第7話 一緒にやろうよ



視点{カリム}




翌日

俺は山小屋に向かった

本格的にハンヴィ―の制作に入るためだ

・・・・・・・・・その前に必要な物を思い出した

それは「ゴム」と「ガソリン」である

この2つ以外のものは鉱山と小屋にあった廃材で何とかなる

だがこの2つは探さなければならない

特にガソリンがなければ走ることもできない


近くに原油が噴出している場所があればいいのだが・・・・・・

ゴミ捨て場所のトンネルを使っている子供たちに話を聞いてみよう

外であちこち遊びまわっている彼らなら何か知っているかもしれない


「え?黒い燃える水が噴き出る場所?」


「そうだ聞いたことない?」


「そんなのあちこちにあるよ、臭くてみんな嫌がって近づかないよ」


「その場所まで案内してくれない?」


「別にいいよ」


その子の話では原油の出る場所は宝の泉ではなく

臭くて厄介な泉として有名なのだという


その子は年上の子だったから

そういう話を教会の先生から聞いたと言っていた

確かに機械技術があまり発展してないこの世界では

あまり需要がないのにも納得ができる

その子の案内で俺はその原油が噴き出る場所を発見した


泉はゴミ捨て場所から10分ほど歩いたところにあった

早速ドロっとした黒い泉に手を入れて魔力を流してみる


するとガソリンの存在を確認した

ガソリンの成分を引っ張り出す

そうすると手には透明な水の塊ができていた。


これがガソリンか?

ガソリン独特な匂いもするし間違いなさそうだ


次にゴムの素材を手に入れることである

「ラテックス」と呼ばれるゴムの原料は植物の木から傷をつけ採取ができると記憶しているが試しに近くにあった樹木に傷をつけてみる

すると白い液体がでてきた

それを手につけ魔力を流し込む


すると高分子物質の存在を感知した

高分子であるということはこれがゴムの原料なのだろう

つまり傷をつけたこの樹木、これがたまたまゴムの木


このラテックスが一番取れる時間帯は朝の5時から7時くらいだから

その時にまた別の樹木を切りつけてラテックスを採取しよう

さて一応これですべての材料が揃い、設計図ができあがった


あと4年でハンヴィ―を作らなければならないが十分に時間があるし

大丈夫だろう

何もトラブルが起こらなければいいのだが・・・・・・・





視点{アリス}





私は昨日12才になった

昼間カリムちゃんはあの山小屋で「はんヴぃ?」を作ってる

あと少しで完成って言っていたけど無事にできたのかな?


教会の先生の授業を受けてフィルちゃんと一緒に遊んで、

3日に一度は深夜にカリムちゃんと一緒にケーキを作る

そんな毎日を送ってきた


カリムちゃんに色々なケーキを教えてもらって

えぇと・・・・

モンブラン、ミルフィーユ、チョコレートケーキとか色々作れるようになった

まだまだクリーム作りに不安はあるけど


フィルちゃんにもとても喜んで食べてもらった。

もっとケーキを作ったりしたいけど頻繁に作るとさすがに教会の人たちに

食料品が減っていることに気づかれちゃうってカリムちゃんに言われた


あと1年で教会を出ないといけないけど私はこのケーキ作りを仕事にして

食べていくことにした

カリムちゃんに今日勇気をもってそれを言う。


元々このケーキのアイデアはカリムちゃんの物なんだから

カリムちゃんの許可なしにケーキ作りでお金を稼ぐことは

盗みと同じだと思ったからだ


私は深呼吸をしてカリムちゃんのいる山小屋へ向かった

ゆっくりとドアを開けて中を覗いてみると

カリムちゃんは魔法を使って何か作っているみたい


私は邪魔にならないようにその姿をみていた。

魔法を使っているカリムちゃんはとても真剣なまなざしで

宙に浮いた・・・・・・・液体?を操ってる



ぽぉ・・・・



しばらく経って液体が丸くなったところでカリムちゃんは魔法を解いた


「よしできた」


私の姿が目に入ると


「ん?どうした?」


「あっうん」


「今日はケーキ作りをしない日だよな?」


「うん、そうなんだけど・・・・」


「?」


カリムちゃんが首をかしげる

い、言わなくちゃ

私は深呼吸をし、カリムちゃんの目を見て口を開いた


「私、ケーキ作りで食べていこうと思ってるんだ

でもケーキ作りはカリムちゃんのアイデアだから

勝手に作るのはダメなことだと思ったの

だ・・・・だから・・・・

カリムちゃんのケーキ作りのアイデアを私にください!」


私なりの精一杯の言葉

・・・・・・・・カリムちゃんはどう受け取ったかな?


