第12話 自立支援医療という選択肢
「『自立支援制度』?」
その言葉を聞いたのは、3月末の病院だった。
「はい、そうです。鈴村さん通院してもう1年以上になるし、いくら傷病手当をもらっているからって、医療費だって馬鹿にならないと思うんです。だから、興味があるなら受けてみませんか?」
と、病院の事務の人から勧められたのが始まりだった。
僕は、前の会社が属していた健康保険組合から、傷病手当を受け取っている。そのため、本来であれば当面の生活には困らない程の収入は手元にあるはずであった。しかし、うつによるストレスからか、あらゆる物の衝動買いや携帯アプリへの課金欲が止まらず、それらは日に日に自制することが出来なくなっていき、月々の出費はかさばるばかりで、病院の通院費用にも困っていた。
自分でもどうすればいいのか分からず、ストレスの
そんな時に、事務の人から教えられたのが、医療費を公的機関が負担する『自立支援』という制度だった。
「それってどういう制度何ですか?」
僕は興味を持って質問をした。すると事務の人は思いの外、丁寧に答えてくれた。
「簡単に言えば、医療費の負担が減る制度ですね。例えば鈴村さんは今、病院の料金を3割負担で支払っているのが、この制度を利用すると1割負担まで減るんです。それは診察料金だけでなく、お薬の代金にも適用されるんですよ」
「なるほど」
僕は興味深そうに相槌をした。実際、料金が減る制度なんだ、興味を持たない方がおかしい。
「でも、それを利用することでデメリットってあるんじゃないんですか?」
僕は気になり、再び質問をした。
「いえ、デメリットは特には無いんです。ただ、基本的に同じ病院を利用する、と言うのが条件にはなってきますね」
「なるほど、そうでしたか」
「どうします、鈴村さん?受けてみます?」
そう言われた僕の考えは既にまとまっていた。
「そうですね、利用したいです」
「分かりました。それでは準備と説明を再びしますので、待合室で待っていてください」
そうして僕は、自立支援を受けることを決めた。
色々と説明をされたが、要は自立支援を受けるためには市役所での手続きが必要な事、その手続きには病院の診断書が必要でその費用が少し掛かる事、手続きには印鑑やマイナンバー、更には保険証が必要である事などが説明の内容であった。
僕はされた説明をメモし、忘れないようにと手帳に挟んだ。
1週間後、再び病院に来た時、診断書を受け取った。そしてその足で市役所の障害福祉課まで行き、手続きを済ませた。
「決定が下りるまでは3ヶ月程掛かりますので、それまで暫くお待ちください。後日、郵送でご自宅まで届きますので」
「分かりました、ありがとうございます」
そうして僕は、3ヵ月の時を待つことになり、自宅まで帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます