「最後の晩餐」のレギュレーションを定めました。

18°

第1話

あの〜「最後の晩餐なに食べたい?」みたいな会話するときありますよね?

私あの会話嫌いなんですけど、なんで嫌いかというと、、、


 まず「いかにして"最後"に至るのか」が曖昧のまま話が進んでいくところです。

それが隕石による地球滅亡なのか病気や寿命による衰死なのかによってメニューの選択肢変わってくると思うんですよ。


 地球滅亡パターンだったら自分だけがその未来を知っているのか人類全員が知っているかでも変わりますよね。

 自分だけが知ってたら好きなもの食べれるかもしれないけど、みんなが知ってたらパニックになって店は閉まってるわスーパーの食材は消え失せるわで冷蔵庫の残りモンしか食えないなんて結果になりかねません。


 次に「朝餐と昼餐なに食べたん?」ということ。

 この話のタイトルは「最後の"晩餐"」すなわち夜ごはんです。

 普段の食事でも、朝ごはんに焼き鮭と卵焼きを食べたからお昼はラーメンを食べよう!とか、お昼はラーメンだったから夜はトマト鍋にしよう!など次に食べるメニューは直前に食べたメニューが影響すると思います。

 中には「私は毎食ステーキを食べるのがルーティーンだから最後の晩餐もステーキを食べて死ぬわ!」という人もいるかもしれませんが、そんな奴は広がんないからこの話に入ってこないでほしい。

 朝ごはんは百歩譲って考慮しなくてもいいが、せめてお昼ごはんは何食べたか決めておきたいのです。


 とか、いろいろ考えちゃって素直にこの話題楽しめば良いのにキモいですよね。

 なのでこの話題におけるレギュレーションを考えたので読んでいただけたら嬉しいです。



 え〜、では結論から言いますと最後のシチュエーションは【誘拐からの拉致監禁】です。

 まあまあ、焦らずに聞いてください。


 まず、この会話において最後であることは自分だけが知っていることが望ましいと思いました。理由は↑でも述べた通り、全人類が知ってしまうとメニューが限られてしまうからです。


 って言うと「神様が自分だけに『もうすぐ地球終わるよ』って言われる地球滅亡パターンでも良いじゃないか。」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 でもそれだと、神様の発言が本当なのか幻覚幻聴なのかとまず疑うし混乱すると思います。


 例えば


 ある春の昼下がり、突然自らを神と名乗る者が私の目の前に現れた。


「今日の24時、地球が滅亡します。これは全人類であなただけに教えます。では、よい晩餐を。」


 そう言い残すと神様は姿を消した。


「え!?なんなんですか急に!?ちょっ、ちょっと!、、、24時に地球が滅亡する!?ど、どうしよう、、なに食べよう、、いや待て、今のは現実の出来事か?夢では?、、、痛いっ!夢じゃない!ということは現、、、実!?神様が嘘をついているという可能性は?そうだ!こんな重要なこと全人類で私にだけ伝えるなんてどう考えてもおかしい!、、、でも、もし本当なら、、、こうしてはいれない!滅亡が本当だった場合ここで最後の晩餐を謳歌しなければ死んでも死にきれない!よし!会社は午後休を取ろう!家族と友達に今までの感謝を伝えて、いいもん食べに行こう!」


「部長、すみませんが体調が優れないので午後休頂いてもよろしいでしょうか?」


「おぉ、大丈夫か?今月分の納品も終わっているし、お前に頼んだ来週の会議の資料ができているなら構わないぞ。」


「はい、ありがとうございます。」


 会議の資料は3割もできあがっていないが背に腹はかえられない。だって来週の会議は来ないのだから。

 帰り支度を済ませ、エレベーターに乗ると誰かの叫び声が聞こえた。


「ちょっと待ってー!」


 閉まりかけのドアに足を突っ込んできたのは、私がこの会社で1番お世話になっていると言っても過言ではない小野寺先輩だった。


「ふぅ、ありがとう!って、あんた今日午後休だったっけ?」


 小野寺先輩は2つ年上で入社してすぐに仕事でミスしてばっかりの私に沢山アドバイスしてくれて可愛がってくれた恩人のような方です。


「いや、ちょっと体調を崩しまして、、。」


 (先輩には今日で地球が滅亡することを伝えて悔いのない最後を迎えてほしいがなんで説明したらいいか。たとえ言っても信じてくれないだろうし、、、)


