第5話 監禁中、模索中

 一人残された八宝菜。本格的に静寂が辺りを支配し、己が身じろぎした際の布や鎖が擦れる音や自分の息遣いしか聞こえない。試験中の、ペンを走らせる音のみの空間に似ている。


 そんな中、八宝菜はサヴァイについて考えていた。


(よし、部下にしよう)


 即決だった。


 話を聞くうちに、サヴァイは八宝菜のお気に入りになっていた。


(<使役術>って獣人にも効くのかな~。効くとしたらどうしよ、使うか迷うなぁ)


 話が早い。まだ頼み事すら終えていないのに、もう自分のことに意識が向いている。


(使役しちゃうと完璧に反逆できなくなるんだよな……。あ~、実験はしたいけど裏切りチャンス自分で潰したくねぇ~)


 何故率先して裏切られようとするのか。思考回路が意味不明である。


(んー、どうしよ。とりあえず説得か? んで、実験は別の機会にするか。最悪そこらにいる運営の人間ボコって嬲って心折って使役してみればいいだけだし。ハッ! 殴って部下を追加ゲットできる分、むしろそっちの方が良いまであるのでは?)


 ドクズである。


 その方針で固まったらしく、鼻歌を歌って機嫌が良さそうにしていた。


 このとき、八宝菜は部下が増える喜びですっかり忘れていた。


 自分の悪癖を、そしてサヴァイがその条件にぴったり当てはまっているということを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る