FMF:異界越境犯罪捜査班
Fafs F. Sashimi
シーズン1
プロローグ:俺、特別捜査官辞めます
雨が降っていた。
空は一面が灰色で、重々しい空気が辺りに充満している。数十人が喪服で集っていた。彼らはやりきれない表情で目の前に横たわる連邦国旗の掛かった箱に視線を向けていた。もちろんそれはただの箱ではない。棺だ。
「捧げ銃!」
礼装に身を包んだ軍人達が
「構え、撃て!」
乾いた銃声が雨音に吸い込まれていく。何度も、何度も。そして、弔銃が終わると虚しさに襲われたのか泣き出す者が出てきた。
「君のせいではないよ、ヤエヤマ君」
「大佐……」
大佐と呼ばれた初老の男は残念そうな表情で運び出される棺を見送っていた。国家公安警察の特別捜査官ヤエヤマ・ラーシアル・ルークの隣に来たのは、彼がこの大雨の中で傘も差さずに立ち尽くしていたからであった。
「俺があんな無謀な作戦を実行しなければ、こいつらは死ななかったかもしれない」
「そう思うか」
ヤエヤマは大佐の問いに無言で頷く。彼は遺族たちの視線が痛くて、顔を上げられなかった。
「大佐、俺、今日限りで特別捜査官を辞めさせてもらいます」
「ほう、所轄に戻るということかね」
「いえ」
彼は警察身分証と銃のホルダーを取り外して、大佐に渡す。大佐は引き止めるでもなく、静かにそれを受け取るしか無かった。
「こういうことです」
ヤエヤマは大佐の傘から出て、どこかへ歩き出した。ずぶ濡れの背中を大佐は見つめることしか出来なかった。
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