「そう、体調管理も仕事のうちだよ。でもしんどい時はちゃんと言いなよ?私がサポートするから。じゃあ、お大事にね。」


「はい、すいません。、、、あのっ、先輩!、、、本当に先輩にはお世話になってばっかで、、その、、本当に感謝しても仕切れないって言うか、、、」


 感謝だけは伝えねばと、気づけばエレベーターが着くまで一方的に語っていた。


「なによ急に気持ち悪い。はやく体調治しなよ?じゃあね!」


 先輩は意外と素っ気なく、大量の資料を抱えてどこかへ行ってしまった。


 同様に家族や友人に別れの儀を済ませた後、兼ねてから行ってみたかった高級料亭へと赴くのだった。

 普段では考えられない程高価なお品書きに鼓動が早くなる。それは値段からくるドキドキなのか死に対するドキドキなのかはわからなかった。


「え〜っと、、松阪牛のヒレステーキ、、あ、ミディアムレアでお願いします、、あと松茸のお吸い物、、伊勢海老のテルミ、、テルミドール、、それと、大トロ10貫ください!!」


 世紀の大奮発に不謹慎にも高揚している自分がいた。


「お客さんすごい頼みっぷりですね!初めて見る顔だし、こんなに頼んで最後の晩餐かなにかですか?」


 大将は半笑いで喋りかけてきた。


「あはは〜、そんな訳ないじないですか〜。」


(あぁ、その通りだ。これが最後の晩餐なのだ。大将には悪いがこんなこと言っても信じてくれないと思うから私だけ楽しませてもらう。人生最後の飯がアンタの料理で良かったよ。ありがとう。)


「、、、いただきます。」


 大将に悟られまいと込み上げる涙を堪えながら松阪牛のステーキを口に運ぶ。


(ん!?アレ!?なんだこれ!?)


 なにかがおかしい。

 続けて松茸のお吸い物、伊勢海老、大トロも一口ずつ食べてみる。


(ど、どういうことだ!?何が起きているんだ!?)


