第47話:農業
「この農地で麦やカブを作っている者たちでございます」
クサーヴァが俺の命令通り農民たちを集めてくれていた。
俺が商人と話し合っている間に、領都東側にある農地を耕作している農民たちを集めてくれていたのだ。
まあ、もっとも、実際に集めたのは配下の者たちで、クサーヴァも俺と同じように命令しただけなんだけどね。
農民たちを相手に色々と話を聞いた。
実際の農作業でなにが一番大変で辛いのか。
どの作業にどれくらいの日数や時間がかかるのか。
美味しい穀物を収穫する為のコツなども聞かせてもらった。
大賢者に色々調べてもらっていたが、セカンドオピニオンをとることは大切だ。
学校のテストを提出前に見直すか見直さない以上に大切だ。
「そうか、分かった、よく話してくれた。
みなの話を聞いたうえで、領主である私が魔術で農作業を手伝ってやろう。
とは言っても、種まきや雑草取りを手伝う訳ではない。
穀物が早く大きく沢山実るように魔術で手伝ってやる」
「「「「「おおおおお」」」」」
今までから有り余る膨大な魔力と前世の記憶知識に想像力を駆使して、作物を促成栽培していた。
だがそれではあまりにも多くの魔力が必要だった。
だから大賢者に少ない魔力で目的が達成できる魔術を教えてもらったのだ。
お陰で以前と比べて百分の一の魔力で穀物を促成栽培できるのだ。
「よく見ておきなさい」
俺はそう言うと必要もない呪文を唱えて植えられていた穀物を促成栽培した。
俺が無詠唱で魔術を使えることは秘密にしておきたいからな。
この国の農民は基本3種の穀物を栽培している。
1つは領主に税金として納めるための小麦。
残る2つは自分たちが食べるための大麦とライ麦。
大麦が育たないような畑でライ麦を栽培しているのだ。
「「「「「おおおおお」」」」」
「「「「「すごい、すごい、すごい」」」」」
農民たちの眼が恐ろしいほどの早さで成長する穀物にくぎづけになっている。
本来ならとても手間と時間がかかる農業が楽に収穫直前まで育つのだ。
農民たちが驚くのも当然だろう。
こそくな方法かもしれないが、これで俺に対する忠誠心が高まれば最高だ。
父や弟の圧政から救い出した俺の事を慕ってくれていると思いたいが、アーベントロート公爵家を憎んでいる可能性もあるからな。
「では大きく実った穀物を収穫してもらおう。
税金は以前私が決めていた割合で構わない。
これは領地に戻ってもらった時にも言ったが、父や弟が難癖をつけた過去五年分の税金も納めている事にする事を改めて約束する。
だから安心して収穫を始めてくれ」
「「「「「うおおおおお」」」」」
「ありがとうございます、公爵閣下」
「公爵閣下はわたしたちの救いの神です」
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」
「これで子供たちにお腹一杯食べさせてやれます」
よし、よし、よし。
大賢者に計算してもらった通りの結果になっている。
領地にいる間に全ての農地を公平に回らなければいけないな
農民たちもしばらくは収穫作業に忙殺されるだろう。
次の指示はその後だな。
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