第8話 モテモテです

 グッタリしながらレイナが教室に入ると、目の前にクレアが居た。


「あ、あの、お、おはようございます、レイナ様...」


「えっ? あ、お、おはようございます...」


 (な、なんで!? なんでクレアたんが話し掛けて来たの~!? いや嬉しいんだけどね! 近くて見るクレアたん、めっちゃ可愛いし! でもなんで急に!?)


「あの ..急にすいません。レイナ様にお話しがありまして...良ければお時間頂けませんか?」


「へっ! は、はい、私で良ければ...」


「出来れば二人っきりで話したいんですが、お昼休みとか如何でしょうか?」


「え、えぇ、構いませ...あっ! すいません...今日のお昼は先約がありまして...」


 (あうううっ! せっかくクレアたんがデートに誘ってくれたのにぃ~! ハインツのアホ~!)


「あ、そうなんですね。じゃあ放課後なら良いでしょうか?」


「あ、はい。私は構いませんけど、その...クレア...さんが...」


 (危ない危ない! クレアたんって言うところだったよ!)


「あぁ、今日は生徒会の仕事は無いんで大丈夫です。では放課後に」 


「あ、は、はい...」


(なんだこれ!? モテ期か!? モテ期が急にやって来たのか!? お昼にハインツと、放課後にクレアたんと二人っきりって、私の心と体は持つんだろうか!?)


 レイナは授業どころじゃなくなった。そもそも聞いちゃいないが。



◇◇◇



 お昼になった。


「レイナ、お腹空いたね。学食行こうか」


「あ、は、はい...」


 学食はいつものように混み合っていたが、ハインツとレイナが二人揃って現れると、皆が自然に先を譲るような雰囲気になった。二人はさほど待つことなくトレイに注文した定食を載せ席に着いた。


「ここの日替り結構イケるよね?」


「あ、はい、そうですね...」


 しばし二人は黙々と食事に集中したが、レイナは緊張のあまり何を食べているのか味がしなかった。デザートに入った時、やっとハインツが口を開いた。


「ねぇ、レイナ。聞いておきたいことがあるんだけど」


「は、はい、なんでしょうか...」


「昨日最後に言ったよね? この浮気者って」


「あぁ、本当に申し訳...」


 レイナは昨日の痴態を思い出して青くなる。


「いや、謝らなくていいって昨日も言ったよね? そうじゃなくて、どこでそんな誤解が生じたのか、それを確認しておきたくてね」


「えっと...あの...それは...」


「もしかしてクレアのこと?」


「は、はい、親しくされているように見えたので...」


「彼女とは同じ生徒会の仲間ってだけで、そんなんじゃないよ」


「そ、そうなんですか? で、でもだったらどうして...」


「あんなにクレアのことでムキになったのかって?」


「は、はい...」


「そりゃあ仲間が虐められてるってなったら、是が非でも止めさせようとするよ。ただそれだけで他意はないよ。だってさ」


 そこでいったん言葉を切ったハインツは、クレアに顔を近付けて、


「俺は昔からレイナ一筋だからね」


 そう言って輝くような笑顔を向けた。



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