弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ、でも復讐はキッチリとさせてもらう。

克全

プロローグ

第1話:殺害

「はっはっはっはっは、ヒィヒッヒッヒッヒ、死ね、死ね、死ね、ヴェルナー。

 以前からお前の事は気に喰わなかったんだよ」


 トラウゴットがとどめの突きを心臓に突き刺そうとしている。

 背後から斬りつけただけでは安心できずに、確実に殺す気だ。

 親友だと思っていたのに、弟にも婚約者にも父にも裏切られたが、トラウゴットは最後まで信じられると思っていたのに。


「何だその眼は、お前など成りあがるための道具なんだよ。

 それなのに、道具のくせに、ミヒャエルに王女を寝取られ追放されやがって。

 ミヒャエルに言われなければ、誰がついてくるもんかよ」


 くっ、ミヒャエルらしいな、俺を確実に殺すまで安心できなかったのだな。

 背中の出血で眼がくらんできた。

 賢者スキルを使いたくても金も魔力も足らない。


「死ねや」


 ぐっはっ。


「ちぃ、往生際の悪い奴だな、避けてんじゃねえよ。

 あ、クソ、奈落に落ちやがったか」


 腹に剣を喰らっちまった。

 背中の傷もかなり深い。

 このままでは確実に死んでしまうな。

 情けない一生だったな。

 あの時までは、公爵家の跡継ぎとしてそれなりにやりがいがあったんだけどな。

 王女に婚約破棄を言い渡された時の事を想いだしてしまうぜ。


「ヴェルナー・クリューガー・アーベントロート、貴男との婚約は破棄します。

 私は真実の愛に目覚めたのです。

 私の真の恋人はミヒャエルだったのです」


 そう言う婚約者の横には、ニマニマと笑う弟のミヒャエルがいた。

 人の心に入り込むことが得意で、他人の物を横取りするのが大好きなゲスな性格で、心ある家臣からは嫌われていた弟。

 だが人に取り入るのが得意だから、父や母からは俺よりも好かれていたな。


「悪いな、兄貴。

 だが俺の責任じゃないぜ、全部兄貴が悪いんだぜ。

 兄貴はかたすぎるんだよ、ノブレス・オブリージュなんて誰もやりたがらないぜ」


 腹の立つ事を言いやがったが、確かに俺はまじめすぎたよな。

 ミヒャエルの根回しは完璧だった。

 身勝手で金づかいの荒いインゲボー王女は、俺と結婚するのを嫌っていたのだ。

 それは両親も同じで、家の財政を立て直そうと口うるさくしていた俺が目障りだったんだ。


「ヴェルナー、インゲボー王女から婚約破棄されるような恥さらしをアーベントロート公爵家に置いておくわけにはいかん。

 アーベントロート公爵家を追放する。

 だが我が家だけではないぞ、王国からも出て行くんだ。

 ミヒャエルがインゲボー王女と結婚するじゃまをするな」


 情けなかったな。

 家のため両親のためを思って言っていたんだけどな。


「ヴェルナー様、私を連れて行ってください。

 私の忠誠心はヴェルナー様が公爵家を追放されたくらいでは失われません」


 トラウゴットにそう言ってもらえた時には、心からうれしかった。

 涙がをがまんしなければいけないくらい感動したんだけどなぁ。

 全部俺を確実に殺すためのウソだったんだよな。

 哀しすぎるぜ。

 もう意識がなくなりそうだ、これで死んでしまうのだろうな。


「ヴェルナー様、お気を確かに、ヴェルナー様。

 必ず助けて差し上げます、絶対に助けてみせます。

 だから諦めないでください」


 この声は、リヒャルダか。

 なんでこんな所にリヒャルダがいるんだ。

 リヒャルダとフォルカーは母親が重病だという連絡がきたから、アーベントロート公爵領に戻ったはずだぞ。


「飲んでください、回復薬を飲んでください。

 上級の回復薬です、これを飲めば必ず助かります」


 ごめんな、リヒャルダ。

 母親よりも俺を選んで戻ってきてくれたんだよな。

 そう思ったらなにがなんでも生き延びたいと思うんだけど、ダメなんだ。

 情けないけど、もう回復薬を飲む力もないんだよ

 

 ウッグッググググ。


 口移し、口移しで回復薬を飲ませてくれているのか。

 あれほどウブで、男性と口をきくのも嫌がっていたリヒャルダが、俺のために口移しをしてくれているのか。

 死ねない、絶対に死ねない。


 ピロロロロ


 上級スキル習得条件を達成しました。

 賢者スキルが大賢者スキルとなりました。


 はぁああああああ、あんだってぇえ。

 大賢者スキルなんて、伝説のスキルじゃないか。

 賢者スキルだってここ数十年誰も手に入れていないんだぞ。

 俺は賢者スキルを持っていたけど、使う代償に莫大な金や魔力が必要だったから、両親にも賢者スキルがある事を黙っていたんだ。

 あの二人そんな事を教えてら、損得を考えずにさらに借金していただろうからな。

 

「愛しています、ずっと愛していました。

 死なないで、死なないでください、ヴェルナー乳兄様」


 あんだってぇえ、リヒャルダが俺の事を愛してくれていた。

 情けない、情けなさすぎて消えてしまいたい。

 全然気がついていなかった。

 乳母の娘のリヒャルダは、本当の妹のように思っていた。

 これから俺はどんな顔をしてリヒャルダに会えばいいんだ。


「神様、ヴェルナー乳兄様を助けてくださるのならこの命を差し上げます。

 今この場で心臓を貫いてみせます。

 ですから、どうか、どうか、ヴェルナー乳兄様を助けてください」


 まずい、これはまずすぎる。

 リヒャルダならためらうことなく本当に心臓を突いてしまうぞ。

 リヒャルダは並の騎士など片手で勝てるくらい強い戦闘侍女なのだ。

 俺の乳母であるペトロネラは元戦闘侍女頭だったし。

 夫のクサーヴァもアーベントロート公爵家の騎士団長だった。

 乳兄のフォルカーも騎士長だった。

 俺が追放刑になったから解任されてしまったけど……。


「うっ、うううう」


「ヴェルナー乳兄様、ああ、ヴェルナー乳兄様」


 よかった、リヒャルダが自害する前に気がついたフリができた。






★★★★★★


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