姉:3月

「……くん……♥」

「ひ……ひぃ……っ……」

 相談役が苦しげに呼んだ名前は……私の名前では無かった……。

「ぐ……ぐぃびぃずあえ……よぐうぇるえぶわっ……うげろっれ……ぎゅれはまへぇ……っ♥」

 相談役の右手には……クッキーらしき箱。

 左手には……そう……恋愛ものの映画やドラマで良く見るような……指輪が入った箱。

 目には涙。鼻と口からは血が流れ……。

 そして……喉には……愛用の万年筆が突き刺さっていた……。

「い…いや……」

 ホワイトデーのその日、出社し、相談役の部屋に入った途端……目に入ったのは、その光景だった。

 は……早く……そ……外に……ドアは……ど……どこ?

「し……しご……と……ひとすじに……いきて……きて……こいを……する……ひまなど……なかった……」

 相談役は……私に近付いて来る。

「で……でも……この……としに……なって……きみに……めぐりあえた……あい……してる……よぉぉぉぉ……けっこんっ…してぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅでででででぇぇぇぇぇっ♥」

 こ……これは……愛の告白なのだろうか?

 でも……断ったら……何が起きる?

 私は……恐怖で……失禁し……足腰に力が入らなくなり……床に座り込み……そして……首を縦に振ってしまった。

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