第77話 未知なる転移門
今日は一日中雨だったので、早めに野営をすることになった。
野営地はグー〇ルマップ先生に調べて貰ったら丁度いい場所があった。
街道から徒歩5分、馬車走行可、1DK。
一つの大空間(DK)という意味だけどね。
大きな一枚岩でできた崖の下にある大きな窪み。
結構しっかりした岩で崩れたりする心配は無さそう。
地面も奥に向かってわずかに上っていて水が入ってくる事も無い。
馬や馬車まで入れても大丈夫だという充分な広さがある。
さすがに水場とか井戸は無いが『水作成』が使える俺達には何の問題にもならない。
俺は明かりと樽に水を用意し、食材と竈と道具をタチアナさんと相談して取り出すと実験をすることにして入口付近に陣取った。
実験の内容はゲートの使い方についてだ。
実は使っている俺にしても、ゲートの事について知らない事が多い。
例えば……
1、誰が利用できるのか?
2、利用できない者を引き込もうとしたらどうなるのか?
3、利用できない者にはどう見えているのか?
4、出口を設定できる場所は何によって決まるのか?
それらの事を同行者にゲートの存在を知られてしまったのをいいことに、実験をして解き明かしてしまおうと画策した。
サーナリアさんと連絡が繋がれば解決するのにな。
どうしたんだろう?何かのトラブルだろうか?
さて、上記の4つの中で一人でも実験ができるのは4番だけなので、これから手を付ける。
今までこの辺りと設定してきたゲートの出口を目の前1m程の所に設定してみる。
成功、今までと同じように設定できたことが感覚で分かる。
じゃあ2mならばと試してみるとやはり設定できた。
それを徐々に伸ばしていく。
3m、4m……
10mまで成功した後、11mの時設定できたという感覚が返ってこなかった。
通常だと約10m位までのようだ。
では次は何による10mなのか?
先ず『遠隔魔法』を11レベルに上げて11m先に出口を設定しようとしてみたが、やはり11m先は設定できないようだった。
『遠隔魔法』は出口の設定には影響を与えていないようだ。
『転移門』のレベルを1つ上げてみたがやはり11mは設定できなかった。
最後に『望遠』を試してみる。
遠くの物が近くにあるように確認できれば設定できるかも?と思ったらこれがビンゴ。
11mの壁を突破できた。
おそらくその場所の安全の確認が必要なのかもしれない。
そうすると現在、『一般魔法』10レベルの俺は魔力強度もあって『望遠』の倍率は約2,600倍まで上げることが出来るので、条件が揃えば最長26km先まで出口を設定できることになる。
確認するのに揃えなくてはいけない条件は天候と高低差だ。
霧や雨で視界が狭く制限された状態や、見渡す限りの水平線では20数kmも先が見えるようにはならないだろう。
この世界が球形ではない可能性はまだ消せていないが、平面だったりメルカトル図法そのままの様な円筒形だったりするのだろうか?
自然にそんな形になったとは思えないから、何らかの存在の力が働いたとしか考えられないような形は嫌だ。
北極や南極に近づいたら神罰で殺されそうだからな。
人が近づけないような環境をしている可能性もある。
強力な魔物を住まわせていたり……
そうなるとなるべく早くにこの世界の形だけでも確認しておきたい。
天気のいい日に高い山にでも登るか?
ちょっと検討してみよう。
そんな感じにごにょごにょしているとフランが呼びに来た。
夕食の準備が調ったらしい。
「皆に話しておく事がある。マルケスが一般魔法を取得したぞ。覚えたのは『水作成』『乾燥』『浄化』『望遠』だ。使って欲しかったら頼むといいよ」
夕食時にマルケスが一般魔法を取得した事を皆に報告した。
勿論一般魔法の何を取得したのかまで隠さずに話した。
マルケスは少しの間驚いた顔をしたが、その後何か消沈したかのように俯いてしまった。
分かりやすい。何か悪巧みでもしていたのだろう。
食後、明日の予定を考えてみるが、まだゲートの解析が終わっていないから移動にゲートを使う事は出来ない。
現在のゲートについての問題点は、馬を運べるかが分かっていない点だ。
馬車は倉庫に入れて持っていける。
パーティのメンバーはゲートを
勿論スケルトン達も問題なくゲートを潜れる。
馬たちだけが分らない。
馬たちをパーティに組み込む事は出来ない。それは分かっている。
じゃあ馬たちを曳いてゲートを潜る事ができるのか?
それが分かっていない。
馬を使って試すことはできるが、最悪の結果になった時に俺は耐える事が出来るのか?
ゲートを出た時に馬だったものを引きずっている事に気付いたら……
世界線を越えた時のように名状しがたい物から手綱がずるっと……
あぁ、考えたくねぇ。
明日から小動物を生け捕りにすることを目指してみよう。
それからでいいはずだ。
24時間不眠不休で働けて食事も摂らない『ゾンビホース』の登場はまだ早いだろう。
俺もそんなネクロティカルパレードは嫌だ。
そう言った類のファンタジー感は御免被る。
夕食の片付けを終えると今夜はもうやる事が無くなった。
コンソールを操作して明日の天気をチェックすると、明日の朝には雨も止むそうだ。
一般魔法を使えば雨の影響は低減できるとは言え、雨が降らないに越したことは無い。
再度、スケルトンの配置を確認して俺は寝床に着いた。
寝床と言っても雨宿りで岩陰の窪んだ所にお邪魔したのだから、テントを張ったわけでは無い。
ベルナリアとタチアナさん以外は地面に毛布を敷いただけだ。
俺の気配が皆に伝わったのか、皆も寝る準備をしているようだ。
俺は皆の準備が終わった頃を見計らって横になった。
暫くすると意識が身体から離れていき、俺は眠りに付いた。
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