第54話 獲物
フワフワオムレツは好評の内に皆の腹の内に納まった。
「美味しかった」その言葉は苦労に報いるに充分だった。
主に苦労したのがスケルトン達であったが故に……
今日も移動中は遊撃隊の5体を2チーム周囲に派遣している。
モンスターの殲滅と狩りが目的だ。
10体派遣しても馬車の周囲には27体のスケルトンが警戒している。
どこから見ても
もちろん好き好んでこんなのに戦いを挑んでくる盗賊などがいるはずが無い。
そんなのはテレーゼくらいの物だ。
チラリと後ろを見るが箱馬車の中と馭者席との間にはカーテンの掛かった小さな窓があるだけで、中の様子は窺い知れない。
午前中、遊撃隊の1隊が大きな角を持った鹿と接触。
逃走にかかった鹿を隊のアーチャーの矢が首の付け根を貫く。
どうっと倒れた鹿は立って逃げようとしたが既に上手く立ち上がることもできなくなっていた。
下生えをかき分けて近づいたノーマル3体に押さえつけられた鹿は首の付け根の頸動脈にサーベルを突き立てられ、ビクンと一度大きく身体を震わせた後静かに息を引き取った。
首の付け根の頸動脈を突くことによってこのまま血抜きも出来る。
そこで俺に報告が入った。
『とっ・た・どー』
いや、それはどうよ?
俺は獲物を馬車まで輸送する事をスケルトンに指示して、代わりに別の5体を遊撃隊として派遣、入れ替えた。
獲物を運んで来たスケルトンが血にまみれていたので浄化を掛けてやった。
スケルトン達は護衛の列に加わった。
獲物の鹿は移動中は何もできないので直ぐに倉庫に入れた。
野営地に着いてからでいいだろう。
午後に入って今度は別の遊撃隊がモンスターとの接敵を伝えてきた。
場所は馬車の300m程前方右側、少しやぶの中に踏み入った辺り。
馭者に停車を指示し、接敵していない方の別動隊を呼び戻し、車内のフランに呼びかけた。
「前方300mにモンスター6体、特徴からオークと思われる。俺はスケルトン7体を連れて迎撃に出る。フランはこの場所、車外にて警戒。スケルトン25体にて要人の警護に当たれ。以上」
俺はフランの返事を待たずに駆け出した。
移動中に接敵中の部隊のノーマル3体に防御を指示、アーチャーとグラディエーターに攻撃を指示、俺が援軍と共に到着するまでは確実に敵を1体ずつ倒していく作戦を取った。
俺がノーマル3体、アーチャー1体、グラディエーター1体、ガーダー2体を連れて現場に到着するころには敵オーク6体の内2体を無力化済みだった。
オークは豚のような外見の頭を持ち、でっぷりと太った体をしたモンスターでエロゲー仕様、つまり他種族の女性に托卵させてオークの子供を産ませる程繁殖力が強いモンスターである。
俺は全てのスケルトンに攻撃を指示、数分後には全ての敵の殲滅を完了していた。
オークの死体を倉庫に放り込み、スケルトンで周囲の索敵を行い別の敵がいない事を確認しフランに念話した。
『フラン、聞こえるか?』
『はい、大丈夫です』
『敵モンスターの殲滅完了。周囲に他の敵の存在無し。
『
えっ?俺、コピーなんて考えて無いよ?
空気を読んで翻訳する言語機能。ヤバす。
街道に戻ってスケルトン達と待っているとゆっくりと馬車が近づいてきました。
スケルトンの大群を引き連れて。
何これ怖い。
あ~っ、やっちまった。
近づいて来た面々。
ベルナリアに目を向けると『鑑定』スキルによってレベルが3から5に上がっているのが分かった。
他の人は
「ベルナリア、今なら一般魔法でも覚えられるがどうする?」
「?!」
キュピーンって感じで顔を上げてこっちを見るベルナリア。
なんか小動物っぽくて可愛いな。
「貴族に嫁入りするなら一般魔法なんて要らないだろう。ベル鳴らせば他の人が水を持ってきてくれる、掃除も洗濯も自分でする必要無いだろ?風呂を沸かす必要も覗くひつよ……あばば」
やべーっ!思わず余計なことをゲロっちゃいそうに……
ベルナリアも頭に疑問符浮かべてるから、ギリセーフだよね?
「貴族に嫁ぐなら『話術』とか『ダンス』、楽器の『演奏』、もっと直接的に攻めるなら『性交渉』なんてのもあるぞ?」
これセクハラじゃ無いから!
13歳相手でも本音で対応、俺かっくいい。
「焦らなくていいがしっかり考えて結論を出すんだ」
「わっ、分りましたわ」
ベルナリアはコクンと頷いた。
何か最近ベルナリアの声をあまり聞いていない気が……
旅に出てから髪の毛のロールが弱くなってるけど、まさかそのせい?
さすがに旅先では縦ロールの補強?補修?できないみたいだけれど……
「さあ出発するぞ」
遊撃隊2隊を偵察しながら先行させて、馬車を進める。
その後は特に何事も無く予定通りに野営地に到着した。
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