?」

「うーん、俺もどれぐらい掘ればいいか分かんないんだよな。とりあえず掘れるところまで適当に掘ろうとは思ってる。お、肉」


 師匠がお弁当を見て嬉しそうに笑った。

 いつもは野菜も食べてほしくて色々入れているけど、今回だけは特別に肉だけを入れた。

 まあこの人普段から野菜だけを器用に避けて食べないんだけど。


 その後は僕も手伝って、当然というべきかやっぱり夕方には帰されて師匠は帰って来なかった。


******


 師匠はあれから休まずずっと掘り続けている。


「普段寝過ぎなぐらい寝まくっているとはいえそろそろ休まないと倒れますよ」

「だーいじょうぶ。だって俺穴掘り大好きだもん」


 そんな心配はしていない。


 僕も手伝っているとはいえ夕方には帰されるし、村の人達は遠くから見ているだけで手伝ってくれそうにない。

 変に妨害されないだけマシとはいえ少しぐらい手伝ってくれたっていいのに……。


「うーん、まあ後二日ってところだな」

「え?」

「嵐が来るまで後二日。これだけ掘れば大丈夫だろうけど、せっかくだし明日まで掘るか。こんな思いっきり掘れる事なんてそうそうないしな」


 ……この人も村の為というよりただ自分が穴掘りしたいだけみたいだから丁度いいかもしれない。

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