猫の集会
さて。
僕たちの町で開かれる猫たちの集会。三日月の夜に、猫たちがまって開かれる集会。そこでは『獲物』と呼ばれるモノが毎回連れてこられる。
そして、連れて来られた獲物は化け猫裁判長の下に判決を下される。
「これは善か」
「これは悪か」
良いか悪いかを裁かれる。
良ければそのまま帰してもらえる。僕らは幸にもこちらだった。
じゃあ、悪かったら?
「こいつは悪いひとだ」
猫たちがそう思ってしまったら?
野良猫に餌を与え続けたのは悪いことだとは思う。でも、いつの時代だってそんな人はいたはずだ。猫が餌を食べている姿はかわいい。かわいいからもっと食べさせたくなる。
それに、ほら、やっぱりさ。お腹が空いているんだと思うと可哀想な気持ちになるんだよね。こんな小さい猫が、って。自分と同じように生きているのに、って。
それは同情でしかないんだけど。
本当に猫のことを思うんだったら、最期まで。死ぬまで家で世話をして、家族として暮らすのが一番の選択だと思うよ。
そうできない人だって多いんだろうけど、それを間違いとは言えないんだよね。飼えない家は多いから。
お婆さんのこともね。可哀想だと思うんだ。
別に悪いことをしてたわけじゃないと思う部分もあるよ。人として弱い生き物を守ってあげたいって思うこと、僕にもあるからさ。
ほら。これも同情でしかないよね。
そのお婆さんがしてきた野良猫に餌を与えるっていう行為は、多分猫たちにとっては『いいこと』だったんだと思う。
「こいつは良いひとだ」
そう思われていたんだと思う。
その時までは。
お婆さんには最近癌が見つかったらしい。それも、末期癌。もう治療も何もできないくらい酷い状態。
すごく痛くて辛いらしいけど、お婆さんは病院にいるのを断った。誰もがこう思ったんだろうね。家族のいる家で生涯を終えたいんだろうな、って。
でも、実際は違った。
家には野良猫が餌を求めにやって来る。ネコサマにごはんをあげなければ。お婆さんはそう思ったんだ。
もうお婆さんはこの世にいないから、本当のところどう思っていたかなんて誰にもわからない。もしかしたら、お婆さんの心のどこかで家族に会いたいって想いもあったのかもしれない。
可哀想なお婆さん。
そして、あの夜がやってきてしまった。
『猫ノ集会』が行われた、お婆さんの最期の夜が。
『にゃ~お』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます