"セイシュン"て何だ?

@mM7

"セイシュン"て何だ?

「青春って、一体何だと思う?」



 ちと暇だったんで、目の前の友人になんて事ない話を投げ掛けてみた。



「・・・はぁ」


「そんなこじらせた話ばっかするから、俺らはいつまで経っても青春らしい青春が出来ないんだぞ」



 ・・・は?なんだコイツ。急に人様の図星を遠慮なしにぶっ叩きやがって。ふざけんのも大概にしとけ?



「うるせえよ、暇な新生活前の春なんだし、そんな拗らせた話ばっかしてもいいだろが」


「ん。まあ、俺も丁度暇だったからいいよ」


 じゃあつべこべ言わず最初から乗れや!

 喧嘩売ってんのか!?あん?おん?

 うん。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「で、結局辞書が言うには、青春ってのは『元気で若い時代』なんだって。年齢の定義でいうと俺等も含まれてるらしい」


 友人がスマホを片手にそう言


・・・・・えっ?


「じゃあ、今俺達、所謂いわゆる"セイシュン"真っ只中ってこと?」


「みたい」



 嘘だ。


仲間とのアツい共闘、ワクワクする冒険、手厳しい鬼コーチの指導、いじらしい恋愛、もどかしいすれ違い、ちょっとエッチなハプニング、ライツ・カメラ・アクション・・・どれ一つ周りには見当たらない。



 そんな青春が・・・



「でもさ」


「青春をあげつらう今この瞬間、それがある意味一番青春に近いのかもしれない」


彼は意味深にそう言った。


「・・・なんでだよ」


「いやね、もう少ししたらさ、皆んなバラバラになって社会に出て、やれ仕事が、やれ家族がなんて言って、『青春とは何か』なんて話す暇も考える暇もなくなると思うんだ」


「そして将来だとか、責任だとか、目を向ける物はもっと現実的で堅実な物になってく。つまり青春の価値は下がっていくんだ」


「まあそんな傍、時々昔の連れで集まったりしてさ、その時に『前は、青春がどうこうなんて浮かれた話してたよなァ』とか喋るんだよ、きっと」


「で、つまり纏めるとな、青春を大真面目に語らうってのは、『』と『』って要素が必要なんだ。


それで、その条件を満たせるのは!そう!


 まさしく今!


 一応若く!!


 無駄に元気で!!!


 めっちゃ暇で!!!!


 青春を羨望していられる!!!!!



 この瞬間・・・なのさ。




___そして人々は、それを青春と呼ぶんだ。」



「・・・だからこそ、青春を真剣に語るってのは、まさに青春そのものを体現した様な行為だと言えるのだよ。


 そして、


 しばらくしたら、

 すぐに俺達も、そんな話出来なくなる」



 彼はキメ顔をした。



その時、突然窓から差し込んだ光が、彼の汗に塗れた額をキラッッッキラに輝かせた。

本当に、マジでキラッッッッッキラに。



 きっったね!きっしょ。カッコつかね!



・・・しかし、


勿論心底気味悪がりながらも、俺は彼の言葉に衝撃を受けていた。




「これが・・・青春・・・?」




 そう、なのか・・・?




 なら、俺は・・・






 俺は____________________








「違うに決まってんだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」



 俺は、断じて認めない。



 こんなと、ムサい部屋ん中で二人きりが青春だと?


 そんなの、この俺様が神様に変わってゆるさない。


 いや、「ゆる」さない。



「もういい!こんな話はやめだ。ゲームすんぞゲーム。なんか腹立つからお前ボコボコにしばき倒すわ」


「お前が始めた話だろうが!まあいい、付き合ってやるよ」









・・・その後、


 二人は、いつもの様に、いずれ思い出すか、将又思い出さないかもしれない時間を過ごした。



 そして、その一時は確実に_______



 二人の『その瞬間』、

 つまりは『青春』、

 それの一欠片であった筈だろう。




・・・知らんけど。

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