第8話 ウォーキングという一筋の光
「宅配便でーす」
その声に気付き、玄関へと向かった。
「こちらにハンコをお願いします」
言われた通りの場所に捺印し、荷物を受け取る。
「届いた……」
自分の部屋に戻り、箱を開ける。すると、中には1個のヘッドホンが入っていた。
「これで、どうにかなるかな?」
ウぉーキングがしたい。けれども、周りの声や視線が気になって出来そうにない。そんな時に目に入ったのが、このヘッドホンだった。
これがあれば、周りの声が気にならなくて済む。その一縷の望みに託した商品を開封する。
青を基調としたデザインのヘッドホン。これが、僕のこれからの生活に必要不可欠な物になり得るのだ。そう思うと、見ているだけで愛着が湧いて来た。
「……早速、行ってみよう」
僕は支度をすると、靴を履き、ウォーキングをせんと外の世界に出たのだった。
1月の寒々とした空。天気は曇り。
対照的に、僕の気持ちは軽やかだった。
ヘッドホンで音楽を聴いていた。お気に入りのアニメ作品の主題歌が幾つか流れ、情景を浮かべながら歩く。
今日の目標は、町内一周。時間換算すると、大体1時間くらいか。
久し振りの外だ。そして、肌で空気を感じ取っている。
こんなにも、世界は広かったのだと、改めて感じさせられる。
ウォーキングをしている間は、特に何も悪いことは不思議と浮かんでこなかった。そのお陰で、久方振りの外の空気をしっかりと感じ取ることが出来た。
「はぁ、はぁ、はぁ」
歩き始めて、1時間強。目標通り町内を一周し終え、帰宅する。
身体中に汗が滲み出る。慣れない運動で、この半年以上感じられなかった疲労が、手足に重くのしかかった。
「歩くのって結構体力使うんだな……」
自分の体力の減少具合を、肌で感じ取った瞬間だった。
「でも、悪くはないかも」
気分はさほど悪くは無かった。寧ろ、家の中に居る時よりも解放感に満ち溢れ、風や空、道路や景色といったものを直接感じることにより、リフレッシュできた気がした。何処か心地の良い疲労感、とでも言うのだろうか。
それからというもの、僕は毎日、天気のいい日には1時間、ウォーキングをする時間を取ることにした。
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