ただ転生して楽しく暮らすはずが、厄介な事態に巻き込まれる。
白
第1話
「くそ! ふざけんなよ!! 」
叫ぶ。己の不甲斐なさを。敵を見分けられなかった自分達を。
人生は、選択の連続だとだれもが知ってはいる。ただ知っているだけで、毎回よく意識して選択することは不可能に等しい。
そう俺、白銀煉(しろがね れん)は、失敗したからこそ十分に知っていたはずだった。ただ、失敗した過去より最悪の状況になるとは考えたことはあっても、具体的な想像が出来なかったことを後に後悔する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『……お…………きて……!』
(なんだ? 声が聞こえる。透き通るようなやさしく…やさしく?)
『おきろって言ってんでしょうが!』
〈バシッ!〉
「いってーな!なにすんだ!」
煉は右腕を振り上げながら飛び起き、声のする方を向く。
そこにはエメラルドのような瞳を持ち、髪の毛を腰付近まで伸ばしているモデルのような金髪の美女が立っている。
ただ呆然と女性を見続ける煉。
『ほれほれ、やさしく起こしてやりなさい。今回の件は、お主が悪いんだから。なんなら膝枕のひとつでもやってあげなさい。』
『なっ?! なんで私がそんなことを!この人間が簡単に死ぬのが悪いんですよ!』
『くちがすぎるぞ。』
『うっ!』
あらたに別の声が女性の隣から聞こえる。
そこには、髭をのばした老人。よく言う仙人のような老人が女性の隣に立っていた。
そしてようやく煉は、このよくわからない状況を考え始め、自分の周囲に目を向ける。
(なんだこの状況は?絶世の美女と仙人みたいなじーさん、なんで俺がこんな2人と同じ空間にいる?! というかなんだこの空間は、辺りが真っ白なのになんで普通に座っていられる?)
呆然としていた煉が周りに目を向けている様子に気づいた老人が女性にしゃべりかける。
『ほれ、そこの坊主がパニックになりかけておる。しっかり説明してあげなさい。』
『……わかりました。私の名前はファニア。え~と、貴方は事故で死にました。本当はこのまま新しい人生を地球でおくってもらうんだけど、私の担当している他の世界で少々魔力が穢れてきちゃったのよ。そのため、貴方を地球のない他の世界≪ゼルス≫に転生させるわ!』
(ん?てことは、異世界転生?!ラッキー!いったいどんな世界なんだろうな?)
『(よしよし、このままさっさとゼルスに送っちゃえば)』
『何をやっておるファニア!! しっかりと本当のことを説明せい!』
(じーさん、めっちゃ怒ってんじゃん。何したの?このファニアって人)
『すっすみません。ガルド様!……えと、貴方は事故といえば事故なのですが、私が地球に直接遊びに行ったさいにできてしまった空間の狭間に吸い込まれ死んでしまい。地球にもどれなくなってしまったのです。そして、異世界である≪ゼルス≫にも魂の予備枠がまだあり、魔力も穢れてきていたので貴方を転生させるさいに地球にある綺麗な魔力を一緒に送っちゃえば楽になるなーと。てへっ(笑)』
「てへっ(笑)……じゃねーよ‼ なんちゅうことしてんだ! 初めっからしっかり説明しろや! 後半なんか、ちょうどいいからこいつ送っちゃおーって!てめぇなに考えてんだ!」
『なによ! こっちだってね!管理者としていろんな仕事を〈バシッ!〉イタッ!』
『馬鹿たれが!だからあれほどしっかり説明して謝れと言ったのじゃ! それに管理者などと簡単にいいおってこのことが他の管理者に伝わったらどうする!神様として対応せんか!……すまぬの坊主。他はわしが説明する。ただ、管理者と言うのは忘れてくれ。そうしないと、坊主とファニアが消されるからな。』
「とんでもねーな。わかった。その代わりちゃんと説明してくれよ。」
『そうか、ありがとの。』
そして、ここからいろいろとじーさん。いや、ガルドという神様が説明してくれた。
まず、ファニアとガルドは神様のようなものだと言うこと。本来は、違うようだが。地球で神様としてまつられるのは、ファニアやガルドと同等の格を持つ存在らしく、詳しくは言えないようだ。
次に、ファニアの行動により死んでしまったので転生のさい、特典をつけると言うこと。地球に戻れるのか? 、ゼルスに行かないといけないのか?と聞いたところ、地球には戻れなくゼルスに行かないと存在がこのまま消えてなくなり来世が一生訪れないそうだ。
というわけで仕方なくゼルスに行くしかないわけだ。ただ、ゼルスという世界は≪剣と魔法の世界≫だったため、正直嬉しい。そういうことなので、俺はゼルスに行くことを決めた。
最後に、やはり心の声は聞こえているらしく、ガルドがいなければそのまま転生されていたっぽい。ガルドの説明中ファニアは、正座をさせられていた。だが、俺は最初、ファニアの見た目に騙されていた!ファニアお前は許さんぞ!
