第24話:閑話・罠・ミヒャエル視点

 どいつもこいつも無能ばかりだ。

 あれほど大言壮語していた剣士達が全員殺されやがった。

 領地に行っていた奴隷商人達も皆殺しになりやがった。

 しかもこれから領地に奴隷を集めに行くはずだった奴隷商人達が、全員もう引き受けられないと言いだしてきやがった。


「今さら引き受けられないと言っても聞けんな。

 一旦契約したのだ、今更なかった事にいはさせんぞ」


 ふん、まあいい、公爵家の借金先は全部奴隷商人どもに変わったのだ。

 奴隷を集められないのは私のせいではなく奴隷商人どもが無能だからだ。

 これで領民どもを引き渡すことなく借金がなくなるのなら、むしろ好都合だ。


「はい、分かっております、アーベントロート公爵閣下。

 契約書通りにさせていただきます、はい」


 なんだ、この余裕を持った話し方は。

 借金が回収できなくなったのだぞ。

 それなのにうれしそうにしている理由はなんなのだ。


「何を考えておる。

 奴隷が手に入らなければ金が回収できないのだぞ」


「いえ、いえ、そのような事はございませんよ、アーベントロート公爵閣下。

 契約書に書いてある通り、奴隷を集められなければアーベントロート公爵家の領地と屋敷を引き渡していただきます」


「何を申しておるのだお前は!

 そのような事を約束した覚えはないぞ」


「いえ、いえ、ここにこの通り、書かれております。

 アーベントロート公爵閣下にお渡しした控えにも同じことが書かれております。

 王家に提出した原本にも同じことが書かれております。

 今回の契約は王家の指導と後見で行われたもの、なかった事にはできませんぞ」


 だまされたのか、私は王家にだまされたのか。

 王家は最初からアーベントロート公爵家を潰して領地を奪う気だったのか。

 インゲボー王女も加担していたと言うのか。

 私はインゲボー王女やヘルムート国王にいいように騙され踊らされていたのか。


「認めん、絶対に認めんぞ私は。

 殺せ、ここにいる連中を皆殺しにしろ。

 いや、こいつらだけじゃない。

 奴隷商人どもの店も家も襲って皆殺しにしろ」


 家臣のくせに俺様の命令が聞けないのか。

 このままではお前達も全てを失うのだぞ。


「やれ、やらんか、やらなければアーベントロート公爵家が潰れて、お前たちも路頭に迷うことになるのだぞ」


「「「「「はっ」」」」」


「なっ、狂われたか、アーベントロート公爵」


「ふん、俺はいいように使い潰されたりはせんぞ。

 お前達は俺を襲って殺そうとしたんだ。

 奴隷が集められなかったことに腹を立てて、身分差もわきまえずに私を殺そうとしたから返り討ちにしたのだ。

 そしてその無礼の賠償に財産を没収してやる。

 王家が文句を言ってきたら戦争だ、王家に内戦を引き起こす覚悟があるかな。

 ワッハハハハ、アッハッハッハ」

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