第6話 優しさ
彼女の問いかけに
僕は答えられないでいると
「話したくないならいいよ
ごめんね
踏み込まれたくない事だってあるもんね」
そう言って
彼女は僕から目を逸らした
彼女は右手を空の方に出して
雪を掌に載せた
「見て
すぐに溶ける」
それを僕に見せた
一瞬
彼女の明るい笑顔が曇る
僕がもう少し気が利いていたら
話を聞くのだろうけど
それを切り出すことが
難しい
”何かあったの?”
なんて
今までの事も知らない僕から尋ねられても
話す気になるどころか
不信に思うだろう
彼女の方を見ていると
彼女は大きな目からポロリと涙をこぼした
そして
それを隠そうと
上を見て
カーディガンの袖で目を押さえるようにそれを拭いた
だけど
一度
緩んでしまった目元からは
どんどんこぼれてしまう
僕は雪を見ながら
雪しか見ていないふりをしながら
彼女の涙を見ないでいた
そうするくらいしか
こんなに悲しそうな彼女に
優しくする方法が浮かばなかったんだ
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