大人


わたしが森で遊んでいると

普段は誰もいないはずのこの場所に大勢の人だかりが出来ていました

(………なんだろう?)

わたしは近寄りました

どうやらメロンパンが殺されたようです

メロンパン絞殺事件でした

わたしはいかにも刑事さんらしい格好の人に尋ねました

「どこが首なんですか?」

まずそこです

横たわるメロンパンはまん丸で一体どこをどう絞めれば死んでしまうのか幼いわたしには理解、出来なかったのです

刑事さんは「んあ?」と言いました

そして「雨ふる?」と言いました

「降りません」

わたしは言いました

「ここだね」

指差された箇所をじっと見つめました

ふうんここか

わたしはこくんこくん頷きましたが本当は全然わかっていませんでした

刑事さんはごそごそとポケットの中を漁ると何かを取り出しました

メロンパンでした

そしてそれを一齧り

もぐもぐして感想を口にしました

「外はかりかり、中はふわふわで非常にうまい」

そのようなことを言いました

わたしは世の中の仕組みが少しだけわかったような気がしました

このような光景を直視させられてしまってはもう無邪気なままの子供ではいられません

メロンパン殺人事件の犯人を追いつつも

一方でメロンパンを栄養補給の手段として食べる刑事さんに周囲はまるで疑問を抱きません

わたしは不思議でしたがなるべくそれが普通のことであるように思い込むことでその場に溶け込むことが可能となりました


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