「うん、いいよ」


「え?」


私はしばらくそこでぼーっとしてしまった


「えっカリムちゃんいいの?」


「ただし条件がある」


「あ、うん」


そうだよねタダで渡すわけないもんね

ど、どんなこと言われるんだろう?


「多分ケーキの配達とか必要になると思うから

俺を配達従業員として雇ってくれないか?」


「え?」


また私はしばらくそこでぼーっとしてしまった


「いや、ハンヴィ―を作ったら冒険者になろうと思ったんだけどな

作っていくうちにこの装甲じゃ魔法攻撃食らったら死ぬなとか考えたら

情けないことに怖くなってな・・・・・・・

それでケーキの配達だったらできるから雇ってほしいんだけどダメか?」


「あ、全然大丈夫だよそんなの!

どんなお願い事されるのかドキドキしてたのに!」


「じゃあ頼めるか?」


「勿論いいよ!一緒にお店を始めよ!」



その後、部屋に戻ってフィルちゃんに報告した。



「やったねアリス、ケーキ屋なんて素敵じゃない!」


「ありがとう、フィルちゃん」


二人しかいない部屋で二人してピョンピョンはねる。


「フィルちゃんはどうするの?」


「私は適当にバイトして暮らしていくわ」


「そうなの?どうせなら私たちと一緒にお店やらない?

カリムちゃんの許可が必要だけど・・・」


「私はとてもうれしいけどアリスはそれでいいの?」


「ん?いいに決まってるよ」


フィルちゃんがいたらお店が明るくなるし、とても嬉しい


「・・・・・ありがとうアリス、

実は少し不安だったのよ、私は一人で生きていけるかどうか

だから・・・う・・・・とても・・・・嬉しいわ」


「どうしたの?泣いてるの?」


「うぅ・・・だって本当にうれし・・・くて・・・・・ありがとう」


「と、とりあえずカリムちゃんに聞いてみよ!ほらかわいい顔が台無しだよ」


私はハンカチでフィルちゃんの涙を拭いた

早速カリムちゃんにフィルちゃんのことを話したら

「ウェイトレスならいいぞ」って言ってくれた


フィルちゃんはカリムちゃんにありがとうって言って

私たちは自分たちの二人部屋に戻ってきた

部屋に戻った瞬間にフィルちゃんは感情を爆発させたかのように

とても喜んでた


私の顔を覗き込んで


「それにしてもアリスは可愛くになったね、昔も可愛かったけど」


「え!?何急に」


「おまけにスタイルもいいし性格もいいし」


「どうしたの?」


「この前男子がヒソヒソ話してるのを聞いたんだけど

アリスっていいよねとか

体がたまんないとか気持ち悪いこと言っていたのよ」


「え?・・・・そうなの?」


「アリス、告白とかされた?」


「うん、一応」


「なんて言われたの?」


「んー確か「好きだ!付き合ってくれ!」とか「ずっと憧れてたんだ!付き合ってくれ!」とか「幸せにする!結婚してくれ!」とか後は・・・・・」


「ちょっちょっ待って!一体何人に告白されたの?」


「えっと・・・・・覚えてない・・・」


「はぁ・・・・・で、どうしたの?もちろん断ったわよね!」


「うん、私あんまり男の子って好きじゃないから」


「え?アリスって男嫌いなの?」


「嫌いか好きかって言ったら嫌いかな」


「どうして?」


「雰囲気というか・・・・・・怖くて」


「でもカリム君とは普通に話せてたじゃない」


「カリムちゃんは初めて会った時からなぜか話せたんだよね

雰囲気とか仕草とかあまり気にならなかったし

でもなんで仲良くなったのか自分でもよくわからないの」


「へぇぇ」


フィルちゃんがニヤニヤしている


「何?フィルちゃん」


「あ、ううんなんでもない」


「?」


「さて明日から忙しくなるわよ」


「そうだね頑張ろう」


「おおー!!」






その翌日

あんな事件が起きるなんて私は夢にも思ってなかった

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