わたしと背後霊
わたしは背後霊と仲良しだった
よくいっしょにプロ野球を観戦したりした
「あいつら一体、何やってるんだ?」
背後霊が隣りで口を開いた
すでに背後じゃねーじゃねーか
でもわたしはそんな細かいことは気にしない
「ちょっと今いいとこだから黙ってて」
そう言って隣りにポップコーンを差し出した
空席を挟んだもう一つ隣りのおっさんが掴んで食べた
わたしは少しムッとした
(あんたにあげたわけじゃないのに)
でも怒らない
さすがに試合が終わってから静かになった球場でわたしが背後霊と喋り出すと
他の人たちは黙り込んで見て見ぬ振りをしたのだが
わたしはそんな無言の重圧など気にしない
周りの目とかそんなことを気にしても何か特別、楽しいことが用意されているわけではないのだ
だったら背後霊と喋っていた方がずっと良い
「ねえ、さっきなんて言ってたの?」
わたしはふと思い出し言った
背後霊は言った
「あいつら何やってるの? って言ったの」
「野球って知らない?」
「知らない、球を打ったり投げたり何か意味があるのか?」
「無いよ」
「なるほど」
背後霊は納得し金を支払わずに私鉄に乗り込むとわたしと共に我が家へと向かった
帰り道、見上げると月がやけに大きくてそろそろ肥大し落下してくるかもしれないなと思った
まあその時にはわたしは死んでるか
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