第10話:愛

「シルバーマスクさま、ありがとう。

 おおきくなったら、およめさんになってあげるね。

 ちゅっ」


 いや、幼女のむじゃきなお礼とはいえ、これは少々てれるな。

 リヒャルダが浮かべてくれている表情も、しっとしてくれているように感じられてなんだか気持ちがいい。


 ピロロロロ


 愛が11294になりました。

 大賢者スキルをつかわれますか。


 は、なんだこれ。

 幼女がほほにキスしてくれただけで愛がたまるのか。

 それともリヒャルダがしっとしてくれたのがいいのか。

 これは色々と確かめたほうがいいな。


「シルバーマスク様、本当にありがとうございました。

 私たちはこれで行かせていただきます」


 おっと、今は助けた民のことを先に考えないと。


「ああ、気をつけて行くのだぞ。

 旅のあいだは冒険者たちの言うことをよく聞いてな。

 頼みましたよ、冒険者のかたがた」


 チョットだけ冒険者たちに殺気を放っておどかしてこう。

 性格がよくて腕の立つ冒険者たちを選んだけど、出来心で悪い事をしてしまう事もあるからな。


「ま、まかせてくれ。

 そんな殺気を放たなくても、シルバーマスクを敵に回したりはしないよ」


「ああ、その通りだ。

 俺たちだって長く命がけの冒険者をやってきたんだ。

 シルバーマスクの強さはわかっている。

 本能が絶対に逆らうなといっている」


「そう、そう、今もほら、手が震えててどうしようもないよ。

 こんなに恐ろしいと思ったのは、ドラゴンに出会ったときだけだ。

 いや、シルバーマスクの強さはあの時のドラゴン以上だよ」


「おい、おい、またドラゴンにSSS級パーティーが全滅させられた時の話かよ。

 もう聞きあきたぜ」


「じゃかましいわ!

 お前らA級以下が、バカなことをして死なないように教えてやっているんだ。

 いいか、絶対にシルバーマスクには逆らうな。

 いや、シルバーマスクを怒らせるようなことは絶対にやるな。

 地の果てまで追いかけられて殺されるぞ。

 お前らも、民を苦しめたガンビーノたちがどんな殺され方をしたか知っているだろう、同じ死に方をしたいのか!」


 雰囲気が思いっきり悪くなってしまった。

 まあ、でも、助けた民が殺されたり奴隷に売られたりするよりはいい。

 だからチョットだけ念を押しておこう。


「はっはっはっはっ、俺も普段は優しいのだぞ。

 ただ弱い女子供をいじめる奴をみると、神様が罰を与えろと命じられるのだ。

 だからしかたなくやっているのだ。

 お前達が悪い事をしないかぎりなにもしないよ」


 リーダーとなるSSS級やS級の冒険者だけでなく、A級以下の冒険者にも全員軽く殺気を放っておこうか。


「……しない、絶対に悪い事はしない、だからその殺気は止めてください」


 ああ、ああ、情けない奴らだな。

 ほんのチョットの殺気で小便チビっているよ。

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