『さて、とりあえず転生する前の説明はすんだかの?……あとは、転生における地球との環境以外の大きな違いの説明じゃな。まず、ゲームにおけるステータスはわかるか?』
「ああ、なんとなくわかるがゲームの種類によっては細かい所が違うがどうなんだ?」
『そうじゃな。見た方がはやいじゃろ。これがステータスじゃ。』
青いタッチパネルが空間にうかびあがった。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
名前 〇〇〇〇
性別 〇 年齢 〇
ジョブ 〇〇〇 Lv.〇
体力 〇〇/〇〇
魔力量 〇〇/〇〇
*物攻 (魔法以外の物理的攻撃に影響)
*物防 (殆どの魔法以外の物理的防御に影響)
*魔攻 (魔法関連の攻撃に影響)
*魔防 (魔法関連の防御に影響)
*知覚 (反射神経等の感覚系に影響)
このマーク(*)があるものはS+.S.S-.~G-.の24段階で表示されます。また、S+が最高ランクです。
スキル
・〇〇〇
称号
・〇〇〇〇〇〇
1/2
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「へぇー。こんな感じなのか。……ん?この下の方にある数字って。なぁガルドじーさん、これってもう1つのステータスがあるのか?」
『ああそうじゃ。転生したあとは見えないのじゃが、こんなかんじになっておる。』
ガルドはステータスの上に右手をおき、左にスライドさせる。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ステータス持ちの才能
*身体能力 (魔力関連以外のことに関係する。ステータスの体力、物攻、物防やステータスにはない体の動かしやすさ、等の成長に影響する。)
*魔力適正 (ステータスにある魔力量、魔攻、魔防やステータスにはない魔力の扱いなどの成長に影響する。)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
『ファニアが迷惑をかけたからな。転生の特典については、才能のランクをあげることと多少のスキルで許してやってくれんかの?』
「わかったけど、ジョブって転生したあとに変えられるのか?それと、ジョブってみんな1つだけでスキルはジョブに依存するのか?」
『いや、ジョブは5才になり、教会で祝福の儀のさいに我々の誰かがジョブを渡し変更することはできん。それと、ジョブは1人に1つだけじゃ。スキルは、ジョブよって得るものと鍛練をして修得するもの、種族によって得られるものと大まかに3つに分けられる。』
「なるほど……なら、ステータスには1つだけ表示して、ジョブを2つと選べる権利を追加でもらえないか?」
『うぬぬっ……………わかった。だがもう増やすことはできぬぞ。これでもかなりギリギリだからな。』
「おっ!さすが。それと気になったんだけど、種族がステータスにはないけど。どういうことだ?」
『坊主はもともと地球という別の世界にいたわけじゃし、転生の特典に記憶もある状態でいく、種族まで変更すると坊主の精神が壊れるからの。今は見えなくしただけじゃ。ちゃんと人間、人族として転生させる。安心せい。それじゃあ、才能は上げておく。スキルは、3つほどじゃ。どうする?』
「う~ん。……定番のアイテムボックス?現在から過去の情報が見れるスキルとか?あとできればステータスの才能も見える鑑定?……どうかな?」
『アイテムボックスはあるぞ。というかまた、盛り込みおったな?……しょうがない。新しく創るかの?どれどれ………………よし。情報のスキルは、叡智の書。鑑定は、鑑定(上位)。鑑定の上位の部分は、見えんから心配せんでもいいぞ。これで終わりじゃな。……ふぅ。疲れたの。申し訳ないが坊主そろそろ転生させるぞ。坊主の存在がなくならないように、はやめに送りたいからな。ジョブに関しては、祝福の儀の時までどういうのがいいか考えておれ。この空間と似たような場所に精神だけ、呼ぶからの。』
「そうか、ありがとな。ガルドのじーさん。」
『よい。こちらのせいだからな。……これ!ファニア。そろそろ坊主の転生の時間だ。最後にしっかり謝りなさい。』
ガルドの説明が始まりなんやかんや煉と話し、1時間以上たちようやくファニアは正座を解放され、煉に謝る。
『うっ………大変、ご迷惑を、おかけしました。』
ただ、その表情はまだ納得のいっていない表情であり。ガルドと煉は互いに顔を合わせ苦笑する。
「まぁいいさ。……ガルドのじーさん。ありがとな。」
『うむ。後でファニアは追加で叱っておく。では、転生させるぞ。またの。』
煉は最後にガルドと言葉をかわし、転生するのだった。
このあと、再度ガルドの大声とファニアの悲鳴が響いたとか響かなかったとか。
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