 味がしない。


 あと数時間後に死ぬという恐怖と滅亡しなかった場合の今後の生活費の枯渇という二重の絶望感で味覚がバグっているのだ。

 こんなことなら神の言葉なんて聞かなかったことにして普段通りに過ごせばよかった。


「、、、クソが。」


 大将に聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう言い放ち、神と自分の人生に中指を立てた。


 と、こんな結果になります。ですので、地球滅亡パターンはダメなのです。

 こうならないためにあらかじめ知らされる死ではなく、唐突に訪れる死である必要があるのです。

 ではなぜ【誘拐からの拉致監禁】が良いのか。


 こちらをどうぞ。


 ある春の休日、家族で久しぶりのピクニック。満開に咲いた桜の下での団欒を楽しんでいた。


 娘はあどけない表情でピクニックの醍醐味であるサンドイッチとスペアリブを口いっぱいに頬張っている。


「こら、そんな慌てないでもっとゆっくり食べなさい。」


「だってすっごくおいしいんだもん!」


 まるで天使のような娘を挟んで夫と微笑み合う。


「パパ〜シャボン玉やろ〜」


「おっ、早速メインイベントやるか!」


 この上なく幸せな空間。この時間がずっと続けばいいのに。そんなことを思っていたらうとうとして気づいたらうたた寝していた。


 次に目を覚ました時、私は真っ暗な部屋に一人閉じ込められていた。手足は鎖に繋がれている。どうしてこうなったのか理解が追いつかない。娘と夫は無事なのだろうか。


「やっと目が覚めたか。」


 誰かの声と共に部屋の明かりついた。急な明るさに目を窄めながら恐る恐る辺りを見渡すと目の前に黒い服に身を包んだ人の姿があった。


「ここはどこですか!?娘は!?夫は!?どこですか!?なんなのためにこんなことを!」


「落ち着いて、娘も夫も無事よ。」


 どこか聞き覚えのある声に思考を巡らせる。徐々に目が慣れていき目の前の人物の顔を確認する。


「気分はどう?」


 このハスキーがかった声。そうじゃなければ良いという願いはいとも簡単に打ち砕かれた。


「、、、小野寺先輩!?どうして!?」


「どうして?あんたが気に食わないからよ!いい旦那かわいい娘、ろくに努力もしてこなかったあんたがどうして私が持っていないもの全て手に入れてるのよ!」


「そんな、、信じてたのに、、私達をどうするっていうの?」


 小野寺先輩は不気味な笑みを浮かべてこう言ってきた。


「私はね、幸せな家族を見てるとイライラするの。イライラして壊したくなる。だから、あんたかあんたの夫と娘、どっちか片方には死んでもらうわ。そして苦しみを抱えて生きてもらうわ。家族みんなで天国に行かせるなんてそんな幸せなことさせないわ。どっちが死ぬかはあんたが決めるのよ。娘と夫を死なせて自分は助かるのか。自分が死んで向こうを助けるのか。さぁ、選びなさい。」


 そこには私の知っている小野寺先輩はいなかった。目の前にいるのはただの悪魔。恐怖でどうにかなってしまいそうだ。しかし、答えはすぐに出た。


「、、、私を、私を殺して。」


【※ここで自分を犠牲しないという方はこの先の会話に参加できないのでお帰りください。】


「あんたならそう言うと思ったよ。その勇気ある決断に敬意を評して『最後の晩餐』を選ばせてやろう。なんでも好きなものを言え。」


「、、、〇〇〇〇。〇〇〇〇が食べたい。」


 はい〜、これですよ。

 このシチュエーションなら確実に食べたいものが食べれるし、もしかしたら明日が来るんじゃないかなんていう心配もありません。最後の昼餐はピクニックのサンドイッチとスペアリブのところを替えてもらえれば良いと思います。

 ただ、恐怖で味がしないんじゃないかという問題がありますがその点はご安心ください。


 では物語の続きを観てみましょう。


「〜〜なんでも好きなものを言え。」


「、、、オムライス。夫と娘が作ったオムライスが食べたい。」


 娘が4歳になり最初に覚えた料理はオムライスだった。料理が苦手な私にかわって夫が料理をしているのを見て私もつくる!と一緒になって作ってくれました。ケチャップで「だいすき」と描いてくれました。字は下手くそだったけど味は涙が出るほど美味しかったのを思い出します。


「いいだろう。すぐに作らせる。」


 数分後、小野寺先輩がオムライスを持ってきた。薄く焼いた卵には下手くそな字で「だいすき」と描かれていた。娘の字だ。


「、、、いただきます。」


 一口頬張るとそれは紛れもなく夫と娘が作ったオムライスの味付けだった。あの時と同じ。涙が溢れて止まらない。最後にこれを食べれて、娘にだいすきと言われて嬉しかった。どうか、私の分まで長生きしてね。


 よいしょ〜、このように彼女が最後の晩餐に選んだのは家族の味だったのです。私達もこの状況に陥ったら懐かしの味、家庭のメニューを選ぶのではないでしょうか。そうなってくると小野寺先輩が運んできた料理を疑い味覚と嗅覚は研ぎ澄まされて料理を味わうことができるのです。


 若干物語が胸糞ではありましたが、最後にまとめると。


・最後に至る理由は【誘拐からの拉致監禁】

・ピクニック中(ここで最後の昼餐を選択)に連れ去られて自分以外の家族の犠牲になって最後を迎える。

・このとき犯人から最後の晩餐の施しを受ける。(これがあなたの最後の晩餐)


 です!


 以上を話題「最後の晩餐」のレギュレーションとして提唱したいと思います。


 ここまでこんな駄文を読んでくださった方、本当にありがとうございます。あなたにとってなんの益にもならないとは思いますがほんの暇つぶにでもなれたなら幸いです。


 ちなみに私の最後の晩餐はマックフライドポテトMでいいです。


 すいませんでした。

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