第43話 金髪縦ロールとの再会2

 その後詳細を詰めていく。

 護衛対象の優先順位はもちろんベルナリアが一番。以下専属メイド、馭者、騎士テレーゼ。

 馬車馬2頭、積荷、馬車のカーゴ。テレーゼが人の中で一番下なのは自分で自分を守る力があるからで他意は無い。

 ノーラタンの街を出て北に行き、街道を西に向かいテサーラへ、順にエメロン、バリーモアを経て王都に至る。

 途中のそれぞれの街では宿に1泊、費用は報酬とは別にする。

 食料も報酬とは別に用意してくれるそうだ。

 俺達は一般魔法は2人合わせれば全て使える。

 万が一には回復ヒールも使える。


 それらの情報を元に積荷等を精査してもらい準備を依頼する。

 

 食堂とは別の部屋に食事を用意してもらいフランと2人で取った後、部屋に案内してもらう前に夜のお茶会に誘われた。

 もちろん誘ったのはベルナリアお嬢様だ。

 断る理由も無かったので謹んでお受けすることにした。

 案内のメイドさんに連れて来られたのは食事をいただいた客室の近くの言わば外向けの場所からしたらかなり内にある家族向けの談話室と言った部屋だった。

 ドアをノックして入っていったメイドさんに続いて入ると待っていたのは予想通り、ベルナリアとテレーゼの2人だった。


 ベルナリアは相変わらず見事な縦ロールで、道具が充実しているとは言えないこの世界でどうやってロールを作っているのか教えていただきたい物だ。いや本当に。

 衣装はと言うと白地のドレスに上に赤いペルシャ風のガウンを羽織っている。

 体の線はまだ控えめでもう少し頑張りましょうだが、ベルナリアの歳はまだ13との事なのでまだこれからも美しく成長するだろう。

 嫁ぎ先の選定は領主には色々と頭が痛い問題だろう。

 貴族として生きると言うのは現代世界の俺からしたら面倒くさく煩わしいとしか思えない。


 一方のテレーゼはまだ護衛中で、防具を付けている訳では無いが帯剣している。

 長めの緑の髪を後ろでまとめ、シニヨンにしている。

 テレーゼはこの世界の人間女性としては背の高い方だが体は全体的にスリムだ。無駄なゼイ肉が殆ど無いと言う意味では。

 胸?胸は必要なゼイ肉だろ?

 鍛えられた胸筋に支えられていて、とても素晴らしいです。


 今テレーゼはベルナリアの後ろに一歩下がって立っている。

 明日からは俺とフランの立ち位置もそこになる。


「明日からの護衛がネクロマンサーじゃと聞いたが、やはりお主であったか」

 ベルナリアお嬢様は何がそんなにうれしいのかずいぶんと興奮した様子で『ムフーッ』と鼻息を出しそうな勢いではしゃいでおられた。

「前回お会いした時には名乗る間もなく失礼しました。冒険者パーティ『世界樹の若枝』のユウキと申します。こちらにいるフランシスと縁がありまして一緒に行動させていただいております。フランシスのお陰様で今回の依頼を受けさせていただくことが出来ました」


 ちょうどいいタイミングだったのでフランへのフォローもしておくことにした。

 昨夜の事、俺との事で悩んでいるのでは?と感じていた。

 俺が言う事では無いが俺のチート能力の所為せいで戦闘においてフランの出る幕は殆ど無い。

 おそらく戦闘以外でも俺はフランにできる大抵の事はフラン以上にこなしてしまうだろう。

 それではフランの立場が無い。

 このままではフランは悩み苦しみ、いつか俺の元を去ってしまうだろう。

 それを俺は望まない。

 そのため俺の元にフランの立場を築く。

 積極的にフランがどう役に立ったのかを開示していく。

 俺にはフランが必要なのだと言葉に出す。

 それは美樹にしてやれなかった事だ。

 俺は2度と失いたくない。

 大切な物を。何一つ。


「その娘のお陰で?」

 ベルナリアもテレーゼも、もちろんフランも頭の中で『?』が踊っているようだ。

「はい。おそらく私一人では御父上はなんだかんだと理由を付けて断られてしまっていたかもしれません」

 みんなまだ分からないようだ。

 大丈夫だろうかこの人達。

 自分達の価値をどう思っているんだろうか?

「依頼には護衛対象が女性であるとは書いていなかったので想定していませんでした」

 やっとみんな何かに気付いたようだ。

「私のような男がスケルトンを大勢引き連れてやってきたら怪しいと思うでしょう。ギルドの信用はあっても娘の将来を心配したら任せるなんてできない相手でしょう」

 3人は納得できる話だと思ったのだろう。

 だが俺のターンはまだ終わらないぜ。

「そこにこのフランです。そんな俺の横にこれほどの美人がいたらどう思うか。きっと御父上は私とフランが『そういう関係』だと考えているでしょう」

 フランを見つめてそう言うとフランの顔にスッと朱が差した。

 それは美人と言われたからか、それとも『そういう関係』と言う言葉を想像したからか。

 他の2人も少し赤い。

 これぞ朱に交われば赤くなるってやつだろう……んな訳無い。


 部屋の入口の脇に控えていたメイドさんに確認したら、この後少し大きめの客間に案内するようにと指示を受けていた。2人を一緒の部屋に。

「出発するまでは御父上にこのまま誤解しておいていただきたいのだが……」

 チラッとフランを覗き込むと俯いて真っ赤だった。

 これ以上はイジメ過ぎだろう。イジメだめ、絶対。

「御父上に内緒でもう一部屋用意してもらう事は可能ですか?」

 ベルナリア嬢に可能だとの返答を貰って、メイドさんに余計な手間を増やした事を詫びてお願いする。


 旅についての打ち合わせを少々して最後に旅に持っていくパンを焼く時間を確認して今日のお茶会はお開きにする。

 ベルナリアも満足いただけたようで何よりだった。


 客間には浴室があった。

 準備が終わっていた方の部屋をフランに譲り、俺は浴室の準備は自分の魔法でお湯を作成できるので不要と伝えて下がってもらった。

 こちらの世界へ来て最初の風呂だった。

 久しぶりの湯舟は俺が日本人だという事を思い起こすには充分な働きをしてくれた。

 堪能させてもらった。


 柔らかいベッドもあってか眠りに付くのに時間は掛からなかった。

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