第38話 よりにもよって、あいつらが……
簡単に身支度をととのえてから、リグレを探しに家を出た。
多分、まだそう遠くには行ってないはずだけど、行き先の見当がまったくつかない。
何度も行ったことがある場所って話が聞こえた気はするんだけど――
カリダスさんには
革紐の仕入れとかで
いつもお世話になってますし
――そうだ、ヒューゴさんの店かもしれない。
あそこなら、プレゼントになりそうなものだって売ってるはず。
なら、早く迎えにいってやらないとな。
海沿いの道をヒューゴさんの店に向かって走る。
なんだか、いつもより、呼吸が苦しい気がする。
昨日、久しぶりに酒を飲んだからかな。
……うん、そうに決まってる。
それ以外に、原因なんて思い当たらないんだし。
息を切らしながら走り続け、やっとの思いで店に着いた。
カラン
「すみません! リグレ来てませんか!?」
「うわぁっ!?」
ドアを開けると同時に、店の奥にいたヒューゴさんが跳びはねた。
「なんだ、フォルテ君だったんすか……、ビックリしたー……」
「あ、すみません、ちょっと慌ててたもので……、ところで、リグレ来てませんか?」
「リグレちゃんっすか? 今日は見てないっすけど」
「そうですか……」
ここに来てないとなると、本当にどこに行ったんだ……。
「え? ひょっとして、いなくなっちゃったんすか!?」
「あ、はい。書き置きだけのこして、一人で出かけちゃって……」
「それは、大変っす! それなら……、とうっ!」
かけ声とともに、ヒューゴさんがオオカミに変身した。
「ちょっと待っててください! いま、臭いを探すっす!」
「ありがとうございます!」
……ヒューゴさんの鼻なら、リグレがどこに行ったかも分かるはず。
「ふんふん、えーと……、分かったっす!」
「本当ですか!?」
「はい! 店の前の道を海沿いに、もう少し北にいったあたりにいるみたいっす!」
「もう少し、北?」
ランニングはいつもこのあたりで折り返してるけど……、一体なにがあるんだ?
「そうっす! えーと、ダンジョンがあるあたりっすね!」
「え……、だ、ダンジョン!?」
そんな……、才能があるっていっても、リグレはまだ幼稚園でならう程度の魔術しか知らないんだ。
そんな状態で、ダンジョンに入ったりなんかしたら……。
「そ、そんなに真っ青にならなくても、大丈夫っすよ! この辺のダンジョンは、みんな攻略が終わってますから!」
「あ……、そう、でしたね……」
そうだ、ベルムさんも、前にそんなこと言ってたな。
よかった……、それなら、リグレに万が一のことなんて、ないはずだ……。
「そうそう! 北にあったダンジョンも、危険度が低いっつーことでいろんなパーティーから後回しされてましたが、去年の夏前に攻略されたっす!」
「ああ、そうだったんですか」
「はい! たしか、フォルテ君と同じくらいの子たちのパーティーで……」
「へえ……」
僕と同年代のやつらの、パーティーか。
まあ、養成学校を卒業してすぐにパーティーを結成するやつらも多いからな。
ひょっとしたら、同じ学校の出身者だったりしたのかも――
「えーと、たしか……、そうだ! マルス君っていう子がリーダーのパーティーだったっす!」
――え?
マルスの、パーティー?
ダンジョンの攻略が
不完全なのに完全攻略したと
ギルドに報告したり……
まさか……、ここのダンジョンの攻略も不完全、なんてことはないはず……。
でも……、もしも、そんなことがあったりしたら……。
お前がちゃんと
守ってやらないとな
……そうだ。
僕が、なんとかしないと。
「フォルテ君? 急に、怖い顔して、どうし……」
「お世話になりました! 僕はこれで!」
「わっ!? え、えーと、フォルテ君、どこ行くっすか!?」
背後から、ヒューゴさんの戸惑った声が聞こえる。
でも、振り返ってる場合じゃない。
少しでも早く、リグレのところに行かなくちゃ。
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