ワーキンワーキン


「こら、ちんちんいじっちゃ駄目でしょ」

おれは怒られた

職場で自由にちんちんすらいじれない世の中

がっかりだ

自由なんて何処にも無い

ちゃんと隠れて机の下でもぞもぞやっていたのに

おれの覗き見が趣味ですとでも言わんばかりに直属の上司が叱責して来た

「ちょっと、ちんちん膨らませすぎですよ!」

もううんざりだ

謝罪もせず目の前をぼけっと見つめていたら引っ叩かれた

辞めよう

おれは思った

もっと自分らしくいられるところに身を置くべきなのだ

人は生まれた時から自由

だから用意された檻の中から飛び出して外の世界を冒険してみようよ

そう心の中の自分に話し掛けた

だが金が必要だった

ほんとか?

さあ

取り敢えずみんなそう言っている

金金金、あと金

もうすぐ昼休みだ

それだけが今日の楽しみだった

買って来たゼリーにはクリームが付随していた

やった

しかしゼリーは全然ぷるぷるではなかった

匙の侵入を拒否した

無理やりねじ込んだらこっちの手首が折れてしまいそうだ

鉄筋コンクリート製なのかもしれない

おれは諦めた

午後の就業時間を告げる残酷なチャイム

「やだな」

心の叫び

「早く帰りてえ」

またしても心の叫びだった

「どっかに落ちてねえかな………一千万」

心の叫びばっかりだった

その日の午後はぜえぜえ言いまくったよ

人が簡単に出来ることがどうしてあなたは出来ないの? と詰め寄られた

おれの神経は磨耗し自分がまだ自分の形状を保っているのが不思議だった

深まる秋

そのような季節の移り変わりを感じている余裕など無い

「どんぐりでも拾って食べようかな」

それが可能ならとっくにやっているが身体が適応してくれない


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