第8話:暴力・ミヒャエル視点

「なんだと、ガンビーノが殺されただと。

 だれだ、だれがガンビーノを殺したのだ」


「分かりません、城に入りこんだ盗賊に殺されたとの報告です」


「警備の者たちはなにをしていたんだ、役立たずが」


「それが、クサーヴァ騎士団長がやめられてから騎士団が弱くなってしまっていて」


「なんだと、それは俺にたいする嫌味か。

 クサーヴァをやめさせた俺に逆らう気か。

 この、この、この、この、しね、しね、死ね。

 俺に逆らう奴は許さねえ、逆らう奴はころす、しね、しね、しね、死ね」


「おやめください、ミヒャエル様。

 もう許してやってください、これ以上やると本当に死んでしまいます」


「死んでいいんだよ、最初から殺す気で殴っているんだ、殺すんだ。

 俺に意見する奴はころす、俺に逆らう奴は殺す。

 しね、しね、しね、死ね」


 ★★★★★★


「さっさとこの死体をかたずけろ」


「……はい、ミヒャエル様」


「あの、その、よろしいですか、ミヒャエル様」


「なんだ、お前もなにかも文句があるのか」


「いえ、とんでもございません、なにも申し上げる事はありません。

 ただ、その、客がきておりまして……」


「客だぁ、俺様に予約もなしに会いたいとはどこのどいつだ」


「それが、その、商人たちが来ておりまして……」


「はぁ、商人ごときが俺様に会いたいだと。

 そんな無礼者は斬り殺してしまえ」


「それが、王家に出入りしている商人でして。

 色々な所と強くつながっていますので、殺してしまうのはいくらなんでも……」


「はぁ、王家の出入りしているからどうした。

 俺様はインゲボー王女の婚約者だぞ」


「はい、その、ですが、国王陛下や王妃殿下、ザームエル第一王子殿下やルーペルト第二王子殿下に近い者からの紹介状を持っておりまして」


「はぁ、それがどうした。

 近い者が書いた紹介状など気にしてどうする」


「ミヒャエル様、それは国王陛下と王妃殿下がインゲボー王女殿下に恥をかかせないよう気をつかわれたからです。

 王女殿下に婚約者が、王族が出入りを許している商人の借金も返せないモノだと分かっては、王女殿下が大恥をかくことになります。

 こんな事が表にでてしまっては、婚約を辞退するように追い込まれてしまいます」


「ちっ、だったら返してやれ」


「ミヒャエル様、もう王都屋敷にはまったくお金がございません」


「だったら領地から持ってこさせろ」


「もう領地にも全くお金がありません。

 それどころか領民にも領地の商人にも四年分の前借をしております」


「はぁ、だったら五年分の前借をすればいいだろ。

 断るようなら殺して奪ってこいや」


「……ヴェルナー様がいてくださればこのような事になっていなかったのに」


「なんだと、俺様がヴェルナーより劣るというのか?!

 しね、しね、シネ、死ね!」

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